Who am I? 愛知公演

BURNOUT SYNDROMES

15th Anniversary Tour 「Who am I?」

2019.12.15(日) @BOTTOM LINE

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2019年12月15日(日)。待ちに待ったこの日に、不意に思い返すのは、明星ツアーのあれこれ。夢と思い出。過去、現在、そして未来のお話。いままでもこれからもBURNOUT SYNDROMESが傍に居てくれるっていうこの上ない希望の光に胸いっぱいになったあのツアーを思い返しながら、わくわくしてにやにやして期待に胸躍らせてる。どんな演出が、どんな言葉が、どんな曲が、って想像して想像して想像を巡らせて、期待することはとめどない。BURNOUT SYNDROMES 15th Anniversary 全国ワンマンツアー Who am I? 愛知公演は、初日。なにが起こるか、誰も知らない。でも、私があれこれ想像したこと以上に感情が動くことは、知ってる。

 

会場は、はじめて訪れた今池BOTTOM LINE。凝った装飾の青い鉄門、西洋のお城のような外観のライブハウス。その真ん中に佇むように貼り出されたMr.Whoのポスターが、まるで劇場の支配人のようだと思ったのは、今回の演出についてまだ何も知らない私。ライブハウスの雰囲気にさえわくわくして、あれこれ想像を掻き立てられるのなんて、彼らのライブ以外にないと思う。どんな要素にだってわくわくしてる。

そんなライブ前の居ても立っても居られないような幸せな心情を残したくて、久しぶりに長文を綴っているから、ここまでで目的は果たしたようなものです。あとはメモなような箇条書き。

 

今回ツアーの簡潔なあらすじは、Mr.Whoのちょっとしたトラップの所為で、感電してしまい記憶喪失(意味記憶ではなくエピソード記憶を失った)になったBURNOUT SYNDROMESが記憶も曖昧なままライブを開始し、オーディエンスの力を借りて徐々に記憶を取り戻す、そんなお話。

記憶喪失(設定)が故に見られた珍しい場面、随所に散りばめられた笑いどころと、劇場型ライブならではの細かい役の作り込み。楽しくなって仕方がない。

 

途中のMCタイムで、蘇った記憶を頼りにMCをはじめようとする石川さん。それに被せてぼそりぼそりとMCをしようとする熊谷さんのやりとり(ニュアンス)。

石「みなさ
熊「えー本日はお越しいただき誠にありがとうございます」
石「ちょ、ちょ、たぶん違う」
熊「ライブってギターボーカルが話すもんじゃ…」
石「なんか違和感あるやん。見てみ、みんな笑ってはるし」
熊「ほんまや」
石「たぶん、俺や」

そんな感じでフロント陣でまとまったところに廣瀬さんが「お前ら盛り上がっていけるかあああ」と盛大に煽る。#かわいいひろせによる聞いたことのない雄々しい声への一瞬の混乱。なにそれカッコいい。あまりにも様になってて、異様に盛り上がるフロア。

石「たぶんちゃう!」
廣「あ、でも、ライブってこんな感じじゃ…いつもやって…」
石「いつもやってる感じの盛り上がり方やなかった」
熊「確かに…珍しいもの見たみたいな反応やった」
石「たぶんやけど、もっとぽよんってしといた方がええわ。その方がしっくりくる」

 

記憶を失った彼らのことを「あなた達が導いてあげてください」と語ったこのライブの支配人であるMr.Whoは、我らが総監督いしかわたいゆーにとてもよく似た声をしていた。

 

今回のツアーには、分岐点があるらしい。第一の分岐ルートは左右の2択。オーディエンスの選択で、セットリストが大きく変わる。私たちの拍手の大きさが次の曲を決める。重大な使命を任せられてしまった、と一瞬戸惑ったのは私だけじゃなかったと思う。最初に右手、恐る恐る、様子を窺っているといった感じの拍手に聞こえた。初日名古屋では、左優勢。石川さんが左ポケットから取り出したのはなんの変哲もないデジタルの腕時計だった。

そして、バックスクリーンに表示されたのは走行中の車のフロントガラスから見える高速道路の景色。デジタルで表記された時刻、22:30。映像から連想したのは東名高速(以下略)。でも雰囲気が違う、これは、この曲は、本当に聴けてしまうのか、って震え出しそうなのを必死に抑えて、はじまった、i am a HERO。嗚呼、そうだ、午前零時前。演奏と共に時を刻んでいく数字を眺めながら、理由を明確に説明できないくせに、無性に泣き出したくて仕方がない。午前零時前。午前零時前。午前零時を告げる時報の音を紡ぐギター。スクリーンの映像はその音色とぴったりのタイミングでちょうど0:00になった。鳥肌が立つ感動なんて意識する間もなく、続いた「深夜零時の呼び出し」を告げる自転車のベルの音。繋ぎの精巧さに息を呑んだ。さっきまで車で高速道路を走ってたことなんてお構いなし、今度は自転車で「星空を観に行こう」って石川さんが先導した、ナイトサイクリング。そして、夜更けが近づく「午前三時」。眠れぬ理由は、伝えた想いの「余熱の所為」なのか、「それか、別れ際のキスで摂取したカフェインの所為」なのか、アタシインソムニア。曲がアウトロに向かうにつれて、刻々と近づいてくる時刻を思い浮かべて、思わず周囲を見渡した。訪れる時刻を口々に囁いて、これはもう確信だと共有して、熊谷さんの歌声を待った。「空は静かに白み始めていた 小説家 〆切前のam4:00」、曲のMVと一緒に聴く、文學少女。

 

作り込みの繊細さに、凝りに凝った楽曲の演出に感嘆した。演奏にも、選曲にも、映像とのシンクロにも。全てが繋がっていて、感情が動きっぱなし。右手ルートだったら何が起きるんだろうって期待も高めてくれる。

 

ライブも終盤、場内に設置されたレターボックスに紛れ込んでいた、Mr.Whoからの贈り物。謎の鍵(会場のロッカーの鍵)が石川さんの手に渡り、ライブ中にロッカーを開けにステージから去るメンバー。ロッカーの中にあったのは、彼らの思い出を辿ったアルバムだった。結成当初の写真、閃光ライオットでいい感じだったって喜ぶ彼らの幼い声、「今日もお客さん2人やった」「今月も大赤字やで」(渋谷CRAWLの階段の写真)って「次のリリースでダメだったら解散か」と諦める声、メジャーデビューが決まってはしゃぐ声「しかも、ハイキューやって!」って、大裕さんが強調する。そこからは、ツアーの集合写真。投影されては次々に切り替わっていく、一瞬しか映らない写真たち、檸檬、バタスタ、孔雀、明星、フラッシュバックのようなその写真たちが堪らなく涙腺にきた。こうやって綴ってるいまも、思い出して涙ぐむ。あの日もその日も、居た。間違いなく、彼らと私たちとで作った大切な思い出たち。

「全部思い出した。はやく戻らな大事な人たちのとこへ」

完全に泣かせにきてる演出だ、歯の浮くようなセリフだ、なんてどこか冷静に思っているくせに、泣きそうなのは誤魔化せなくて、とどめのように流れ出したのは、聴き慣れた円周率のリズム。ぶわあああああって一気に込み上げた熱くて激しい感情は、すかさず、ほとんど本能的に、彼らの登場を迎えるためのクラップに変換した。ライブも終盤戦。何もかも全部思い出した彼らが、彼ら自身で、BURNOUT SYNDROMESであることを証明するために、再びステージに現れた。

開口一番に、「全部思い出したよ」って石川さんの熱くて優しくて強い声。はじまった、墜落/上昇。聴きたかった曲が、なんの準備もしていない無防備なところへ、ここぞというところでやってくる。これが初日の特権なんだ。どれだけ想像してたとしても、全てがはじめて体験する展開で、新鮮で、あらゆることに涙ぐむ。熊谷さんが「御手を拝借」って言った。この曲でその煽りが聞けることを特別に感じる。

 

アンコール。恒例の廣瀬さんのグッズ紹介がはじまって、手にしたカンペのバインダー(熊ちゃんが作ってくれた、と廣瀬さん談)の最後の最後に書かれた指令に「ええええ!?」って突然廣瀬さんが大声を上げた。《短歌でいまの気持ちを表現してください》との無茶振りが書かれていたらしい。袖から「5・7・5・7・7やで!」って石川さんの声が飛んでくる。ああ、燃えつきサンデーだ、って思ったのはここが名古屋だから。短歌の珍回答、内容は忘れた。

廣瀬さんとフロアに呼び込まれて再登場した石川さんと熊谷さん。熊谷さんがちゃんと、「さっきの無茶振り、僕らが名古屋で持たせてもらってた燃えつきサンデーって言うレギュラー番組からきてます。廣瀬くんだけ全収録参加で、彼はそこでトーク力が驚くほど向上しました。ありがとうございます」って言葉にしてて、私はニヤついてしまいます。

 

物販紹介で廣瀬さんが「熊ちゃんに怒られるかな」って心配しながらマイクスタンドにかけていったツアータオル(ネイビーとミックスとで2枚)を1枚退け投げ、2枚目を退け投げ、「退けても退けても続くのかと思った」って熊谷さん。どう考えても真面目なMCの雰囲気だったのに、そんな熊谷さんの言葉に思わず笑っちゃう石川さんの「ごめん、笑ってもうたわ」って、メンバー同士だけの素みたいな雰囲気が好きだったなあ。

「はじめてヒカリアレをアンコールでやりました。以前の僕たちなら、いちばん盛り上がるところに持ってきていたと思います。僕はこれが嬉しくてですね、多くのタイアップをさせてもらって、みなさんに知ってもらえる曲が増えたおかげです」

ああ、それ、私も嬉しい。熊谷さんの思いが自分の気持ちと重なることがとても嬉しい。

 

「僕はタイアップが好きです。僕は自分のことをクリエイターだと思っていて、クリエイターっていうのは、黙っているのがカッコいい。ボーカルが前に出ないのはプロモーション的にどうなんだって声もありますが、黙って最高の曲を書いて、アニメに提供して、それがファンの方たちに響く。これ、カッコいいでしょう?」純真無垢に放たれた熊谷さんの矜恃。何もかも納得させてしまう説得力の愛おしさ。

「ふたりにもあると思います。それぞれが自分のカッコいいと思うことを貫いて出来たのがいまのバーンアウトシンドロームズです。だからあなたもどうか自分のカッコいいと思う姿で、迷い駆けていきましょう。」

「レターボックスに寄せられたお手紙、手紙じゃなくてもその声や掲げる拳、腕、笑顔が、その一つひとつが僕らへの手紙です。その返事を」ってはじまる曲は一つ。終わりと始まりを告げる、彼らからのラブレター。。

曲間、「このタイミングで聞いてもいいですか。今日バーンアウトシンドロームズはじめて観るよってひと。そうだよねいるよね。どうですか?変なバンドでしょう?全く前に出たがらないボーカルと、SEとか映像製作にまで手を出すドラム、そしてうるさいベース」

「変なバンドでしょう?」って熊谷さん言い方が好きだった、このニュアンス伝われ。そして、近くのお姉さんが静かに頷いてらしたのが、不思議と誇らしくて、気持ちをほっこりさせた。変なバンドでしょ?でも、最強にカッコいいでしょ?

なんでもやる、やりたいことに挑戦する、いま現在のこの姿こそがBURNOUT SYNDROMESなのだと声高に「いいか覚えとけ!名古屋!」って強い言葉で熊谷さんが叫んだ。痺れる程にカッコいい。ラブレター。の間奏。しっかりと刻んだ。忘れるわけない。

 

終演して真っ先に思ったのは、こんなに楽しい公演をあと最大6回も体験できるなんて、なんて、なんて幸せなんだ、ってこと。この幸福感は、回を重ねるごとに終わりが近づく寂しさに移っていくんだろうなって、楽しいからこそその反動はきっと大きいんだろうなあと思うけれど、いまはまだ、そんな先のことは考えられないほどにわくわくしてる。まだ見ぬ分岐ルートもある。ただただわくわくさせてくれた、初日公演でした。

 

史上最大キャパZepp Tokyoの日のお話はまた後日。