「消えないコトバ 」-あなたがここにいたことの証明-

スロウハイツと太陽

1st mini albam「視えないカタチ」

リリースツアー “目に映るものの全て”

ファイナルワンマン

「消えないコトバ 」

-あなたがここにいたことの証明-

2018.10.20(土) @新栄アポロベイス

f:id:nonN0No:20200201204657j:image

開場時間18時ちょうど、いちばん通い慣れたライブハウスの真っ赤な看板の下を通って、駆け出したい気持ちで階段降りて、フロアに出た。ステージに掲げられているスロウハイツと太陽って書かれたバックドロップ。あることは予想してたけど、実際に目の当たりにする感慨と、不思議な現実味のなさにそわそわしながら、体感の長過ぎる30分間を過ごした。開演時間を少し過ぎて、BGMの音量が上がって、嗚呼、遂に、って息を飲む。待ち望んでいた90分間がはじまる。スロウハイツと太陽、はじめてのワンマンライブ。反射的に脳内再生されたのは、タイトルさえ知らないけどいつもの彼らのSE。それなのに、この日のアポロベイスに流れたのは別のものだった。マタ来ル夜ヲ待ツに収録されているインストの曲、reverse。スロウハイツと太陽の曲。不意打ちのいつもと違う、その特別感にどうしようもなく高揚した。

 

ステージの上にメンバーが揃って、フウマさんが喋って、何だかその時間の流れがとても緩やかな気がして、逸る気持ちを抱えながら音の鳴る瞬間をじっと待ってた。待ち望んだ瞬間のはじまりを告げたのは、完全にこの曲順が定位置になった、光の中で。最近はイヤホンで聴くたびに、ライブがはじまる高鳴りを思い出してそわっとします。

 

続けて畳み掛けるようにリフレイン。飛ばしまくっててとてもいい。彼らがどんな風にライブを運びたいのかとか、楽曲をどう使ってるかとか、考えはじめてしまって、セトリ組んでるその場面さえも見たくなってしまう。

 

休む暇なんて与えないとばかりに照明がばちばちの興奮色に変わって、次にはじまったのは、影踏み。赤と青の好戦的なライティングがとても映えてた、最高にカッコいい私の推し曲。
2曲目にこなかったから、今日はやらない可能性が過ぎっていたけど、そんなことなかった。はじまった瞬間にやけるのは必然で、この流れは非常に滾る。カッコよさに目が回る。
長めの前髪から覗くフウマさんの眼光が鋭くて、「無い物ねだりをしたんです」って2番の台詞口調の冷たさが危うくて、楓記さんが近くて近くて、どんなに鋭利なフレーズもどこか優しさを感じさせるギターの音にも耳を傾けながら、その向こうに視える姿と音を一生懸命追ってて、浅井さんと視線交わす瀧田さんが笑ってて、その場面、その瞬間の表情がどうしようもなく好き。

 

マイクの前に居直ってすーっとひと呼吸置いたフウマさん、如何にもって神妙な面持ちで「スロウハイツと太陽 1st mini album『視えないカタチ』ファイナル 消えないコトバ」ってひと息。わざとたどたどしい早口のその言い方が愛おしくっておかしくって、言い切る前にむにゃむにゃってなって、「きのう布団のなかで練習したのにな。おかげで寝るん遅くなった」って言うフウマさんと、笑っているメンバー。ゆるっとした雰囲気には序盤3曲の鋭さの面影はなくて、不思議な感じ。


「僕たちに興味ない人はいますぐ帰ってくださいね。今日僕らしか出てこないんで」って、そんな冗談に頰が緩んで仕方がない。いっぱいのひとで埋まったアポロベイス。今日この場所にスロウハイツと太陽以外を観に来たひとなんてひとりもいませんから。最初から最後までスロウハイツと太陽。誰も彼もが、あなたたちだけを、観に来たんです。

 

東京ノスタルジア、いつぶりに聴いたんだろうなあ、って懐かしいと思うのはツアーが濃厚過ぎたからだと思う。autumn、空蟬って続いて、この季節が巻き戻る感じにふとフロアライブのときを思い出して、春足くるかなーって考えちゃったけど、次に刻まれたドラムビートは別の曲のもの。ライカって分かった瞬間。

一緒になって雄叫び上げてたら、なんだか無性に泣きたくなった。こんなにも寂しくて愛おしくて、必死に声を上げているのに、宇宙からのこの声は遠く遠く離れた青い惑星には届かないんだよなあって苦しくなってしまった。目の前にいる彼らになら、この距離なら届くだろうか。

 

「スロウハイツのワンマンはじめて、ってひといますか」って問われてくすくす笑いながら嬉々として手を挙げた。「あ、僕らもです」って、知ってますよ。

 

「消えないコトバっていう、とても怖い言葉を使ったのは」って話しはじめた、その表現が心にずしっときた。消えないコトバが、決していい意味なんかじゃなくて、どんなに消えてほしくても消えてなんてくれない心の傷だってことはわかっていて、でもその意味を変えるために今日があるんだって、今日のコトバがこの先ずっと御守りみたいに、この場にいるあなたを守るんだって、そういう願いと決意の込められた日。

 

いまにも泣き出しそうなフウマさんを観て苦しいとか悲しいとか、それも思ったけど、この日の幸せを噛み締めている表情にも見えて、本当に今日があってよかったと、胸が締め付けられた。この光景を目に焼き付けていてほしい。そして願わくば、それがあなたの救いにもなりますように。

 

「救いたいと思うようになるまでに時間がかかったし、きっとみんなも同じようにここに来るまでに時間がかかったと思う」

 

本当につらくなってしまったあなたへ。もう何も言うことはない。永遠にずっと変わらない、出逢いの曲。きっかけの曲。私が大好きなスロウハイツと太陽が詰まってる。

 

それでも生きていくあなたへ。これは、本当につらくなってしまったあなたへの続きの物語。無色の仄かなライトに照らされたステージにじんわり茜色が混ざっていく、夕暮れ。

 

フウマさんがしゃらーんって鳴らして、左で俯く気配を感じた刹那、「最低 最低」って唄声が吐き出されて、全てに合点がいった感じ。にやにやしながらステージを眺めてたら、浅井さんのカッコいいスラップベースが飛び込んでくるイントロ。サイハテの目が醒めるような瞬間。好きな瞬間。さよなら。ごめんね。じゃあね。ばいばい。でも、忘れないようにちゃんと栞を挟んだまま、いつだってこの日の幸せに戻ってこれますように。

 

「本当は今日、誰かが俺のことを救ってくれるんじゃないかって思ってた。あの頃から俺は何も変わらんなあって」「いろいろあったけど、俺はこの人生でよかった」って言葉のあと、「ねえ お母さん」って呼びかけるフウマさんの唄声が優しくて温かくて綺麗な、1960。「どうか あなたが 幸せでありますように」って願ったのは私も同じ。

 

daylightが終わって、フウマさんがしゃーんって鳴らした音を聴いた瞬間に、嗚呼、終わっちゃうんだなあってなんとなく思って、名残惜しさにきゅーってなっていたら「終わっちゃうね」ってフウマさんの声になって返ってきて、さらに胸を締め付けられた。本当に最後の曲なんだなあ。
そうしてはじまった、ラストシーン。フウマさんの声が「あなたが好きな人」「あなたがいたい場所」って改めて言葉にしている。あなたを想う唄。私が私であるための、唄。この唄が少しだけ特別なのは、迷ってるときに何度も道しるべになってくれたからです。私は私の好きなものを信じていたい。大切にしていたい。それだけ。

 


アンコールで新グッズのロンTに着替えたフウマさんと浅井さん。黒と白。かわいい。
「アンコールのMCは山田です」ってフウマさんが振って、楓記さんがとても真面目に感謝と感慨を言葉にした。6年間ずっと、ふたりはスロウハイツと太陽を共有してきたんだよなあって。浅井さんは4年、瀧田さんは2か月()。歩んできた時間のひとつの区切り。2年に満たない私がこんなにも感慨深いんだから、きっともっとずっと特別だ。

 

「語彙力はないけど、やる曲はもう少しあるので」「スロウハイツと太陽で、1番激しい曲です」って紹介されて、フウマさんが一言「夢喰い」って言った瞬間の左隣からの圧。それに歓喜でお返ししながら、カッコよすぎるイントロに笑いが止まらなくて、急速に体温が上がって耳が熱かった。歌い出し前のエグめの動きしたドラムすごく好き。カッコよさに笑い出してしまうのって、もう無敵ってことだと思うんです。そのあとも継続して笑っちゃったのは、傍目にわかりすぎるくらいスティックの動きが迷子になってる姿を捉えてしまったからで、もー本当に、好きです。

 

そうしたら次は、本当に最後の曲。選曲は言うまでもなくて、向かい合うメンバーに「行きますか」って瀧田さんが目で合図してる。フウマさんがくるんってフロアに向き直って、瀧田さんに手でスッて合図して、シャンシャンシャンってはじまる夜明け。すごくカッコよかった。来るってわかってるのに意表突かれてるみたいで不思議な感覚。

 

間奏。たくさんの腕が上がって、観たかった景色がそこに広がっている気配を背中だけで感じて、視線はライブハウスの奥まで見渡しているフウマさんに釘付けのまま。嘘、本当はちょっとだけ振り返った。想像より多かったなんて言ったら失礼かな。そんなフロアを観て、無言で曲に戻るフウマさんのいるステージに向かって拳を掲げてた。あなたが立っているいまこの場所この瞬間だけで、僕らは息をするんだ。

 

 

最後写真撮ってもいいですかって、集合写真。あがった写真の誰も彼もが笑ってて、フウマさんも楓記さんも瀧田さんも、浅井さんも、本当にいい日だったんだなあって。その体感と事実が揺るがされることは、この先もずっとない。

 

01.光の中で
02.リフレイン
03.影踏み
04.東京ノスタルジア
05.autumn
06.空蟬
07.ライカ
08.本当につらくなってしまったあなたへ
09.O2.
10.それでも生きていくあなたへ
11.サイハテ
12.オレンジ
13.1960
14.daylight
15.ラストシーン

en1.夢喰い
en2.夜明け

ワンマン前日はずっと、今日明日明後日の3日間を無限にループしたいって思ってたのに、不思議なことにいまは全く、戻りたいとももう1回とも思わない。たった1度きりの、最初で、最後の日。大切な日を、ただただ幸せな日にしてくれてありがとう。いまはただあの空間の幸せを必死に心に刻み込もうとしている。
これからも、いつか願った、ずっとこの先も見届けたい、って想いは同じままです。どこにも嘘なんてない。

 

私は、スロウハイツと太陽が大好きで、特別に大切です。

f:id:nonN0No:20200201204710j:image