"N X A" TOUR -Funny Side-

memo.

NICO Touches the Walls

"N X A" TOUR -Funny Side-

2018.11.04(日) @幕張メッセ イベントホール

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仄暗いステージの上、人影が5つ。やけに目を惹く、絶妙にノリノリステップを踏みながら動く影は、光村さん。照明が付いて、姿を捉えたそのときに、思わず驚愕の声をあげてしまったのは、下手側で徐に黒のフライングVを構えてる坂倉さんが目に入ったから。ギター3本編成。轟音のうねりが心地よく響くイントロ。長かったN X A TOUR、ファイナルのはじまりを告げた曲は、N極とN極。出逢い頭にお別れを宣言されてしまったのに、なんとも言えない高揚感と清々しさを与える楽曲と演奏にはやくも魅了された。休む間もなく、Broken Youthへ繋ぐ。伸びやかな光村さんの歌声が幕張のホールに充満する、そのスケール感。FRITTER、THE BUNGY、と止め処なくアレンジで繋げてお届けされるキラーチューン。「灼熱の幕張ーー」って光村さんが張り上げた声により一層の盛り上がり。続いた、まっすぐなうた、になぜか涙腺を刺激されたところで、ようやく、小休止。

「ホールともなると俺たちが豆粒に見えてるひとたちもいるでしょう。本当はそういうひとたちのためにわかりやすいアクションの楽曲をやるのがいいとも思うんですが」って一区切り、言外にそんな気さらさらないですって言ってるようなものだと笑いたくなった。「Funny Sideなので、バンド史上1番面白いことをしようと思っています」それでこそNICO Touches the Walls、ってところが頼もしい。

 

「お知らせしていたので知っているひともいるかもしれないですが、今回ミステリーゾーンというものがあります。ここからはジェットコースター級の急展開。終わったころには別世界にいるかもしれない。今日はファイナルなので30分のところを40分を超える尺で」って光村さんの言葉に盛り上がる会場、に対して古くんが一言、「今日Mのひとが多いね」

 

「40分後、生きてまた会いしましょう」さすが、ミステリーゾーンと銘打っているだけあって、まるで螺旋状に深く深く沈んでいきそうな空間演出。紫と緑が混ざり合って幻影的なライティングで魅せられる。タイトルがわからない曲が大半なことが幸いしてか、振り回されるという感覚よりも、そのままを享受するような感覚。いずれにせよ為すがまま。ホールに充満しているNICO Touches the Wallsの音楽をただただ感じていた。

 

バニーガールとダニーボーイで「踊るクレイジーな幕張」にニヤついて、そのあとの「僕を置いてかないでくれ」は、それ私たちのセリフでは…って俯瞰視点の感想を抱いた。

 

ミステリーゾーン前半戦が終わって、一度暗転。騒めきの残っている会場に「まあまあ、まだ半分ですから」ってやんわり歓声を制止するみっちゃん。まだまだ継続のミステリーゾーン。このときの「まだみんな生きてる?」って言い方がすごく好きでした。

後半戦、光村さんの歌声が伸びる響く、プレイヤ。吸い込まれそうな歌声に加えて、ステージから放たれたブルーのライトが会場全体を見渡すように広がっていて、そこに重なるミラーボールの煌めき。まるで異空間。骨の髄まで歌声が浸透するだけじゃなくて、視覚的にも飲み込まれそうな幻想空間に魅せられていた。これは本当に終わったころには異世界に辿り着いているかもしれない。

 

ミステリーゾーンに関しての光村さんからのあれこれ。「ミステリーゾーン、別バージョンを聴きたい、なんて要望は一切受け付けません」「どうやってやったかというと、ひたすらに練習。基本に立ち返って、人力で。これからも人力の限界に挑戦していきます」って言葉の人間味に急に愛おしくなってしまう。「こんな馬鹿げたことをするのは自分たちくらいでしょう」「10年前は頭堅かったから、こんなことしようとも思わなかったと思う」「自分たちの曲をこうして切って繋げてって試みをできるまでに成長しました」って表現に、DJがやるようなことをライブで生音で表現する試みで、そういう人力なんだ、って自分のなかで言語化できた気がしました。

「そんじょそこらのバンドにはできないことだと思うので、真似しないように」と締められた、痛快さに笑ってしまう。

 

分からない曲はそういうもんだと割り切って、ただ純粋に楽しめるからむしろ私には優しくて、分かる曲のが混乱するっていうよく分からない状態に陥りました。ノリノリテンポで、手をたたけがはじまったかと思ったら、がくっとテンポダウンしていつの間にか曲はマシ・マシへ。そして気づいたら手をたたけに戻ってきていて、何が起きたかわからない、混乱。

 

無事に生きて再会を果たした、続いての曲は、SHOW。「目一杯照明を当ててくれ」歌詞通り眩い光に照らされて、ばっと大きく両手を広げて反り返るみっちゃんのシルエットが浮かんでいる。

 

mujinaの間奏、いつもはハンドサインでクラップの回数を教えてくれるところ、このキャパでモニターないなか、みっちゃんが「2回」「3回」「4回」「10回」ちゃんと声で伝えてくれることに、ちょっと感動しました。ちゃんとステージの人影が豆粒みたいに見えてるひとたちへの配慮。

 

銀テープ噴射の演出が、楽しい時間の終わりを教えていくようで、底抜けに明るい曲を聴きながら、笑顔のまま物寂しくなる、Funny Side Up!「どっから来たの?白いスターの髪飾り」でみっちゃんの投げキッス飛んできた。

 

最後の曲って言われたら、客席がえーってなるのは当たり前で、「その気持ちは俺も同じだよ」って諭すみたいに優しげに返答したあとに「まあでも40曲もやったからね」充分すぎるでしょと言わんばかりに急に、ばさり。「いつの間にか終電なくなってたらどうする?ミステリーゾーン40分とか言ったけど本当は2時間くらい経ってるかも」って、それ本格的にミステリーだなあって思いました。それはそれでありだと思ってしまったし、終電逃してるならこのまま ユラユラ フラフラ 朝まで踊りたいぜ。もちろんNICOのみなさんにもお付き合いいただいて、っていう冗談のような、本音。

 

「どうせお別れするなら、楽しく笑ってお別れしましょー!それでは、来世でまた逢いましょう」こんなにも清々しくも前向きなただのお別れがあるんだなあ、って、ズルいと思う。そんな風に言われてしまったら、素直にお別れすることにするしかないじゃないですか。

 


‪さあ、アンコール。‬本当のお別れが近づいています。「さっき裏で数えたんですけど、40曲届いてなかったです。38曲だったので、あと2曲やって帰ります」ってそんな理由付け嫌いじゃないです。

 

‪「1月25日にN X A TOURを発表してから、その意味とは、の答え合わせはライブで、と言ってきました。折角なのでここで答えを明かしておこうと思います。N X A TOUR、その意味はNICO Touches the Walls X(10)th Anniversaryです」って光村さんの言葉に、歓声をあげたくなる気持ちと息を飲んだ実際。頭の片隅では、Electric Sideのときは「10周年は何もしないよ。ほんとだよ?」って言ってたのにって軽くツッコみながら、こんな風に明らかにされた10周年記念の全貌、鳥肌ものだって思った。けれどそれも束の間、「‬でも待てよ、と。名古屋ではN極とN極ではじまって、Aは来世、つまり、Afterlifeで終わる、間のXはミステリーゾーンだとお話ししました。ACO Touches the WallsのみなさんはNICO × ACOだって言っていたし、浅野くんはね、NICO × ASANOだと。つまり、なんだっていいんです。俺たちの音楽を自由に感じ取ってもらえれば。音楽の上では何やったって自由です」光村さんがそういうのがとても好き。この言葉を体現して存在しているNICO Touches the Wallsがとても好き。

 

正真正銘最後の曲は、終わらない天地ガエシ。アウトロのワンフレーズ弾き終えて、ストップ、また鳴らして、ストップ、溜めて、またはじまって、散々振り回されながら焦らされて焦らされて、それでもこんなにすっきり後味はいい。不思議な魅力だなあと思います。着いてこれるのかって彼らからの挑戦状のようでもあって、その度にその魅力の深みにもっともっとハマりたくなって、いっそハマってしまうのが怖いとさえ思うような、そんな支離滅裂な心情でした。