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ASCA

5th ANNIVERSARY TOUR 2023 - ⅤⅤⅤ -

GUEST : BURNOUT SYNDROMES 熊谷和海

2023.10.06(金) @新宿BLAZE


ASCAさんが「修羅」って単語出しながらMCをして、「修羅と云えば…」ってKUNOICHIのリリースに触れ、「大阪名古屋ではひとりで歌ってきたけど、今日はファイナルなので」「あのお方をゲストに招き入れましょう。でも、声が小さいと出てきてくれないかもしれないから大きな声で!」って下手から熊谷さんの登場。ASCAさんが「あのお方」って表現するのとてもいいなあ。妖美で素敵。

熊ちゃんの衣装は、ぐもにわのMVのときの黒の羽織、白地にダルメシアン柄っぽいタンクトップ。

 

「海外で5万人とかの前でライブするのは緊張しないけど、こういう場はやっぱ緊張する。あすかさんのライブは何度か見たことあるけど、雰囲気が凄くよくて、それはお客さんとの関係性とかもあるだろうから、その雰囲気を壊さないように今日は頑張ります」

海外緊張しない発言受けて、ASCAさんが「世界のスターアピールですか?」って揶揄ってて、よい関係だなあと思いました。

 

ASCAさんとはじめてイベントで一緒になったのはリスアニ!のとき。お互いに海外イベントによく行っている。折角だからコラボしようって話になって、ブラジルのイベントに合わせて急ピッチで作った曲が、KUNOICHI。ブラジルでの初披露では「ジャパニーズくノ一、あすかーー!!」って紹介しながらASCAさんを招き入れて、大盛り上がりだったそうです。


ふたりの馴れ初めを話しながら、ASCAさんと熊谷さんが徐に上手下手の端っこにあるお立ち台にそれぞれ腰かけたの何だか愛らしかった。え?遠くない?会話する距離にしては遠くない?ステージの端と端で向かい合って会話してるの無性にかわいかったです。


ASCAさんが「KUNOICHIがネットで物議を醸している…この男クズでは…って。熊谷さん的には結構純粋な気持ちで?」って感じで落武者くんに弁明の機会をくれた。やっぱりちゃんとリリース後にリスナーの反応チェックしてるんだなあ。熊谷さん的には、そしてASCAさん的にも、この落武者くんへの厳しい意見は想定外でびっくりな反応だった、のかな。


ASCAさんが「15cm向こうの唇は 星より遠く」ってところがすごく気に入ってる、って話をして、その距離感をステージ上で実演。会社の同僚の男女、仕事帰りの混雑した電車を再現して、吊り革を掴む真似をしながら横並びの熊谷さんとASCAさん。肩と肩が触れ合うほどの距離で、「この距離ですよ」って言いながらASCAさんの指先が互いの顔の前を行き来する。ステージの端と端から急接近したその距離感、なんだかとっても愛いねえ、って感じでした。

熊谷さんは熊谷さんで、「自然でしょ?」ってフロアに同意を求めていた。確かにその距離感はいやらしさのない日常風景。その距離位置関係で、会話を弾ませながら、お互いに相手の方を向いたときの不意の顔の近さというか、距離感にドキッとする感じが、想像と目の前の映像で補完されてよりリアルになった。うーわー、15cm向こうの唇……この画か…確かに自然…そしてピュア…でも当人たちの鼓動は伝わる、絶妙だなって思いました。


「むしろ落武者くんはよく頑張っている。どちらかと言うと女性のほうから来てるくらいのつもりで…あんな潤んだ目で見つめられて、もしかしてこいつも俺のこと…ってなってるなか何もせんと帰ってる」

「これ思ったんですけど、男女で受け取り方が違う」

「男性に問いたいんですけど、これかなり頑張ってますよね?落武者くんは頑張ってる」

矢継ぎ早に紡がれる熊谷さんの主張は、弁護になってるのかは微妙だなあと笑ってしまった。むしろ火に油を注いでいる気がして、凍てつく空気を覚悟した、にも関わらず、全然全く起こらないざわめき、あがらない難色を示す声。圧倒的に男性の割合が多いASCAさんのファン層。え…男性目線ってこんなに違うの?ってそのギャップを突きつけられた。なるほど、これが男女の受け取り方の違い…なるほど。熊谷さんが「落武者としては」って終始落武者代表として話しているのは、とても愛らしいです。

落武者くんが頑張ってるのは認めるし、よく理性で持ち堪えているとは思います!!それは分かりますけど!でもその言い分だと、誘惑された、って言い訳で自分の邪心を正当化してそうで嫌だなって、少し心がざわつきました。もうちょっと過激に言うと、殺気立ちました。

潤んだ目で見つめちゃうくノ一ちゃんに、きっと誘惑しようなんて思惑はなくて、想い人と楽しく会話してる嬉しさが溢れ出ちゃってるだけだと思う。だからそれを言い訳に使うのは卑怯だぞと思ってしまったけど、これも女性目線だからこその思考なのか。男性目線では、妖艶で小悪魔要素のある魔性の女性に映ってるんでしょうか。なるほど…これが男女の認知の差…。

熊谷さんの弁護という名の楽曲解説を聞いてはっきりしたのは、この落武者くんにだって思惑や悪意なんてなくて、良くも悪くも世間一般的な善良な男性として描かれてるんだなってことです。良くも悪くもな。

だから私はこの落武者くんを少年漫画のラブコメ主人公として捉えることにしました。そしたらほら、ちょっと愛らしい、気がしてくる。真中純平とか結城リトの姿で人物を想像すれば、いい感じにポップだし確かにめっっっちゃ頑張ってるな…ってなる。いやでも、ラブコメの主人公って総じて罪作りな宿命だよね、立場的にさ。ほら、やっぱりタチ悪いじゃんか!

姫の立場でのこの場合の落武者くんの正解行動って、くノ一ちゃんの好意をさらっと躱してきっぱりと可能性はないと突きつけることだと思うんですよね。それを思うと「愛する姫」ってちゃんと表現してるのはそういう意図なのかもしれないね。それでも尚引かないくノ一ちゃん?それは確かに魔性と言えるかもしれないね?いやでもそもそも誘惑に負けないでよ?あ、そうかまだ負けてないっておっしゃってますもんね?

そして、くノ一ちゃんにとっての正解もある意味で姫の立場と同じだと思う。期待なんて持たせないで付け入る隙がないと諦められること。

まあ、これは落武者くんが姫のことを大事にしたい愛してるって気持ちがある前提の理想ですよ。「家には帰りたくない」「あんなワガママな女」ってとこから、姫との関係がもう修復不可能なのであれば、そこのケジメはきっちりしてからくノ一ちゃんの好意に応えることが、真摯な向き合い方だなって思っています。姫に対しても、くノ一ちゃんに対しても。

この、私が既婚男性に求める理想の振る舞いだって、きっと世の男性の大半からは理解されないんだろうなあ…と、くノ一の潤んだ目を誘惑と受け取ってしまう認知の差みたいに、男女の根本的で本質的な違いみたいなものが、浮き彫りになった気がして、遠い目をした夜でした。

熊谷さんの弁護を聞いても、人物への印象が変わるわけじゃなかったけど()、熊谷さんの意図してたものと私の捉え方との齟齬は分かったので、少し歩み寄れた気がしました。

抱いてしまった恋心自体は決して咎められるべきものじゃない。誤魔化し隠し続けよう、根絶やし燃やし尽くそう、とする理性。抱いた好意が熱く激しく純粋であればあるほど、その欲望とそれに抗おうとする理性との葛藤は壮絶だなあ。その激しい感情の衝突する様を修羅と例えるの、なんて秀逸なんだろうね。改めて、好きだなあ。

結果、KUNOICHIは、物語の起承転結でいうところの、転を待ってる状態なんですね。未だ、何も起こっていないフラットな状態。くノ一ちゃんは愛の言葉を飲み込んでいるし、落武者くんは頑張って武士道を何とか守っていて、姫の想いや振る舞いは詳しくはわからない。ここからどう転んでいくかでどろどろとした昼ドラになるのか、甘くて切ない月9になるのかが決まるのでしょう。己の矜持を貫く美しさもヒトの性、自身の欲望に呑まれ溺れる醜さもヒトの性。清濁渦巻くその心模様こそが、人間が人間である由縁だよねえ…という感じです。達観してる。そう思うととても、熊谷さんの書く詩だなあという気がして、とても腑に落ちます。心乱れるのは私が俗物であったが故でした。

 

いろんな想像を巡らせて、あーでもないこーでもないと心を騒めかせているのが、久しぶりでとても楽しかったので、新曲って特別だなあ。作り手の思惑を離れて、たくさん想像を巡らせる余地があるのは、裾野が広がっている故だとも思うので、こういうわちゃわちゃを熊谷さん自身が楽しんでくれてたらいいな。曲自体はまーじでめっちゃカッコいいから、無限にリピートしてしまう。ライブで聴けたらちょーアガるしさ!それも好きだなあ。


「ブラジルで披露するために急ピッチで曲仕上げて、今日のワンマンに合わせて配信も調整して、折角なら曲聴いてからライブで聴けるようにと思ってこんなに頑張ってきたのに、やれクズだと散々な言われようで…(意訳)」って不服そうにしてる熊谷さん、楽しそうだから、結構好き。

 

そうして、しっかりとした曲解説と落武者くんの弁護の後に披露された、お待ちかねのKUNOICHI。俯きがち粛々と構えているところから、曲が流れて一転、くるりと可憐なスピンをキメてる熊谷さんがちょーカッコよかった。ロング丈の羽織がふわーって舞うシルエットも合わせてとても綺麗。直後には、歌いはじめるASCAさんの方を指差して視線誘導するのも好き。


「ああ あ」の合いの手コーラス、どこか張り詰めたような儚さを含んだ声が、でも力強い芯のある発声で、マイクに乗って突き抜ける感じがして、熊谷さん、気合入ってるなあ、と思いました。


サビでフロアを煽る振り付けが無性にかわいい。マイク片手に左右に揺れながら掌上げ下げしてるの無性にかわいい。洋楽的なノリノリな曲の雰囲気に、和の要素が強いお祭り感ある振り付けのギャップ。楽しそうに踊ってるの目の当たりにしたら真似したくなっちゃうから、これはもう仕方ないね。


歌い終えて、両手広げながら「さらば友よー!」って溌剌と叫んで颯爽とハケていった熊谷さん。そのキラキラの笑顔がとても愛らしいです。この場合の、さらば友よ、ってどういう解釈すればいいですか。友という関係性で愛を覆い隠して誤魔化して、姿が見えなくなったのをいいことに、舞台袖という画面の外では修羅しゅしゅしゅ?えー…罪深い…罪深いよ…。

 

アンコール後、もう一度ゲストも!と呼び込まれて、登場した熊谷さん、ASCAさんのツアータオル(薄ピンク)を掲げてニコニコ。ASCAさんが「似合うー!」って。

ASCAさんのアンコール衣装は、2色展開のツアーTシャツをサイズ違いで半分ずつにしてリメイクしててめっちゃ可愛かったから、こういうアイディアいいなと思った。これやられると、両方買わなきゃ!ってなるし、両方買ってるよ!もアピールできていいね。

集合写真は、各々が思う忍者ポーズで、って撮ったんだけど、熊谷さんが迷わず結んだ印、あれはきっと午の印(調べた)。う、好き。

 

 

ASCAさん、ぶちアゲな熱い曲もしっとり優しい曲もダークでクールなカッコいい曲もいろいろあってすごく楽しかったなあ。

RESISTER、とか、セルフロンティア、とか盛り上がる系ではじまって、あ、聴いてきた曲だなあって楽しくて、その流れでの、ヴィラン、がダークな感じで変化球で印象的だった。カッコよかった。その変化球からしっとりと、命に嫌われている。、になる、聴き入る空気。雲雀、はとても優しい。歌い方とか曲調とかで多彩に魅せる、変幻自在な感じ、めちゃめちゃ魅力的で、ライブ自体すごく楽しかった、いい日でした。私、いろんな表情で魅せてくれるボーカリストに惹かれる。

あと、ASCAさんのジャンプジャンプの煽り方、すごく愛らしい凛とした声でカッコよく「ジャッ!ジャッ!」って煽ってるのがめっちゃ可愛いなーって思いました。可愛くてカッコよくてクールで可憐で妖美なの、最強。

 

熊谷さんのが言う、お客さんとの雰囲気がいい、っていうのもMCのときのやりとりとか見てて、これかー、ってなったなあ。和気藹々として、アットホームな感じ。総じて、とても楽しいライブでした。

念願のZeepでのワンマンライブ発表に、思わず涙してフロアに背を向けるASCAさんと会場の雰囲気。「隣だよね?!」ってイタズラっこみたいに言うASCAさんと「いまから行こ!」ってフロアから飛ぶ声が、二次会行こ!みたいなテンションで笑っちゃった。こういう会話のやりとりがぽんぽん弾む雰囲気、新鮮で、でも和やかで、微笑ましかった。