Good Morning [New] WORLD TOUR 日本凱旋公演

BURNOUT SYNDROMES

Good Morning [New] WORLD TOUR FINAL

2022.12.08(木) @Veats Shibuya

 

朝、平時と比べると比較的早い時間に目が覚めた。いつもならそこで寒さに耐えかねてもう少し…と布団に潜るところを、高揚した気分のままゆっくりと身体を起こした。おはよう、世界。遂に、来た、この日。愛するBURNOUT SYNDROMESのワンマンライブの日。米国、南米、中東と様々な国からの招待を受けて、世界を飛び回って、まとめてGood Morning [New] WORLD TOURと銘打った、そのファイナルに位置付けられた渋谷での日本凱旋公演。

東京往きのバスに乗り込むために足取り軽く駆け込んだ地下鉄は、平日の出勤時刻に重なった。スーツ姿の人物が大半を占める車両内で、私だけが異質なような気がして、こんなに幸せでいいんだろうかと、背徳感混じりの高揚感で落ち着かないでいた。


どこまでもどこまでも、楽しみな気持ちで、待ち遠しすぎて、長く長く感じた待ち時間の末、ようやくの開演。大好きな彼らの登場を想像して拍手喝采で迎えたところに、スクリーンに流れ出した映像は、海外でライブを行ってきた彼らの軌跡だった。アメリカサンゼノでのCrunchyroll EXPO 2022からはじまり、地球の裏側である南米アルゼンチン、会場とホテルが一体型のアトランタ、ロサンゼルスでの対バンイベント、ポートランド、急遽のサウジアラビアでのJapan Anime Town。各地でのライブ映像や意気込みコメント、オフショット。映像よりも実物の彼らに会いたい気持ちのが強くて、何だかとっても焦らされた気持ちになったけれど、同時に、ちゃんと撮影して残してくれてたんだなあと、嬉しかったというか感心したというか安心したというか、全てはこの映像の為に秘密裏に動いていたのだ…ってことですか、って勝手に納得した。熊谷さんがTwitterに投稿してたソログランドキャニオンとか、フレームの外側にちゃんとメンバーが一緒にいたんだなあ。そういうのさ、ファンクラブに入り続けるようなファンが求めてるものって、そういうのさ。ねえ。

これは、完全に余談ですが、旅立つために飛んだなら、ちゃんと着地する映像も撮らなきゃ…って個人的には主張します。

アルゼンチンのファンのコメントには、ちょっと興奮した。「ネットの日本のバンド紹介してるサイトでバーンアウトのこと知った」って、アニメで知ったじゃないんだ!そういう出逢いもあるんだ!嬉しい!

アニメタウンのネオン看板に、『牛丼サンバ専門店』って文字を見つけて、頭の上にはてなが浮かんだ。牛丼サンバとは。しかも専門店、とは一体。

そして、突如、前触れなくはじまった世界を回せの歌唱。聴き慣れないその歌声が廣瀬さんのものであることに気づくのに少しだけ時間を要した。スクリーンには、アメリカの広大な大地で車を走らせる廣瀬さんの横顔の映像。じわじわと笑いと手拍子がフロアを埋めていった。


彼らの旅の記録を流したオープニングムービーが終わり、回転するようなフィーバーサウンドのなか、流れたエフェクトボイスのアナウンス。

Ladies and gentlemen, thank you for coming BURNOUT SYNDROMES' live.

Now stand up our music show. Are you ready?

颯爽とステージに現れたメンバーは、それぞれが日の丸の国旗を手にしていた。どこか愛おしげに国旗を羽織りながら登場した石川さん、上手お立ち台に登るや否やフロアに見えるようにすっと日の丸を掲げた廣瀬さん、片手に握った国旗を軽やかに振り回しながらフロアに手拍子を煽る熊谷さん。


待ち侘びたメンバーの登場に、勢いを増すフロアの手拍子。エフェクト混じりの声がくり返す「おはよう世界」と「Good Morning New WORLD TOUR」のアナウンス。高らかなツアータイトルコールが、開演を告げた。

Good Morning New WORLD TOUR twenty twenty-twooooo!!


「おはよう世界!Good Morning Shibuya! We are BURNOUT SYNDROMES from Japan Osaka!」英語で叫びながら、小指から指折り丁寧に握り込んだ拳を高々と掲げた熊谷さんが歌い上げるのは、もちろん、Good Morning World!。「おはよう世界 Good Morning Worrrrrrld!」力強い歌声がライブハウスに響き渡った。嗚呼、この瞬間をどんなに待ち望んでいたか。じーんと浸る隙さえなく、「Let's fuckin' go!!」の煽り言葉。熊谷さんの口から出るFワード、なんだか無性にそわっとしなかった?私はした。とても。


曲終わり、間髪入れずに、周波数の合わないラジオみたいなノイズ混じりのコーラスが流れ出す。エフェクト加工されたそれは、けれど徐々に聞き馴染みのあるフレーズになり、次の曲を告げた。おはよう世界で迎えた夜明け、昇った朝日の、ヒカリが、そこにはあった。

「世界中でみんながこの曲を合唱してくれていました。ヒカリアレー!」

彼らが海外でどれほどの歓声を浴びてきたのか、オープニング映像でも、溢れかえるSNSの情報でも、知ってしまっている。そのエネルギーに負けない熱をわかりやすく届けられたらどんなに幸せかと悔しく思う気持ちは未だに拭いきれはしないけれど、割れんばかりの歓声を浴びて国外のステージに立っていた彼らのことをそれはそれは誇らしく思う。それに、BURNOUT SYNDROMESが大好きだってことと、いまこの瞬間、ライブで逢えるこの時間をとてつもなく楽しみにしていたことは、どう転んだって事実でしかない。どうか伝わっていてほしい。いま、あなたたちの目の前にいるのは日本の私たちだという事実を、その熱気を彼らに知らしめたい。「渋谷のあなたに!ヒカリアレェー!」って叫んだ熊谷さんの言葉に空いていた穴が少しずつ埋まっていくような気がした。


「Hello, everybody! 楽しむ準備できてますか渋谷ーー!もっともっと俺たちとバイブス高めていきましょう!そう高く高く!上に!上に!」って石川さんがキメた曲振りで、次の曲を察する、エレベーターガール。熊谷さんのライブアレンジされた歌い方が耳に残る。「きょりっかーん」が特に、特に好き。何だかとっても挑発的だ。曲の終わりと恋の終わりを告げるように、シンバルの乾いた音が鳴って、その余韻が響く間はなかった。


熊「今日はグッドモーニング ニュー ワールドつやーー、つやーつやーつやー(笑)」

石「おいおい(笑)お前発音良くなりすぎや」

熊「TOUR!にお越しいただきありがとうございます!ソールドアウト御礼です。どうですか」

石「いや本当に……っただいまって思ったね」

熊「結構我々恐れてたんですよ。久々にこの、ホームカントリーでやることによって、結構、だらっとした感じの演奏になってしまうんじゃないかって」

石「最初からバキバキやったね」

熊「世界でいちばんバキバキでしたね」

世界での演奏環境がなかなかになかなかだったって思い出話。スムーズに進みすぎるこの日のリハーサルに「スタッフできすぎて困ります。緊張感ないです」って熊谷さんが逆ギレしたエピソード。

熊「世界なんてだいたい音出ないですからね。6時間やって音一個も出ないときのアーティストの気持ちわかります?」

石「熊谷くんが、客席で鎮座してたやつ」

熊「オープニングの映像のね」

石「あれが、6時間中の熊谷くんです」

熊「あれしかやる事ないんだもの」

石「よしっ帰るかぁ、って言ってました」

熊「僕ら出ないですよぉ?音出なきゃ出ないですよぉ?って。今日のやりやすいこと」

石「それもみなさんのおかげですー」


石「やー上手なったね、日本語」

熊「だいぶ練習した」

石「ずっと英語ばっか喋ってたから」

熊「君もさっき、母国語出ちゃってたね。そういうのよくないよ、ちゃんと現地に合わせないと」

石「現地に合わせます」

熊「でもせっかくなんで、英語でちょっとやりますか」

石川さんをやんわり諭したかと思ったら、英語でやろうって提案する熊ちゃん、なかなかの手のひら返しでクスッときちゃう。

石「こっからね、よーい、はい!」

熊「Can I introduce my member?」

石「Oh, yeah!」

熊「Bass.Taiyu Ishikawa!」

熊谷さんからの紹介を受け、揚々と英語で話し出すいしかわたいゆーの英文チョイス、多分だけど、教科書英語から離れて日常使いするようなやつなんじゃないかな。聴き馴染みがなくてニュアンスも汲み取れない…語学が堪能になりたい。熊谷さんに「あんまキャッチボールになってなかったよね」って言われるのも仕方がない、はず。私の語学が堪能でないばかりに…仕方がない。

熊「And Drams.Takuya Hirose!」

廣「I'm happy to be with you! Thank you!」

石「彼の何がすごいってこの一文で乗り切ってきたことです」

廣「各国これだけで」

熊「手抜きではぁ?」

石・廣「「違う違う」」

石「大事な一文に込めてるよ」

廣瀬さんと一緒になって否定して、フォローする石川さん、なんか好感度がじわっと上がった。

熊「あと未だに私には何て言ってるか聞き取れん」

廣「アイム ハッピー トゥービー ウィズユー センキュー」

石「あなたと会えて嬉しいよ、って」


石「And Gt.Vo.and compose all songs. Mr.Kumagai!」

熊「My name is Kazuumi Kumagai. Nice to meet you. Love you♡ love you♡ mmmwah♡  mmmwah♡ love you♡ mmmwah♡ Yeah!」

らびゅーらびゅー言いながら指ハート乱れ打ち、んーまっんーまっしながら両手で投げキッスで分断に愛を振り撒く熊谷和海。なんてこった!これはさあ!ほんっとさあ!解釈違いにも程があるよ熊ちゃんはこんなに陽気じゃない、熊ちゃんはこんな…こんな…あーもう好き。ありがとうございますご馳走様です。ありがとうございますありがとうございます。

石「彼もこの一本でやってきたから。愛だけで乗り切ってきたから」

熊「これでギャラ貰ってるから」

石「意外とね、どの国でもウケんのよな」

熊「なんでやろ、みんなトムとジェリー好きなんかな」

石「オマージュがそれなん?」

熊「chu♡ chu♡ chu♡ love you♡って、トムとジェリーでしか英語のイメージない」

高速投げキッス連打のその仕草。ちゅーってなったお口。本当にもう、ありがとうございます。いいぞ、もっとやれ。

石川さんが「日本に生まれてよかったなって思います」って話しはじめて、海外のひとはアニメ好きだから、日本にも親しみを持ってくれてるってお話。挨拶にしても、こんにちはとかじゃなくて、元気な「お疲れさまー!」って声が飛んでくる、っていう体験談。熊谷さんが「日本語でgoodbyeはさよならじゃなくて、お疲れさまよ」って言ってた理由、いまだから分かる。熊ちゃんのこの発言は、演出側だから出た、ほんのりネタバレ発言。


BURNOUT SYNDROMESには、ジャポニズムな曲がたくさんあって、それが、「ここにきて他のアーティストさんとの差別化」が図れていて、「和楽器入れるんだねっていうのが評価され」たって説明を通して、「逆輸入してもいいですか、日本の皆さんに。みんな正直ちょっと三味線とか興味ないやろ。あかんでちゃんと聴かな。日本の魂の音、みんな意外と大好きなんです。盛り上がってくれますかジャパニーズ!」って熊谷さんの曲振りから、BLIZZARD。コマ送りのような所作で、踊り乱れる熊谷さん。

「焼かれて焦がれて」って歌いながら、ギターボディを抱き込む手つきの恭しく艶めかしいこと艶めかしいこと。そのまま左手がスーッとネックを上へと滑っていくのなんて、なんて扇状的な仕草だろう。眩暈がする。微アレンジのギターソロは、気持ちをそわっと高揚させた。


「寒いこの季節にぴったりな曲をもう一曲聴いてください。銀世界ー!」

「Let's go」ってアメリカ気触れの勢いのよい石川さんの先導に、増していくフロアの熱気。軽快に轟くように微アレンジされたギターリフが、軽やかに嘶くように素敵に鳴っていた。

「君は春風 道拓く者」っていう言い回しの歌詞変えがとても素敵に響いた。


三味線と尺八の響くSEからはじまる花一匁。雅な雰囲気のSEをバックに、歌い上げる熊谷さんの「花一匁」の「はー」って鼻に抜ける発声が美しくて美しくて美しくて惚れ惚れした。緩やかに振り下ろされる両掌を合わせた手刀。丁寧に正確に、ピッチを取ろうとしてるかのように上下する手も美しくて気持ちがそわそわと擽ったい。

「日本古来の遊びの歌です。一緒に遊びましょう。花一匁」

フロアを指差し、爛々とした瞳で頷きながら、「欲望を隠しもせず」って歌う熊谷さん。好きで好きで仕方がない存在のあなたたちに向ける私の瞳は、さぞ欲望まみれでギラついていて、その姿は決して、美しさや儚さだけではないことでしょう。そんな姿ひとつひとつを指差し確認するような仕草が、まるでそんな姿こそを望んでいたのだと言っているようで、醜さもなにもかも享受してくれてるような心地にさせて、堪らなかった。

「素晴らしい遊びっぷりでした」


尺八鳴り響くSEのなか、石川さんが叫ぶ「踊ろうぜ!」「日本のお祭り、若草山!スターマインー!」勢いよく、どん!っとはじまる祭囃子。TREASUREのときは、熊ちゃんちゃんと二人羽織で難解フレーズ弾いていた気がしたけど、弾くときと弾かないときの違い、なんだろうなあ。単純に曲数かな。配信、全く手元写してないのいっそ笑っちゃう。


祭囃子が遠ざかって、熊谷さんが楽器を置いた。Oceanくるのかな?って頭の片隅に浮かんだ予想を否定するように、チャイニーなSEが流れはじめたときの、歓喜。まさかまさか、また熊谷お兄さんと遊べるなんて思ってなかった!フロア大歓喜な、国士無双役満少女。「日本の曲と言いつつ、中国大陸の音も、持ってきました」って、ハンドマイク握る右手と揚々とスイングする左腕。体幹はほとんどブレず、どこか優しげにふわふわと左右に振られる腕が無性にかわいい。

2番Aメロ、前屈みの姿勢で片足お立ち台に乗せてタンタンと激しくリズムを刻む様が一心不乱で、魅了された。

「Once again!!」って、スイングの振りを促す英語煽り、濁点の濁り方とかアクセントの付け方とか絡む無声音とか、好き好き好き。熊谷さんの発声、発音、抑揚、英語だろうと何だろうと、心を擽る。

間奏で、石川さんと向かい合わせでくるくる回る熊谷さんが、SEの音色に合わせて弦楽器演奏するマイムしてるの、推し。

曲終わり、体幹の良さを感じさせる後ろ蹴り、からの武闘家スタイルで拳と掌を合わせての「謝謝」と挨拶する熊谷さん。


熊「ていう感じでやっておりましたー。楽しんでいただけましたでしょうかー。ありがとうございます」

石「意外とこう、中国の音もね」

熊「そうそうそうそう」

石「フーー!ってなるよね」

熊「分からへんから、あっちのひとには」

石「アルゼンチン行ったときはね、楽屋にはもう、あのー、韓国のお菓子ばっかでした」

熊「そうそうそうそう」

石「美味しいすけどね」

熊「一緒くたにされちゃって」

石「ダブルで楽しめるっていう」

熊「そうそうそう、いっぱい思い出ありますよ」

石「思い出しかないよ。誰もパスポート無くさんかったことだけが奇跡やと思ってる」

熊「すごかったよねえ」

石「ほんまに奇跡やと思ってる」

熊「熊谷何回ワクチン接種証明書忘れたか」

石「ふふふ」

熊「その度にデータを漁ってもらって…すみませんでした」

石「やっぱアルゼンチン帰りかなあ、俺は。絶対帰りたい廣瀬と、別にどうでもいいふたり、この対立が」

熊「はいはいはい」

廣「そうだね。帰れなくなったんですよね僕ら一回」

石・熊「「そうなんですよね」」

廣「あのー、何かチケットに不具合があって、帰れなくて、で、ごねてごねてごねまくったら、なんか、たまたまいけた、みたいな。向こうのひとがちゃんとした書類を準備してくれて、いけました」

熊「いままで見たことないぐらい速く動いてました。こんなこいつ速く動けるんや」

石「そうそうそう、すごかったよねえ」

熊「すごい速さでした」

石「アルゼンチン中の病院調べてたもんな」

熊「そうそうそう。なんかその接種証明みたいなのが不具合があったらしくて、ワクチンのね。国行くたびにその国で打ってるんですけど我々。石川くんと私は別にアルゼンチン永久在住でもって」

廣「僕は早く日本に帰りたかった」

石「飯が食いたくてね」

熊「動きを止めるフロントマンと、誰よりも速く動くドラムがいましたね」

石「俺らコーヒー飲み行ってたもんな」

熊「うん。コーヒー飲む?一旦コーヒー飲む?つって」

石「いやーでもねやっぱアルゼンチンずっといなくてよかったです。やっぱ帰ってきてよかったなって、今日はじめて思いましたね」

熊「そうやね!思いましたね。結構ね、今日不安やったんですよ。ちょっと言うのあんまあれですけど、各国の人たちエネルギーやばいんすよ。あいつらうるさいんですよ。アルゼンチンのひとなんか、もうカルチャーショックですよ」

石「あれすごいですよね」

熊「この、この時間あるやないですか。ぐだぐだした、この時間あいつら暇だから何すると思います?」

石「この時間僕らの時間じゃないですからね」

熊「そうそうそう。あいつらがサッカーの応援歌歌う時間なんですよ」

石「そうそう肩組んで」

フロント陣ふたりで揺れながら歌い出す、WE ARE THE CHAMP~THE NAME OF THE GAME~ 、オーレーオレオレオレーっと輪唱に合わせて廣瀬さんが添えるバスドラの音。

熊「そんで廣瀬もいまみたいにキック踏み出すんですよ意味わからん。ひと喋ってんのに(笑)一生懸命スペイン語で喋ってんのになんかオーレーオレ言い出すんですよ。意味わかんない」

冗談混じりに面白おかしく語られる思い出話。

熊「割とその、現地の人たちのパワーに助けられてたみたいなとこあるんですけど、それに対してこの、日本の人たちってどうやったなかあって不安やったんですけど、全然大丈夫だった」

石「大丈夫どころかよ。今日ですね、全世界に配信しております」

熊「そうなんでです。皆さんのパワフルなねえ、やーもう、パワフルな姿がたぶん、全世界に出てますよ」

石「我々ねえ、めっちゃ、インタビューとかでも言ってたんですよ、日本の、ファンの皆さんの、凄さ、知ってほしいですって。インタビューとかでも答えてたんで、今日、皆さんがこうね一つになってるところは、全世界に見てもらえてると思うんで、本当に僕たちの誇りです。ありがとうございます」

熊「我々もう楽器置いてもうてるけどもうひと喋りくらいする?」

石「いやもう、だってさ、さっきのとこちょっと濃かったやん」

熊「あの、ゾーンがね。6曲ぐらいやるからね」

石「次の曲もすんげぇ濃いと思うんだよねぇ」

熊「休憩したい?んや?(笑)もうひと喋りくらいする?」

石「休憩したい。おニューのズボンがズレんのよねー」

熊「わかるー!衣装変えたてやとね、もう、これなんか、試着したときはカッコいいーと思ったけど今日着てみたら丈短い短い」

石「あははははは」

熊「ギターに被る被る。直す直す。出る出る」

廣「神技で直してたよね何回も(笑)」

熊「直す出る直す出るよ」

石「靴紐解ける解ける。こんなん海外で一回も解けへんかったのに。皆さんのせいですよ」

熊「盛り上がりすぎてね」

石「皆さんのおかげでした。ありがとうございますもう」

熊「やっぱ新しいこと、ニューなものってのはこういう風にね、わけわからんこと起きるんすよ」

石「まーでもあれですね、あのー、本当にーこう海外にこう行くとね、なんか扱いっていうんですか?待遇というんですかね。結構とんでもないんですよね」

熊「それはどっちの意味で?」

廣「とんでもないとは?」

石「あのーいい意味でね」

熊「いい意味で!」

石「あのー悪い意味やと思ってました?」

熊「まあまあまあまあまあまあ」

石「そらぁ文化の違いはありますけど、根本的なんはこうね、ある種こう、すげえヤツやなあ、すごい来てくれて…外タレって感じで扱ってもらえて」

熊「外タレですねぇ。今日我々は内タレですからね」

石「お前、日本のアーティストのこと内タレって呼んでんの?(笑)お前だけやで多分世界で(笑)。内タレはやっぱ大人しくしとかなあかんと思うけど、海外でこうね、日本の皆さんが応援してくれて、海外行けて、イキってたこう、僕らをですね、今日はちょっともうちょっとこう、熱く!お見せしたいなあと」

熊「ほうほうほう。イキってるのを熱く?」

石「イキってるっていうか、まるでそう、ちょっと」

熊「何が言いたいんやお前は」

石「まるで、ちょっと」

熊「日本語忘れてもうてるやん」

石「もう!はよギター持てや!!」

つい先程、もうちょっと休憩したいと言ったその口で、早く楽器持てって急かすいしかわたいゆーも、なかなかの手のひら返し。

熊「そうか曲振りやったんかいまの!全然分からへんかった」

石「なんでやねん!リハで何回もやったやんこれ(笑)」

熊「せやっけーもーねー」

石「楽しくなりすぎちゃう?」

熊「スケールが上がってしまいましてねぇ。30分くらい喋っててもいいんじゃないかって。それはダメですね。ちゃんと曲やりますから…で、何の話やった?いまの」

石「いやだから!海外こうさ、飛行機でひゅー!飛んで行くわけやんか!わわー行くやんか!ほんなら俺らはもう、まるで!ヒーローみたいやな!って俺は思うんやな!」

熊「そうヒーローみたいな扱いしてくれるんですよね。それがなんか不思議な感じ、するんですけど、そうやってこう、いま見てくれてる皆さんもそうだし、海外の皆さんもそうだし、なんかちょっとでも元気になってもらえるといいなと思って、このツアー、ひとつ目標にして回ってました。今日もそう思ってます。ちょっと元気になって、帰ってくれるといいな。あなたを元気にするヒーローでいたいと思ってます。聴いてください、Wake Up HxERO!」

紆余曲折のMCの末辿り着いた、愛と希望の特大スケールの曲、Wake Up HxERO!。サビで、数色の原色ライトがくるくると交差するライティングが、待ち侘びたヒーローの登場を演出した。


暗転のなか、エレキギターからアコースティックギターに持ち替えて、「せっかくなんでバラードも1曲。君のためのMusic」日本語でゆったりととった「いち、にー、さん、し」ってカウントが好きだなあ。

じっくりと聴きいる熊谷さんの歌唱パートと、揚々と腕を掲げてノリよく身体が動いちゃう石川さんのラップパート。大好きな曲の一つ。石川さんのラップパートに重ねる熊谷さんのコーラスも、好きだなあ。


熊「なんていうかあれですね。はじめてこう、見てもらってるみたい」

石「はじめて?あんた何年やってんのよ」

熊「今まで何度もワンマンライブやってきてるけど、今日はどれともちょっと感触が違うんですね」

石「わかるよそれ」

熊「わかる?」

石「みんなはどうなん?はじめましてな感じします?変な質問か(笑)ぶっちゃけ、はじめて我々のライブ来たよーって方、どれくらいいらっしゃるんでしょーか」

問いかけに挙手で主張するフロアに「待ってたよーあなたが来るの待ってたよーずっと待ってましたよー」ってひとりひとりに目線を合わせていく石川さんの優しい声音。

日本を飛び出して、長い間物理的に遠いところにいたが故にか、単純に初参戦が多いという理由だけではないような、普段の国内ワンマンツアーのアットホームな雰囲気とは少し違った、緊張感を感じているのかなあと思った。

「これで大丈夫ですか?」って確認作業をしているような状況を「一回距離を置いてリセットされる男女の関係」と例えた熊谷さん。相手の顔色を窺うような緊張感は、ある種の遠慮のような気もして寂しさもあるけれど、距離を置いて互いを見つめ直した末の結論が、関係を継続させたい、好転させたい、っていう想いに着地するから生じるシリアスな緊張感なのだとすると、なんて言い得て妙なんだろうと思う。

 

「じゃあせっかくなんで、オリンピックで流れたあの曲やります。拳上げれますかって煽りを毎回やるんですけど、それを英語で、Hey guys, can you raise your fist? OK,beautiful!」熊谷さんに先導されて、フロアを埋める固く握った拳ではじまる、PHOENIX

平常通りに、掌底で表現する「敵の鉄壁」と、「砕いて」で、やんわりバレーのアタックの仕草で右手を打ち下ろす、初めて見るアクション、堪らなかった。嗚呼そう!そうなの!バレーボールにおける鉄壁を砕く動作は、正しくそれなの!


そのままノンストップで突入する石川さんの煽り文句「おいおいおい、まだまだまだイケますよね。音の波にしっかり乗っかってこうぜ、だいじょーーぶ!We are Melodic Surfers!!!」

掲げた掌の緩やかなスイングでフロアに作るでっかいでっかい大海原。おお、すげえって表情で感心してる熊谷さんが愛らしくて、歌唱パートに向けての真剣な顔への切り替わりは堪らなく素敵で。


「僕たちを海を越え、アメリカに、アルゼンチンにサウジアラビアに、連れて行ってくれた鳥の歌があります!僕らと一緒に飛び上がってくれますか、渋谷ーー! Can you? Can you fly high with me Shibuya? 聴いてください、フライハイー!」

「心の中でもいいから、大声で歌ってね」酷く優しい声音で熊谷さんがそう言ってくれるものだから、声を出すことに、それをできる環境に不安を抱いてしまう自分のことが、少しだけ肯定された気がした。


Thank you for your time today and japanese "SAYONARA" means good-bye.

SAYONARA Tokyo Shibuya.

SAYONARA Good Morning New WORLD TOUR twenty twenty-two.

SAYONARA.

流れる別れのアナウンス。もしかしたらこのさよならが、今生の別になるかもしれない寂しさをどうしても拭いきれずに、熊谷さんの言葉を聞いた。「今日は本当に来てくれてありがとうございました。なんだろう…みんなの前でフライハイを歌うとき、なんかすごい特別な気持ちになりました。今日は本当に来てくれて嬉しかったです。ありがとう。バーンアウトシンドロームズでした。ラスト、Hikousen」

 

 

鳴り止まぬフロアのアンコールを望む手拍子のなか、流れ出す邪教・拝金教、とともに現れた廣瀬さんは当然のように新グッズを手に持っていて、起こる笑い混じりの歓声。もはやこの曲は、物販紹介の定番曲。


「はい、どうも!皆さまアンコールありがとうございまーす!いやーこのノリ久しぶりだ。なんかちょー嬉しい!これが日本だよ!!」って、テンション高くキラキラの笑顔でこれが日本だよって前のめりな廣瀬さんは、まごうことなき天使だった。

「まあ、この邪教・拝金教が流れたということはですね、日本でしかできない恒例のグッズ紹介のお時間でございます!超これカッコいいでしょ?カッコいいロゴデザインで、Tシャツ、そしてトートバッグを作ってしまいましたー!」

トートバッグから出てきたのはTOKYOツアーのグッズたち。それを、「残ってるとかじゃないですよ?残ってるとかじゃない…」って苦しい言い訳をする廣瀬さん。可愛いからなんだって許容しちゃう。

「温かいなあ、本当に。でも、ひとりじゃアンコールできないので…オープニングはちょっと歌ってたりしましたけどそれは忘れていただいて…(笑)。石川くんから呼びたいと思います。僕が石川くーんって呼んだらみんなで…あ、声出せないのか…心の中で皆さん、僕がその分叫びます!」

廣瀬さんの声に導かれて、登場したいしかわたいゆー。片手挙げ瞑想するように瞼を閉じた状態で歩みを進める。流れる、世界は愛でできている。

石「若いな。人の心を動かすのは金やないで。愛やで。そして、思い出です。ということで私は皆さんにプレゼント、持ってきましたー!」

石川さんが提示したのは、このツアー各地で撮った集合写真が貼られた額縁。

石「いやー好感度爆上がりですね、対比的にね。でもどうしよう、俺はみんなを愛しもうてるから、決められへん…これは愛の伝道師に決めてもらいましょう。愛の伝道師こと熊谷和海です」

両手掲げ、堂々たる登場で「らびゅー♡らびゅー♡んーまっ♡らびゅー♡」と愛を振り撒く熊谷和海、なんかもう、愉快そうで何よりです。

熊「何?これ、誰にあげるか迷ってんのか。愛故に、迷ってんのか。若いな、お前らは若い。まだまだ青い。大事なのは金でもなければ愛でもない。運や」

石「あらまあ!」

熊「チャンスをモノにする運を持ってる奴が世界を獲るんや。お前らは若い」

石「先生!知りませんでした!」

熊「じゃあ、レイズ ユア フィストで」

石「そのための煽り(笑)」

すっごいドヤ顔で拳掲げる熊谷さん、愛おしい。ちゃんと見てるからズルはダメよって「不正はめっよ!」って、石川さん、言葉のチョイス、ズルい。

熊「互いが互いを見張るバトルロワイヤルのはじまりや」

そうしてはじまった血で血を洗うじゃんけんバトル。すごい悪そうないやーな顔しながら「次グー出すから」って心理戦を仕掛け、しれっとチョキを出し「さよならー」と純粋なファンを一掃する熊谷和海、性格がいい。

フロアの助けを借りて、逆ダイブが成り立ち、じゃんけん大会の賞品は無事強運の勝者に渡りました。

石「昔は檸檬投げとったで」

熊「いらねー(笑)」

石「知ってるひといます?懐かしっ」


熊「楽しんでいただけましたでしょうか、本日」

石「ちょっとね、寂しい思いさせ過ぎましたし、僕もちょっとし過ぎたんで、これから国内もライブ、増やしていきます!」

熊「まあ…秘書が勝手に言ったことなんで」

石「ふふふ、俺もさ、言いながらなんか決まってたっけ?って。でも言ってもうたら、戻られへんやろ?これが覚悟や!」

熊「石川くんソロってことで」

石「まじで?来る?俺行かんけど来る?絶対嘘やん」

いしかわたいゆー来なかったらそりゃあ行かない。

熊「んーーー最後やしどーしよ、このままハッピーにいくか真面目な話するかすげー迷ってる」

石「え?!真面目な話今日してへんで、一回も」

熊「ちょっとしたやろ」

石「いやいやいやあかんあかん!ふざけが勝ってるわ今日」

熊「じゃあ真面目な話しまーす」

石「してくださいお願いします」

熊「Good Morning [New] WORLD TOURなんですけど、我々が海外行けるようになったのってぶっちゃけフライハイなんですよね。iTunesの海外での再生数がフライハイが十何位とかで」

石「何がやばいってあれPV海外で観れへんからね」

熊「その話するからちょっと袖に行っといてくれ」

石「まじで?!思考回路が一緒すぎて…」

熊「石川くんも言ったんですけど実は海外で見れないんですよ」

FLY HIGH!!のリリースが2016年。当時どのレーベルにも海外で曲を聴かせるという発想がなかったが故の仕様。でも、6年後に海外でたくさんのひとに聴いてもらえて支持されているこの状況を、熊谷さんは「嬉しい、けど悔しい」と言葉にした。「そんなにいま評価されるんやったら、デビューの時に評価してくれやっていうのが、俗物である私の正直な気持ちなんですよ。6年前の曲がそのまま世界に通用するんだったら、この試行錯誤してきたいままではなんやったんやと、特に30というこの節目に、思っちゃうわけなんですよ」この6年間っていうのは何だったのか、それを考えながら回ったワールドツアーだったと語る。例えばもし、FLY HIGH!!のときにMVが1億回再生されていたら、これでいいんだって同じような曲をくり返していたかもしれない。三味線入れたり尺八入れたりする発想に至らなかったかもしれない。「フライハイのような曲がたくさんあって、それではたして世界と戦えていたかというと、そうでもないような気がするんですよね」三味線や尺八を取り入れたいかにも日本というような曲があり、FLY HIGH!!のようなアニソン王道ロックがあり、Oceanのような曲があり、この多彩さが、世界と戦えた要因なのかもしれない、と可能性の話を紡ぐ熊谷さん。「どっちがよかったっていうのは私には今はわからないですけど、唯一つの今なんだなあと」「幾億幾兆の分岐が紡ぎ出す唯一つの今っていうのが、このステージの上にはあって」、そんな、変えようのない今に、自分なりの意味を見出そうと言葉を紡いでいる気がした。熊谷和海の、この、どんな状況だろうと一度は受容して、己の力に変えようと咀嚼していく姿勢が、とても高尚だなと思う。


「ライブ初披露の曲を。海外ではアンコールって、本編と同じ曲をやるそうです。せっかくなんで今日は、それを踏襲しつつ、日本風にアレンジしてやりたいと思います」そう曲振りをしながら構えているのはアコースティックギター。スクリーンにMVを投影しながら、Good Morning [New] World!。この日一際清々しく、カッコよく映った熊谷和海がそこにはいた。

 

終演直後に感じた、カッコいい…しか言葉にならない感覚をどう残したらいいんだろうと、何がそんなにこの日が特別だったのかを、ぼんやりと考えていたんだけれど、少しだけしっくりくる気がする表現を見つけた。きっとこの日は、MC中はともかくとして、終始臨戦態勢、戦闘モード全開!みたいな状態に見えたんだ。8月のCrunchyroll EXPOからはじまって、世界各国で戦ってきたその勢いのままの姿を、あのステージで見せてくれたのかなと思う。それはきっと、ひとひとりで受け止め切るにはとても大きくて、勢いのある圧力だった。そうやってバキバキにカッコいい状態で、世界と戦って回ってきたんだなあ。世界にBURNOUT SYNDROMESを見せつけてきたんだなあと思った。彼らが世界各国を巡ってきたこの数ヶ月を、まるでこの数時間で追体験させてもらえたような心地がした。そして、まだまだ世界に、彼らは求められているんだとも思う。

同時に、6年越しに世界に見つけられたという現状に喜びだけじゃなく悔しさも感じていると語ったその、もしもの世界に引きずられそうになる自分とも戦ってきた姿だったのではとも思った。


アンコールのGood Morning [New] World!での熊谷さんが、一際清々しくカッコよく映ったのはきっと、熊谷さん自身が、このツアーファイナルで、言葉にすることで、ひとつ答えを選び、自分のなかで昇華できたからなんじゃないかって、私は思っている。


「我々の今を、そして未来を、これからも見守ってください。また会いましょう!この広い世界のどこかで」

いつだってどんな姿だって、願うことは一つだ。BURNOUT SYNDROMESが歩んでいく道のりを、この先もどうか見守っていけますように。

 

01.Good Morning World!
02.ヒカリアレ
03.エレベーターガール
MC
04.BLIZZARD
05.銀世界
06.花一匁
07.若草山スターマイン
08.国士無双役満少女
MC
09.Wake Up H×EROS
10.君のためのMusic
MC
11.PHOENIX
12.Melodic Surfers
13.FLY HIGH!!
14.Hikousen

en.Good Morning [New] World!