夏の雫 Release Tour 東名阪

memo.


ココロオークション

夏の雫 Release Tour

2023.09.03(日) @新宿Marbel

2023.09.09(土) @R.A.D

2023.09.10(日) @ESPエンタテインメント大阪 CLUB GARDEN

 


はじまりはハンカチ。から、一等星の歌。この流れ、幸福度高くてハッピーな気持ちになるから好きだなあ。粟子さん、東京では陽気に足踏みしてたし、名古屋では「その耳めがけて泳ぐんだよ」って歌詞に倣って泳ぐように指先でフロアをなぞってた、一等星の歌。「その心枯れてたって 浴びせるんだぜ とびきりのシャワーを」って歌詞、絶妙にかわいいこの口調、当初から大好きなところ。それがファイナルの大阪で、不意にほろっときてしまったのは、枯れた心に感情を注いで潤してくれる、って内容が私にとってのココロオークションの存在と綺麗にリンクしたからだった。

 

続く日替わり曲、初日東京は、願い事。名古屋では、向日葵。「夏の花の名前が付いてるのに、全然やってなくて、4年ぶりとかにやる曲を名古屋だけやります」と曲振り。夏の曲全部やりますと事前アナウンスしていたとはいえ、初日のセトリになかったから、もうやらないんだろうなあって、完全に油断してた選曲。

久しぶりが故に、ふわっとぐだっとはじまった演奏を、早々にテンメイさんが、大きく腕を上げて、もう一回!ってハンドサインで止めにかかってたの、なんだか珍しい光景だった。粟子さんが一生懸命音とフレーズ確認する後ろで「落ち着け!」って声援を送る井川さん。

ココロオークションにしてはちょっと珍しい気がする、鮮やかな真夏の色が似合う曲。輝くような真っ直な明るさが元気をくれるとこ、好き。

 

大阪の日替わり曲は、「心の中でいいから、一緒に歌おう」って、RUN。途中粟子さんが耳に手を当ててフロアの声に耳を傾ける仕草してたの、ぐっときた。久しぶりに聴ける曲があるの嬉しいなあ。でもまだまだ聴きたい曲たくさんある。VIVIだったら、アイデンティティもタイムレターも聴きたいなあ。

 

「次は新曲です」と紹介されて、世界が寝静まる夜に。音源ではアコースティックアレンジ、演奏はバンドセット。音源聴いたとき、これはバンドアレンジが映えそうなカッコいい曲だなあって思ったから、披露されたバンドVer.に、解釈一致だ、って密かに嬉しくなった。

粟子さんのナチュラルに歪んだ地声、張り詰めるみたいに伸びる高音、透き通ったクリアな裏声、すべてが美しくて素敵。継続的にお腹に響くベース音と、耳に残るくり返すギターフレーズ、すーっと馴染んでいく音楽がそのまま身体を揺らすような、同じフレーズのくり返しで構成される洋楽的な曲。そんな説明を受けて、その洋楽的という概念、わたし、わかる、と思った。たこやきくんDTM配信で学んでいるんです。洋楽とはコピペの美学だ()と。そしてそのコピペがノリの継続を作り出すのだと私は知っている。知識として持っていたものを経験と繋げられるということが無性に嬉しかった瞬間でした。

 

今回の夏の雫ツアーは、バンド編成とアコースティック編成の二刀流構成なので、ここからはアコースティックセットへの転換時間。

セットチェンジの時間を繋ぐ大野さんの、なぜかちょっと不慣れなMC。無性にかわいかったです。東京で、元気よく返されるこんばんはーの挨拶に満足そうに「よし!」って頷いてたり、名古屋ではちょっと無視されて、「リーダーが滑るなんて珍しい」って井川さんにフォローされてたり、いろいろありました。

 

「ずっと大切にしてきた曲をリアレンジして世に出すのは、曲を上書きしてしまうようで抵抗があった。けど、いざやってみると、蝉時雨は蝉時雨のままだった」「春に蝉時雨って音源をアコースティックアレンジで出して、とても評判が良かった。昔ココロオークションを聴いてたひととか、蝉時雨だけは知ってるみたいなひとにも評判が良くて、改めてやっぱ蝉時雨いい曲やなあって言ってもらえるのがすっごい気持ちよかった。味をしめて、あと3曲続きの曲あるけど???って作ったのが夏の雫です」ってそんな半分冗談を交えた新譜の紹介。

東京名古屋の2公演では、メンバーが自分たちで転換してたからその分MC時間にもゆとりがあった。アレンジが変わっても曲は曲のままだってことを「制服姿しか知らなかっけど、休日に私服見たらめっちゃ可愛いやん」って表現した東京、「私服エロい系なんや…」って名古屋。服装を変えてもその人の本質は変わらないけど新たな一面に気づく魅力はある、って例え、大野さんの例えはいつもとても秀逸。アコースティックアレンジってエロいに分類されるんだろうか…とか、艶っぽいとかそんなニュアンスってことなんだろうか…とか、敢えて真面目に考えてみるのも楽しいです。

 

ステージで配られた椅子。メンバーが座ってしまうとフロアの後ろでは見えないだろうなあってふと過ったところに、「座ると後ろのひと見えんくなるのか。すみません、あんま考えてなかった。あ、いいっすよそのままで」って座ろうとするフロアの動きに、座らなくても大丈夫って大野さんの言葉。それを押し切って、座り込むフロア、優しい世界の初日東京編。「新宿なのに優しいですねー」って軽く都会へのディスを滲ませる大野さんが大野さんでとてもよきと思います。

 

アコースティック編成の最初は、ココロオークション4人編成での、新曲、夢で会えたら。軽やかなギターの音色とリズムに乗ってゆったりと身体を揺らしながら、なんだか無性に吾輩は猫であるを聴きたくなった初日の東京。こういう聴かれかた本意じゃないんだろうなあとか思うけど、ライナーノーツを読んで、もしかしてガットギターという共通点に、似た雰囲気を感じたのでは?って自分勝手に納得しました。

「甘噛みで」締め付けられる胸、初恋の特別さを愛情込めて大事に抱え込んでいる感じが愛おしいなって思ってます。だって甘噛みって、愛情表現だもん。そのフレーズが、粟子さんの歌声のどんぴしゃで心地よく響く高さで歌われるのが最高だなあって思う。

 

次も新曲、氷菓。何度か弾き語りで聴いてきたけど、バンド編成だと雰囲気が変わってまた魅力的。弾き語りのじーんと沁みる甘くて切ない恋心が、リードギターのフレーズやビートが加わって、どこか可愛らしい印象が強まったように感じた。


ここからサポートメンバーを迎えた編成。東京はピアノに鳥山昂さん。テンメイさんが折角とりちゃんとの共演だから「今日はカメラ入ってないから、ココロオークション4人ととりちゃんとの画が欲しい」って写真撮影OKタイムがあったり、#とりちゃん、でXでトレンド狙おう!という目論見。最初、「写真撮りましょう」の説明だけでは、私たちが撮っていいのか、テンメイさんがフロアの写真を撮りたいのどっちか伝わりきってなくて、話噛み合ってない瞬間ありました。後にあるメンバー紹介タイムに「写真撮影では混乱を生んですみません」って第一声で謝罪してたテンメイさん、微笑ましい。


名古屋大阪のサポートは、メロディキッチンのおふたり。コーラスに愛子さん、ピアノにはすみさんのもはやお馴染みの心強さ。名古屋では、前日のリハ後に、ふたりで王将行って8,000円くらい使ったってエピソードを暴露されてた。おかげさまでその日の私の晩ごはんは王将に即決でした。

大阪でも、同じように愛子さんとはすみさんのふたりが酒豪であることが語られてて、「おかずもジャストサイズっていうやつ3種類ずつくらい頼んでて」って追加情報があった。お酒も胃袋も強いおふたり。名古屋では髪下ろしてた愛子さんが、大阪では髪を括ってた。どちらの雰囲気も素敵できゅんでした。


そんなスペシャル編成で披露された最初の曲、星座線。東京では、演奏途中にバリって割れる様に鳴ったカホンの音に襲撃されて一旦中断。「ココロオークションのトラブルメーカーは大体俺やねん」「慣れてなこの雰囲気に、ごめんなとりちゃん(笑)」って鳥山さんに一生懸命説明している井川さんを温かく見守る状況と、トラブルが故の予期せぬさっちゃんコール&レスポンスが楽しかった。「もう上手く繋ぐ気もない…」って遠い目をして静観してた大野さん。座り込んでるフロアの景色を見て「座って聴いてもらえると思ってなかったけど、草原に腰掛けてるみたいで、照明が星空みたいで、素敵やね」って粟子さんが零していて、嗚呼、ロマンチストで好きーってなった。

ちなみに名古屋では、アコースティックセットにチェンジした直後に「これは鳴ってる?半挿しかな(ギター側のケーブル確認)、いや挿さってる。まだ生音ですよね?」ってアコギの音が出なくて粟子さんが奮闘してた。結果、楽器の方じゃなくて電源系の方のケーブルが半挿しだったみたいで無事解決。解決までの間を井川さんが「東京でも機材トラブルあったんですけど、そのときは俺で…ということはこれはもしかしたら回っていくのかもしれん。大阪ではテンメイかリーダーが…」って繋いでた。大阪でも何か起こるんじゃないかって心配は、杞憂に終わっているので安心してください。


「お待ちかねの、蝉時雨です」ってはじまる、夏の四部作。愛子さんのコーラスとはすみさんのピアノの旋律がココロオークションの音楽にとても合っていて、情緒を刺激する。

この曲に登場する、声、雨、君、蝉、抽象的な表現が何を指すのか、ぐるぐると考えていた時期があった。結局納得のいく答えの出ないままだったけど、今回のツアーのライナーノーツを読んで、数年越しに答えを知った。〈君の声〉は、何かやりたいって情熱を内に秘めた自分自身の声だったんだなあ。懸命に鳴いている蝉たちの声に勇気をもらって〈僕も飛んでみるからさ〉〈待っていて蝉時雨〉と語りかけてる。夏の終わり、今まさに、飛び立つ、その直前。名曲ってこういうのを言うんだなあ。


粟子さんの弾き語りではじまる、夏の幻がとても切なくて、ああ好きだなあって思った。身体と心に響く、漠然とめっちゃいい…って感じ入るときほど、その素敵さを表現できる言葉と知識が不足している気がするの、もどかしい。


「メンバー紹介しまーす。ベースの大野です。新宿はいろんなひとがいますねー。吃驚するくらいエロい格好した女のひととか、お人形さんみたいに綺麗な顔した男のひととか。開演前に近くのコンビニ行ったんですけど、その綺麗なひとが店員さんに横柄な態度とっててすごい嫌やったー」「隣のケバブ屋見ました?あのスペースに6人くらいぎゅーぎゅーで。人件費どうなってんねん」って、大野さんのお喋りは軽快。

粟「今日ここ昼公演もあって、THURSDAY'S YOUTHってバンド知ってます?そのコらが『ケバブ食べながらリハ見ていいっすか?』って」

大「ケバブ食べたなって、ちょっと腹立ったもんな」

粟「あ、ほんと?俺は普通にいいなーって」

井「今日悪口がすぎるで(笑)」

大「まあ、そんな多様性を尊重していきたい大野でーす」


「ギターテンメイくんです」って、くん付けの紹介がなんだか可愛らしかったなあ。粟子くん、って響きもかわいい。名古屋では大野さんに「ぼそぼそ喋んなやー!」って野次られつつ、粟子さんが「でも、声楽部やったもんな」って紹介からの、テンメイさんのバリトンボイスの美声披露。


「ドラム、さっちゃんです!」って紹介を受けて、「ドラムの井川です!はじめて真面目に喋る」って井川さんが語るこの数年のココロオークションのこと。事務所を辞めて、コロナ禍もあって、できなくなったことが多くあって、続けるのがしんどいこともあった。でも反対にできるようになったこともあって、そんななかで「いまも変わらず力を貸してくれるひとたちのおかげで、こうして活動できてます」って、普段の微笑ましく肩を震わせてしまう雰囲気の井川さんのMCとは違う様子に、メンバーが口を挟めずにいた、至極真面目な空気感。井川さんの熱くて実直な優しさが滲み出てた瞬間のファイナル大阪でした。最後に大野さんが「公で事務所募集することになるとは…」って独りごちてたのがなんだか微笑ましかった。


メンバー紹介を終えて、「ここからはバンドだから…」って粟子さんがやんわりと起立を促した大阪。空気を察知して、言われずとも立ち上がるフロア。その反応に「あ、みんないい子たちだねぇ」って柔らかい声音でしみじみと粟子さんが言葉にするから、無性に照れた。いい子たち…いい子たちって、擽ったい響き。


サポートを迎えたまま、雨音。愛子さんのコーラスと粟子さんの歌声とのハミング。音源の再現をしつつ、バンド編成の熱も孕んだ、夏の4部作。続けて、線香花火。身体と心に響く、漠然とめっちゃいい…って感じ入るときほど、その素敵さを表現できる言葉と知識が不足している気がするの、もどかしい()。


「さっき、さっちゃんも言ってたけど事務所辞めて」って話す粟子さんの後ろで、自分の名前に反応して決めポーズする井川さん。

「いつかは居なくなるやんか。俺らみんな、人間やから。バンドも居なくなる」そんな普遍的な事実を真っ直ぐに言葉にする粟子さん。いつか終わりが来るからいまが愛おしい、って音を鳴らしているココロオークションのことが好きだって気持ち、ずっと変わらないなあ。事務所を抜けて、コロナ禍を経て、想像を超えるようなしんどい思いも苦しい経験もあっただろうけど、私にとってのココロオークションの魅力はいまだって変わらない。いつだって音楽に対してとても真摯に向き合っていて、そんな彼らの奏でる音楽が心を潤してくれる。大好きだなあと思う。

「俺はネガティヴだからさ、好きなアーティストのライブ行くときも、はじまる前から終わりを考えて寂しくなっちゃうんやけど、考え方が変わって、この瞬間はいましかないからさ、それを噛み締めて、大切にしたい」真っ直ぐな粟子さんの言葉に堪らなくなって、涙を堪えきれなかった、僕らは愛の中。


「歌う度に大切な曲になっていきます」って続いた火花。曲頭に力強く奏でられたピアノのグリスに心が跳ねて崩れ落ちそうになった。初日の東京なんて、鳥山さんずっと私からは死角の位置にいたから、あれはまるで凄腕スナイパーの狙撃でした。不意に心臓を撃ち抜く鍵盤楽器の魅力。ココロオークションのメンバーがそれぞれに鳥山さんに向き直って演奏しているのも、それに応えて立ち上がって演奏する鳥山さんの姿も、胸熱って感じだった。

大阪では、途中、歌詞飛ばした粟子さん。東京でも僕らは愛の中で歌詞飛ばしてて、「歌いながらとりちゃんのピアノ聴いてたら、すごく素敵で、一緒にこうして音楽続けて演奏できてるのが幸せだなあ…って思ってたら歌詞飛ばしました」って説明してたのを思い出して、きっとこの日の火花もそういうことなんだって思った。そんな粟子さんの顔を覗き込んで様子を伺うようにしてたテンメイさんのお兄ちゃんみが強くて微笑ましい。はたまた、粟子さんの末っ子みが溢れ出ていたのか、それもまたかわいい。実年齢とは逆転の現象。

「まだまだやめへんから!!」ってとても楽しそうに叫んでいたのが胸をぎゅっと掴んだ。


サポートメンバーを送り出して、井川さんのMCがはじまる。「メロディキッチンのふたりが俺たちの曲を素敵に料理してくれて、メロディキッチンだけに」って絶妙な例えを披露したその瞬間、各々にチューニングしていた楽器を、ピタッと揃えてミュートさせたメンバー。これはもはや団体芸だと思った。この不思議なチームワークは、ツアーファイナルが故ですか。

「俺たちだけでもフライしてかなあかんねん!できるよな?!」って熱く問いかける井川さんの圧に応えて、大野さんがピシッと直立不動に姿勢を正したその勢い、かわいすぎた。井川さんが熱く問いかけるたびに、その姿勢を保ったまま強く勢いよく頷いて返事してるの、チャーミング過ぎて、好き。大野さんってほんと掴みどころなくて、魅力が底なし。


名古屋では、メロディキッチンのキッチンと料理をかけて曲振り。

井「ココロオークション4人でも、キッチン…曲を素敵に料理して…フライ、していくんでよろしくー」

大「あ、そっち?」

粟「揚げ物の方ね?」

FLYとFRYをかけていると判明したときの、あ、そっち?って空気感、好き。上手いこと言ってる絶妙な空気感、好き。

東京では、鳥山さんの鳥にかけての曲振りしてた。曲は言わずもがな、フライサイト。ここからは再びココロオークション4人編成。


続くヘッドフォントリガーは、見どころ満載。寄ってくるテンメイさんに応えて、自分も膝ついて掻き鳴らし合ってる粟子さんと、じゃあ自分はさっちゃんと、って感じでドラムに向き合う大野さん。この光景を眺めているのが、幸せだなあ。

テンメイさんと大野さんが掻き鳴らし合ってるのはもう、毎度のことながら最高ですよ。


アンコール、曲前の井川さんによる物販紹介。

井「こちらタンブラー。しずくちゃんってキャラクターをボーカルの粟子が書きました」

粟「僕すごい雨男なんで、雨をモチーフにして書きました」

井「タンブラーだけに飽き足らず、缶バッジとステッカーにもしました!」

大「乱用やな」

ひと通りの新しいグッズ紹介を終えて、「俺準備するわ」ってブックレットの紹介は大野さんが引き継いだ。歌詞カードと曲のダウンロード用QRコード、楽曲解説と素敵な写真を含んだこのブックレットがCD代わり。夏の雫の物として残る姿だって説明した大野さん。言葉の選択が素敵だなあ。「これだけは絶対買って帰ってください!正直タンブラーはどうでもいいです、もう結構出たんで」って東京名古屋で結構売れたらしい。よかったです。

名古屋では「なにニヤニヤしながら聞いてんねん!うちのさっちゃんが真面目にグッズ紹介してんねん!」って大野さんが割って入って、粟子さんが「ニヤニヤしちゃう気持ちこちらも同じなので」って冷静に賛同してた。物販紹介のあの空気感って、改めて考えると、バンドごとで違うなあって、ココロオークションならではの雰囲気、微笑ましいです。


「最後1曲、楽しくやって終わろうと思います!でも、コロナ禍で、寂しくて会いたくて、作った曲です」って、アンコールに、スーパームーン。あの辛かった時期に、身も心も荒んでしまいそうな制限ばかりの日々に、こんなに優しくて温かい気持ちで誰かを想う曲が生まれていること、とても愛おしいなと思う。粟子さんの人格の穏やかさが、愛おしい。


音楽はいつだって近くにあって、再生ボタンを押したらすぐに駆けつけてくれる。「でも、それでも寂しくなったら、また会いにきてください」って丁寧に真っ直ぐフロアに向かって言葉にした粟子さんが、最後ステージから去っていって、夏の雫ツアーが終わった。


メンバーがステージから去っても、明かりの灯らないままのフロア。もしかしたら、いけるかもしれないと、期待を寄せてはじまった再びの手拍子。

しばらくしてステージに戻ってきた井川さんが、「曲を相談してました、遅くなってごめんな」って、ステージにメンバーが揃った、ダブルアンコール。

チューニングしながら粟子さんが「寂しくなんのはやない?」って冗談めかして言葉にした。暗いままのフロアの雰囲気をいいことに、あと少し、もう少し、って期待を込めて続けた手拍子は、確かに寂しさの表れだったかもしれない。だって、この幸せな時間をもう少しだけ、あと少しだけ、共有させてほしいって思っちゃったんだから、その可能性が目の前にあったら甘えたくなっちゃうの、仕方ない。

「俺ら、ダブルアンコール起きたことほんと数えるくらいしかなくて…2回とか?とにかく、超レアです!」って粟子さん。そんなダブルアンコールの曲、夢の在り処。両足揃えてぴょんぴょん跳ねてる大野さんがかわいい。たぶん跳ぶのあんまり慣れてない。でも跳んじゃう雰囲気が、愛。テンメイさんはお手のものだし、粟子さんの方が幾分か跳ね慣れてる感じも、愛。


曲が終わって、最後、フロアの反応に「みんなかわいいね」って噛み締めて、ほわほわと嬉しそうな粟子さんが、ぴょんぴょんと両手ふりふりしながらバイバイってハケていったの結構な威力だった。かわいいのは!!!あなたです!!!あんたが一番可愛いよ!!!!!!!って心の声がだだ漏れになってしまう瞬間でした。


バンドもヒトもいつか終わりが来る。命ある限りそれは普遍的な事実だけど、ここに在った事実っていうのは、恒久的に存在してると思う。目に見えない想いや形のない音楽は、ライブハウスの壁に天井に床に浸透していって、この場所だけの空気を作る。建物がなくなったとしてもその想いや音は空気にだって馴染んで永久的に存在する、きっと。それを認識するひとが誰ひとり居なくなったって存在していた事実は変わらない。私はそんな、自分自身の手の届く範囲を優に超えたスケールのお話を漠然と信じていて、その永遠を美しいと思う。

一方で、そんな預かり知らぬ永遠なんてどうでもいいと思う自分もいる。ライブハウスでの時間を、ここだけの空気感を、共有できるこの瞬間こそが何よりの幸せだと思う。いましかないこの瞬間を噛み締めて幸せそうに歌っている粟子さんの姿を見ながら音楽に身を委ねているこの時間が、私にとっても幸せだなって、強く思ったツアーでした。

ああでも、その想いの強さこそが、いまを永久に残る物だと思わせているのかもしれない。いつか終わりがくるという普遍的な事実と、それでも永遠があると夢見る気持ちは、表裏一体なのかもしれない。

 

01.ハンカチ
02.一等星の歌
03.願い事(東京)
03.向日葵(名古屋)
03.RUN(大阪)
04.世界が寝静まった夜に
セットチェンジ(CCR Unplugged)
05.夢で会えたら
06.氷菓
↓サポートあり編成↓
Pf.鳥山さん(東京)
Cho.愛子さん、Pf.はすみさん(名古屋、大阪)
07.星座線
08.蝉時雨
09.夏の幻
セットチェンジ(バンドセット)
10.雨音
11.線香花火
MC
12.僕らは愛の中
13.火花
MC
↓4人編成↓
14.フライサイト
15.ヘッドフォントリガー

en.スーパームーン(サポートあり編成)
wen.夢の在り処(大阪)