Welcome to the Musical 名古屋編

ココロオークション

TOUR 2018

Welcome to the Musical

2018.06.22(金) @ell.FITS ALL

 

アウトストアでも対バンでもMusicalの世界を覗き見てその素敵さを知ったからこその、一層の期待感を抱え、足を踏み入れた開演時刻20分前のell.FITS ALL。ワンマンライブでこそひたひたに浸れる、その特別感を存分に思い描いて、ステージの天井に張り巡らされている色とりどりのフラッグを眺めていた。場内に流れているのは、これからはじまる物語の世界にはやくも引き込もうとするようなBGM。開演をいまかいまかと待ち望んでいるこの時間でさえ、Musicalの世界観の一部。

 

開演時刻を少し過ぎ、流れていたBGMが止まった。次の瞬間、Welcome to the Musicalの開演を告げるようにブザー音が鳴り響いて、感嘆の声をあげてしまいそうになった。ステージに幕なんてなかったけれど、ゆっくり上がっていく緞帳が見えた気がした。その向こうにはMusicalの世界が広がってる。私はこれからその世界に全身浸かるんだっていう高揚感と、嗚呼きっとこれ、初日のホールだともっと雰囲気あっただろうなあっていう想像をしながら、流れるEntr'acteを聴いていた。

 

猫背気味なテンメイさん、ワイルドにフラッグを跳ね除けて登場する井川さん、さらっと登壇する大野さんと、最後に粟子さん。ステージの上に4人揃ったココロオークション。あんまり感傷的になってる自覚はなかったけど、一度でも3人の姿を観てしまっているから、この景色は当たり前じゃないんだなよなあって強く思って、急に涙腺にきた。

 

照明がいっぱいで綺麗なell.FITS ALLというライブハウスとMusicalの組み合わせの相乗効果。今日この景色は「僕らしか知らない」って思ったら、いつも以上に趣深く感じた、景色の花束。

 

「ふたりの主人公の物語を」ってはじまった、少年と夢、の物語。イントロの力強い音色は、一歩一歩大地を踏みしめる足音。テンメイさんがギターに翳してた魔法のブロックの存在が気になる。あれもエフェクターなんだろうか。

 

序盤も序盤で「前回名古屋は3人で…」って話しはじめる粟子さんに「とりあえず、ちゃんとライブしよか。まだ俺には触れないでください」って制止する大野さんは、ドライっていうより、何の先入観もなしに自分たちの音楽にただただ浸ってほしいって思っているんだと思う。

 

ドンドンって柔らかに広がるような音圧を感じるドラムからはじまる、砂時計。好き。少年と夢も、Musicalの他のどの曲も、イントロでぐっと曲の世界に惹き寄せられる感じがとても好きだ。

 

ワールドは、音を景色に、をコンセプトに掲げてるMusicalの曲たちにとても馴染んでいる。大陸を渡って旅する動物たちの姿が見える曲。こういうところにも、ココロオークションの変わらないものが見える気がして愛おしい。

 

妖精のピアス。イントロに入るまでのセッション、カッコよすぎて大好き。この曲の主人公が内側に秘めている想いを表現したみたいな音色。情熱的な曲。ヘッドフォントリガーとかフライサイトみたいな手を掲げたい類の盛り上がるとはまた違った、本能のまま奔放に身体揺らして踊りたい曲。推し曲。

 

「音を景色にMusicalの世界を届けてきましたが、ここからはもっと狭い世界にみんなを連れて行きたいと思います。僕とあなたとの世界」ってアコギに持ち替えた粟子さんの言葉ではじまった、かいじゅうがうまれた日。

 

開演前から気になってたエレキマンドリンの登場は、コインランドリー、のときでした。粟子さんの歌声とアコギの音を彩るトレモロみたいなカラカラした音色が素敵だった。俯いてじっと聴く。乾燥機のなかでぐるぐる回ってるシャツが見える。シャツも心も洗われて、真っ白綺麗になった。

 

メンバーのMCタイム。「ギターのテンメイです」って粟子さんに紹介されてからの「どーもテンメイです!Welcome to the Musicalツアーへようこそー」って突然の大音量。劇場の支配人みたいな声の張り方だった。
今日は照明がたくさんあって綺麗だからと「僕も照明やろうかな、じゃあ青!」でブルーが点灯。「赤」「黄」に合わせて変わるステージライト。「なんかカッコいいやつ!」の無茶振りには黄色のまま、「じゃあ全部!」で眩い光で埋まったステージにフロアからは感嘆の声。ステージからは「あっつ」って大野さんの声。

恒例のプレゼントタイムには、自分のブルーのピックをメンバーサイン入りツアーポーチに入れるテンメイさん。曲中に落としてしまったやつではなく、直前に使ってたやつを入れる優しさ。粟子さんもピック、大野さんは大須商店街の昭和商店で買ったリンゴスターの缶バッジ(おそらく非公式:大野さん談)、井川さんは開封済みサイン入り龍角散飴(残3粒)。そしてそんなプレゼントをかけたじゃんけん大会。

 

井川さんのMCコーナーは、これまた恒例のスティックプレゼント大会。そして突然のひとり芝居。「でも、バンドでいちばん人気ないさっちゃんのスティック欲しいひとなんているのかな」ってこの時点でフロアからは欲しい!って声が挙がっていたけれど、「まあまあ、段取りがあるからまだ待って」と井川さんに制止される。
「さっちゃんのスティック欲しいか聞いてみようよ」
「みんな、さっちゃんのスティック欲しい?」
\欲しーーー!/
「くれてやるよ!」
って、言葉はこれだったか不確かだけど、「なんでそんなに上からなん」ってメンバーにツッコまれてた。
井川さんのドラムビートに合わせて「さっちゃんさっちゃんスティックほしい」のコールアンドレスポンス。「お前らさっちゃんのスティック欲しいんやろ!もっと声出せー!」って煽られた。これはいい、楽しいキャラ崩壊。狭間に「大野さん大野さんおかえりなさい」も。

 

ココロオークションはいま変わろうとしています。Musicalはいままでのココロオークションの集大成としてではなく、これからのココロオークションの道しるべになるようなアルバムです」このツアーのために、自分たちがどうやってMusicalの曲と向き合ってきたか、ライブでどうやってお客さんに届けるのかをひたすら考えていたこと、応援してくれることへの感謝、いろんなことを丁寧に切実に言葉にした大野さん。最後には「欲を言って申し訳ないですけど、これからも一生ココロオークションのことをよろしくお願いします」って、恐縮してしまうくらい実直。そういう音楽との向き合い方が大好きだもん、例えよろしくされなくたって勝手に着いて行くよ。大野さんがこのツアーをどれだけ大切にしてたか伝わってきた。本当におかえりなさい。

 

粟「前回の名古屋、サカスプでは3人のCCRでやったんやけど、そのときのみんなの声援がすごくて、嬉しくて『愛してる』って言ったんですよね」
大「[ALEXANDROS]みたいやん」
粟「それくらいカッコよかったらいいんやけど、俺でごめん」

これにはもう全力で首横に振った。はじめて聴いた粟子さんの愛してるは、あまりに自然で柔らかくて、言及することさえ忘れるくらい純真純愛って感じだったなあって懐古。黄色い声を上げるような熱狂熱愛とは趣が違うだけです。ごちです。

「俺はアーティストだから、言葉よりも歌にしたほうが伝わるかなと思って、今日はじめて、ここで即興で歌おうと思います」ってはじまった名古屋愛してるぜな即興ソング。ほかにも、「いつか、つけてみそかけてみそのCMソング歌いたい」とか「矢場とん味噌煮込みうどん、あんかけパスタ」ってご当地グルメ入れたりしてました。

 

井川さんのドラムソロコーナー。シンバルの規則的なリズムからはじまって、んん渋いって感じ。ただ刻んでるはずのリズムがどうしてこんなに興奮するんだろうって思いながら、最高だーカッコいいーって目が離せない。「これがドラムソロや!どや!」って、キャラ崩壊再び。そもそもキャラってなんだっけ。

 

ここから怒涛の終盤戦。ヘッドフォントリガー。おもむろに上手の大野さんに近寄っていくテンメイさん。そんなテンメイさんにちょっかいかける大野さん。前屈みになってギターこしょこしょして代わりに弾いてた。なにそれ、戯れてる、かわいい。

 

ロックチューン連続のあとの「最後の曲です」の衝撃。嘘でしょ、って思った。体感が早すぎた。あっという間すぎた。もっとあの音楽に浸っていたかった、っていう名残惜しさ。
「Musicalを演奏するにあたって、いままでの俺たちの演奏では曲が喜んでくれなくなって、悩んでるとき食べたドーナツがとても美味しかったんです」って粟子さんの言葉に、ドーナツ?ってなるフロア。「ドーナツ」って復唱確認してくれる感じ、ほんわかしている。
「素朴な味のドーナツが甘くて、美味しくて、俺、大事なこと忘れてたなあって気づかせてくれた。心動かすこと、そのために歌ってるんやなって。どうしてこんなに残酷な世界なんだろうって思うこともあるけど、見方を変えれば、こんなにも世界は美しいんだよって、そのことにみんなに、君に、気づいてほしくて歌を歌ってる」って、今日もわたしは。

 

アンコール。キャップにトートにTシャツ、首にはタオルをかけて、グッズフル装備で登場したテンメイさんがセンターマイクに立ってる。別名、「バンドに魂を売った男」「グッズの化身」。

テンメイさんがグッズ紹介よりも前に「気づいたことがあるんですけど、(ジャンケン勝ったひと)双子ですよね?」って、ちょっとざわついてるフロアから「違います」って答えが返ってきた瞬間「違うって」「はい、ブー」「ダッサ」メンバーからテンポのいいツッコみを受けてておかしかった。息ぴったり。「兄弟で喧嘩せず分けてな!って言おうと思ったんですけど」って喋り出したテンさんを他所に「じゃあ、グッズ紹介しますか」って切り替える、サクサク進めたい大野さん。

 

「今日ステージで言ったこと、全部本当だからね」って、最後の1曲、Orange。サカスプのときも最後の曲だった。今日は4人でバンド編成。4人揃ったアウトロの歌声がとても綺麗だなあって思った。

 

01.景色の花束
少年と夢
星座線
ワールド
ドライブ
砂時計
蝉時雨
妖精のピアス
Rainbow
Interlude
かいじゅうがうまれた日
コインランドリー
13.ヘッドフォントリガー
14.ハローグッバイ
15.ここに在る
16.フライサイト
17.今日もわたしは

en.Orange

※抜けはないと思うけど、順不同