TREASURE05X 2022 -THE MEANING OF LIFE-

2022.09.04(日) @ラグーナビーチ

フレデリック / 04 Limited Sazabys / SUPER BEAVER / THE ORAL CIGALLETS

 

中止を余儀なくされた2020年、否が応でも注目された2021年のガイシホールでの開催。辛酸を舐めながらも果敢に、懸命に真摯に繋いできた先の今年、2022年、帰ってきたラグーナビーチ。照りつける太陽に肌が焼ける感覚。立っているだけで汗ばむ熱。その熱を不意に吹く風が攫っていく心地よさ。眩しさに目を細めながら見る、青々とした空をバックにした輝かしいステージ。夏空に響く音楽とそれと溶け込むように鳴る手拍子、音の塊。フェスなんて、それも野外なんて、本当に久しぶりで、だからといって懐かしいと思うほど遠い記憶にも思えなくて、自分のなかにある宝物みたいな感覚が、いま生身で感じてる現実とひとつひとつ繋がっていった気がした。あれも、これも、知ってる。忘れてない。それが堪らなく嬉しい。

 


フレデリック

リハ.TOMOSHI BEAT
リハ.蜃気楼

1.オンリーワンダー
2.YONA YONA DANCE
3.KITAKU BEATS
4.ジャンキー
5.オドループ

「もっとわくわくしたいよな!どきどきしたいやんな!」って投げかける健司さん。「そっちで海見てるひとたちも、全員でいくぞ」って煽り。自信満々で勇み立つ、頼もしく大きな姿がカッコいいのなんのって。
それとは別に、個人的に、ノーパーマの健司さんとても好み。若いお兄ちゃんみたいな雰囲気すごい好き。モノトーンの新衣装も素敵だし、黒髪に緑色のハイライトも、好みすぎてビジュも最高だな…ってほわほわしてました。

 

隆児さんと康司さんが揃って動き出して上下入れ替わるの、ああいう瞬間そわっとテンション上がる。たぶんKITAKU BEATS。健司さんの小刻みハイテンポにギターのボディを叩く手拍子の煽り方も好きだし、どこかで頭がんがんってしてクラップ煽ってたのも好き。

 

ジャンキーのさ、お立ち台の上でしゃがみ込んで歌うパフォーマンスとてもカッコよくて距離が近くて最高だったんだけど、飽き飽きですのとこは、俺は歌いませんよ?ここはあなたたちですよ当然でしょ?、とでも言いたげな視線をオーディエンスに向けてるところ、可愛すぎるなと思いました。妄想です。

 

「13年やってきて、最後のこの一曲でここにいる全員ファンにする!って言える自信もついてきました」そうやってズバって言い切るとこ最高にカッコいいと思う。相変わらず自信満々で、それでいて言葉にすることで自身を奮い立たせているような君臨と挑戦を併せ持つ魅力。「今日何バンドもこのあといるなかで、あの2番目にやったバンドがいちばんカッコいい!そんな風に思ってもらえたらもっとわくわくすると思う」今日、フレデリックと出逢ったひともそうじゃないひとも、この場所にいる誰も彼もを魅了して、俺たちに着いてくればもっとわくわくさせることができる、と主張してる。一緒にもっとわくわくするところに行こう、一緒にもっとどきどきする景色を作ろう、これはきっと、そういうお誘いで、力強い意志表明。そんな想いを全部詰め込んだかのように、最後の最後には、最高のキラーチューン、オドループ。四方八方、それぞれが思い思いに掲げた腕でいっぱいで、なんて心躍る景色。炎天の空に鳴り響く音の塊、カスタネットのクラップに取り込まれる快感で震えた。健司さんが笑い含みながら「っ最高」って言うのも最高。
自分の見せ場をいまかいまかと待ち構える隆児さんが、揚々とボックスステップ踏んでるのも可愛かったし、そこから一直線にセンターのお立ち台に駆けて行ってからの、マトリックスさながらの反りで奏でるギターソロ!FHUUUU!
アウトロは、手拍子を煽りに煽って、どんどんどんどんテンポアップしていくアレンジ。彼らの熱に振り落とされないように、あるいは、彼らのその熱さえ振り切って追い越してしまおうと懸命に叩き続けた手拍子。パワフルに懸命にドラム叩いてる武ちゃん見ながら、彼らとオーディエンスと、互いにもっともっとと限界を更新してどこまでも!と、加速していくテンポが堪らなかった。本当にめちゃめちゃカッコよくて、思い出してもぞくぞくする。

 

落ち着いてセトリ振り返ってみると、ど定番押さえつつ若めの曲も入れて、なんてバランスがいいセトリなんでしょう、って思う。1曲の長さもあるかもだけど、他バンドより少ない5曲だったんだ…とびっくりもした。気づかないくらいの満足感だった。完全無欠な充足感をもたらしてくれる30分1本勝負。そしてその充足感とは相反するところにある足りない気持ち。満たされて楽しくて堪らなくて、だからこそもっともっとと、求めてしまう。足りなくなる。あの好きな曲も聴きたかった、このカッコいい曲もまた聴きたい、ワンマンでもっとたくさん聴くんだ!ワンマンに行くしかない絶対行く!ってなるのは、フェスデリックの常だなって思う。

 


04 Limited Sazabys

 

最後のMCで、「名古屋で毎回はcoldrainニキと俺らだけ。俺たちも段々歴の長いバンドになってきて、新しいバンドもどんどん出てきてるから、今日来てるバンドマンははやくここまで来てください」って言ってたの、めちゃめちゃカッコいいと思う。おお…言うねえ!みたいな感嘆で空気がどよめいてた気がした。惚れ惚れするね、名古屋の04 Limited Sazabys

 


SUPER BEAVER

1.27
2.名前を呼ぶよ
3.アイラブユー
4.美しい日
5.東京
6.青い春

相も変わらず、制約のあるなかでの開催、でも「ここを目指して、この2年以上を過ごしてきたわけじゃないでしょう。今だって変わらず、あなたの声が聞きたい」って、そんなニュアンスで話しはじめたぶーやん。2年ぶりにやっと帰ってきたラグーナビーチ。でも、まだ、まだこれだけじゃ不完全だ。そうやって、足りないことを言葉にできることが何よりの希望のように感じた。
「もともとライブハウスにはルールなんてなくてモラルだけでやってきた場所だと思います。あなたの特別な時間だから自分が楽しむのはもちろんなのだが!それは隣の人も同じ。隣の人の特別も含めて大切にできたらそれはルールとか超えて最高になるんじゃないかと思います」
抱えている憤りや哀しさは、好きだからこその感情なんだって思ったところで、そこに意味なんてないんじゃないかとか考え過ぎて虚しくなってしまう気持ちを、無責任に肯定してくれる言葉では、決してない。でも、だからこそ、その言葉が靄を晴らしてくれた気がした。きっとこれが、ライブハウスにおけるいちばんシンプルな答えなんだなって思う。どんな状況や条件だろうと、それが海辺でも山の麓でも街中でも、小さな箱でも大きなホールでも、どこであろうと、どこまでも自由に音楽を楽しむために大切な、普遍的なひとつの答え。フェスって、ライブハウスって、そういう場所だよな、って肯定的な気持ちで思えたから、嬉しかった。一対一の様でいて、そうじゃない瞬間にどうしようもなく心惹かれるときがある。好きなものを好きだと確認できる瞬間があることは、とてつもない幸せだと思う。

 

MCの後、オーディエンスに両手掲げること促して、語りかけて投げかけて煽って煽って、さあ手拍子どうぞ!ってタイミングの最後の最後で甘噛みしちゃって、「噛んじゃった」って照れながら言う渋谷さん、可愛すぎた。その後も指摘しなかったところも何回か甘噛みしてたので、ふふふ、って感じでした。

そんなタイミングで、太陽を隠した雲。肌を撫でていく風が、この先で心揺さぶる何かが起こるんだと告げている気がした。嵐の前の静けさ、みたいな雰囲気のなか、ラグーナビーチに響き渡る手拍子。ひとりひとり、それぞれの熱を孕んだ音が一塊になって蒲郡の空気を揺らしている。音の波が、その大きさが、ひとの多さとそれぞれの想いの強さを物語ってた、美しい日。これだから野外ってやつは特別なんだって思った。

「4人で音楽をすることは、実質出来るけど、そうじゃない。あなたと作るから、俺たちの音楽」2年ぶり、ビーチでのTREASURE05X 2022。サブタイトルは、MEANING OF LIFE、生きる意味。あなたたちと一緒に作る音楽こそが、それこそが生きる意味だと、全身全霊で叫んでいるSUPER BEAVERの姿に心が満たされないはずがない。

 

どこかで、「時間がないっ」ってぶーやん言ってたの、微笑ましかったなあ。言葉にしたい想いで溢れかえってるんだろうなあ、って感じだった。限られた時間のなかで、言葉も想いも歌もありったけ。

 

「18年目の新人、これからも精進していきますので、どうか安心して、俺たちに着いてきてください」そう言ったぶーやんの声が酷く穏やかで、モニターに映るその微笑みが酷く優しくて、ほわっと心が温かくなった。その温かさに不意に泣きそうになった。時折り吹く風が、身体の熱を少しだけ攫っていく。野外の心地よさを感じながらの、東京。

 

じーんと沁み入る空気のまま、予感した終わりを薙ぎ払う、最後「ライブハウスが俺たちのはじまりだから」と投げ込まれた、青い春。ぶわって一瞬にして上昇する、熱気。最高だったなあ。

 


THE ORAL CIGARETTES

1. 嫌い
2. GET BACK
3. ENEMY
4. BUG
5. Naked
6. カンタンナコト
7. 狂乱 Hey Kids!!

陽が傾きはじめた時間帯のオーラル、雰囲気がいい。時間帯によってバンドの魅力を多彩に魅せられる、野外の魅力。登場してきた拓也さんの青髪に、会場がざわついていた気がします。どこからともなく「あお?!」って聞こえた気がした。うん、聞こえた。

 

拓也さんがこのフェスのことを「仲良いバンドマンがたくさんいて、裏でも楽しいフェス」って表現してた。同じように楽しんでいるお客さんを見て嬉しいってお話と「この状況下で楽しむことに慣れてきたんだと思う」とも言っていて、だからこそ「こんなバンドが集まってる、声を出せたらもっともっと楽しいに決まってる」みたいなことも言っていた。何より素敵だなって思ったのは、元の状態に戻ろう、じゃなくて、安心して帰ってこれる場所に、安心して新しいひとを迎えられる場所に「俺たちで変えていこう」って表現をしてたこと。前後の文脈120%で受け取れているかはちょっと自信ないけど、変えていこう、って表現は私の根っこの部分に触れていった。好きだなあ。

 

散々暴れ回らせるような曲をくり出して続けておいて、「余裕?まだ余裕?」って投げかける。その聞き方がすごい挑発的で、それに応えるオーディエンスの反応もまだまだいけるよ当然!みたいな空気が充満していて、掲げられた腕たちが楽しそうで、もっともっとと求める空間に、投げ込まれた最後、狂乱 Hey Kids!!。前々日からの雨を引きずって抜かるんだ足場なんてお構いなしに、身軽になりたくて提げたボディバックは勢いで足元に置いた。こういう衝動が、きっと醍醐味。

 

 

大満足の夏。ライブ中はもちろんのこと、ラグーナビーチを少し離れ、アイスとか食べながら木陰でのんびり座っているとき、風に乗って聞こえてきたベガスの音、響くデスボイスに、反射的にサークルモッシュとか人波の上を転がっていく姿とかを思い浮かべた。ああそんな光景さえも楽しめたのがフェスの空気だったなって、好きだけがここにあった訳じゃないけど、いつだって全部ひっくるめて大好きなフェスの空気だったんだってこと、あのなんとも言えない不可思議な心地よさをちょっとだけ思い出した。

 

きっといつだって明確な正解はないから、きっと完全無欠なルールなんて存在しない。だからこそ、自分の大切な場所を守るために、誰かの大切なものを蔑ろにしないために、考えて行動する自分でいることは、放棄したくないなと思う。好きなものを変わらず好きでいられることは、今日も無上の幸運だと思う。