TOKYO 宮城公演•新潟公演

BURNOUT SYNDROMES

全国ワンマンツアー2022 「TOKYO」

2022.01.14(金) @仙台Rensa

2022.01.15(土) @studio NEXS

 

スクランブル交差点の信号機、点滅音。一緒にスクリーンに映し出されたのは2色の縦型踏切信号機。TOKYOのジャケ写をモチーフにした青色の路線図が進んでいく道のりの傍に、世界一美しい世界一美しい世界、文學少女とBURNOUT SYNDROMESが出してきたアルバムのジャケ写が並んでいる。それらを次々に通り過ぎ、進んでいく路線図。檸檬、孔雀、明星と続いていくBURNOUT SYNDROMESのアルバムの軌跡を辿る映像。それは殆どイコールでツアーの軌跡でもあって、滞りなく進んでいた歩みが、BURNOUT SYNDROMEZを過ぎたところで止まった。マスクのイラストと赤信号の点灯。COVID-19との遭遇。想定していた未来へ進めなくなった線路。それでも止まることはできないと、そこから分岐した新たな道は、朱色の線路。今度は、この2年間の配信ライブをひとつひとつ辿って、そして、辿り着いた先、ようやくの青信号。BURNOUT SYNDROMES 全国ワンマンツアー2022「TOKYO」、2年越しにようやく。当時予定していたものとはきっと形を変え、だとしても本当にようやく、画面越しじゃなく、目の前に大好きなBURNOUT SYNDROMESがこれから、現れる。


映像の終了と共に、勢いよく飛び出してきたメンバーを見ても、すぐには実感できなかったなあ。それくらい本当に久しぶりで、夢見心地だった。もっと感極まったり、嗚咽まみれで、泣き通しなのかなって思ってたんだ。でも実際は、どんな感情より何より、楽しさが圧倒的だった。


熊谷さんの衣装、襟元ふりふりの白カッター、なんて可愛いの。その上に網々ノースリーブの黒ニットを重ねた攻めファッション。赤色の細身のパンツに身を包んでいるのも尊いですが、何より、眼鏡なんですけど…眼鏡姿…ねえ、尊い

大裕さんの金髪は、照明を浴びてキラキラといろんな色を吸収してる。複数色で魅了する。斜めに区切られたツートン柄のシャツ。青選んでるところ、罪深いと思う。髪色とよくお似合い。

廣瀬さんは紫基調の攻めた大柄のシャツだったなあ。とても目を惹く。素敵。


待ち望んだこの日の幕開けの曲、Good Morning World!。今ようやく、長かった夜が明けるみたいな、ぐわああああっと込み上げてくる選曲。

続いた、ロザリオをはずして。有観客初披露。よく考えたら、そんな曲ばかりだね。

想像していた、ライブでこう聴きたい!っていう欲望がやっと、現実になる嬉しさ。ギターソロで躍り出る熊谷さんの距離が物理的にちゃんと近くなる高鳴り。ドラムの音に合わせて動いちゃう拳が、名前も知らない誰かのそれと同じだったときの不思議な心地よさ。そういう体験をずっとずっとずっと渇望してた。他でもない、BURNOUT SYNDROMESで。大好きなBURNOUT SYNDROMESのライブで、したかった。ずっと。


「TOKYOはコロナ禍真っ最中にできた曲たちだから、だからこそ、ライブを求めてる曲が多い。ライブ映えする曲が多い」って初日のどこかで熊谷さんが言っていた。本当にその通りだと思うし、それを嬉しく思う。


曲終わり、スクリーンの映像は、再びスクランブル交差点。そして雑踏の真ん中に踏切信号機。点滅の電子音。それが徐々に、聞き覚えのあるフレーズに変化して、高音低音を行き来する特徴的なギターのリフになった。エレベーターガール。もう何度か言っている気がしてる、エレベーターガールのベースとても好き。


「あなたのアクションが必要です!」って大裕さんが持ち場のお立ち台に乗り出して、クラップのレクチャーをしてくれるはじまり。シークエンスへの合いの手のかたちで、クラップを挟んで一緒に楽しめるライブアレンジになった、Love is Action!。ライブだけの特別が、ほらこんなにも楽しい。

熊ちゃんが「お上手ー」みたいに褒めてくれたの舞い上がる。おじょうず、って。おじょうず、って。はあ、なんて心擽ぐるいい響き。

「とか」「とか」ってシークエンスとの上手な掛け合いで歌う熊谷さんの「と」の無声の破裂音、マイクに乗る吐息。これクセになるやつだなあって悶えるポイントでした。

「その唇でCrank-up鳴らして」の熊ちゃん。人差し指で投げキッスして掲げる所作、罪深い。Love is Action!総じて罪深い。この曲を熊谷さんの歌声で聴けることがもう罪深いのに!


そこから、熊谷さんがギターで高らかに紡ぐ結婚行進曲。愛で繋がる選曲、世界は愛で満ちている。大裕さんはキーボード。廣瀬さんはパッドで演奏。

熊谷さんが緩慢な動作で眼鏡をくいって上げる所作が麗しすぎると思います。ありがとう眼鏡。サビで緩やかに左右に振る腕は、程よく筋肉質。でもどうしたって華奢なの、とても美しいし、細い指先までぎゅっと伸びた掌は繊細でこれもまた美しい。照明を浴びてより色素が薄く、ひんやりとした陶器のような肌。とにかく美しいのでただただ美しい美しいと思ってぽかーんと眺めちゃう。恍惚感。熊ちゃんのおててがとても好きです。


そんな愛で満ちた曲たちの、溢れ出る愛 愛 愛。そして曲が終わり、不自然な間で再び飛び込む「愛」のSE。途切れない、愛、愛。make love make、love、make、make「money」不意に飛び込んできたお金の気配が、次の曲を知らせると同時に、「money money」って壊れたラジオみたいに紡がれて、容赦なく愛を侵食していく金という存在がとても怖かった。ちょっと待ってやめて!やめて!さっきまでの愛に満ち溢れた穏やかな祝福ムードを返して…っていう気持ちで混乱しているところに、「唱え奉る!」って高らかな熊谷さんの宣言。一変した空気に震えた。センターに君臨する熊谷さんはどう考えても教祖さま。彼が教祖さまじゃなかったら、一体誰を崇め奉ればいいんだろう。

サイドでバスドラ(?)担当する大裕さんと、スネア担当の廣瀬さんも教祖さまを崇め奉ってる。いつだったかPOKER-FACEの振り付けが宗教みあることを指摘してらっしゃいましたけれど、この曲こそそれ以外にどう表現すればいいのでしょうか、邪教・拝金教。

両手の親指人差し指擦り合わせて、札束数える熊谷さんのシルエットが邪悪すぎた。「余を掴めぬ負け犬は飢えて死ね」ああ、仰せのままに。威力が凄い。教祖さま恐ろしい。

曲終わり、「教祖さまですか」って石川さんに確認されても「いいえ、代理です」って否定する熊谷さんは、やっぱり憑依型。

 

石「2年前からチケット取っておいたよーってひと!お!ありがとうございます」

熊「くっしゃくしゃなのでは」

石「あ、電子?電子か。じゃあ反対!この2年間で出逢って今日来てくれたよって方!ありがとうございます!!!!!!!!!」

後者への明らかな感謝の大きさに「どっちもありがたいやろ(笑)」ってちゃんとフォローを挟む熊谷さん。

石「僕たちバーンアウトシンドロームズ、チケットの払い戻しが非常に少ないことで有名なんですけども。イベンターさんが『バーンアウトのお客さんは払い戻ししてくれないんです…』って困ってました。払い戻ししないとね、キャパ調整とか大変でね。でも、それくらい、強い絆で結ばれた僕たちなので、今日はじめて来てくれたあなたとも、ぜひ強い絆で結ばれていきたいなって、思っています!」

そんな感じの、仙台。払い戻し、確かに困らせてしまうのはその通りだなあと思うから、そこはごめんね。中止にならない限り行くから、ライブの予定に日常生活を合わせていくのがBURNOUT SYNDROMESのライブの常なので、手放す必要がないんです。ね、ごめんね。

あれもこれも、ライブ中のどこでの言葉だったか、定かではないけれど、「まずは言わせてください!ただいま!」「そして皆さんも、おかえりなさい」そんな、久しぶりの再会を温かく迎えてくれる石川大裕が大好き。


声が出せない、でもみんなの声が聞きたい。そこでいしかわたいゆーが考えた、LINEトーク企画。声っていうのは、反応のことだから、文字でもある、と。ツアー限定のLINEアカウントを友だち登録すると、会場で選ばれたラッキーな誰かが、石川さんとその場でLINEトークのやりとりができるよ!っていうびっくり企画を利用しての、日替わり曲。予め決めているのかいないのか、トーク内容に絡めて選曲したり、リクエストに応えたり。初日仙台では、最近APEXにハマっているってお話からゲームの曲に繋げて、ハイスコアガールへ。

石「ゲームの曲2曲あるけど、盛り上がる方で」

熊「どっちもちゃう?」

石「廣瀬いける?コマンド入力するほうやで」

本当にその場で決めていそうな雰囲気にちょっとそわそわしちゃった。


2日目新潟では、まだライブでやったことない曲、ってリクエストを受けて、「やりたかった曲あんねん、はじめてちゃう?有観客では」ってOcean。

わたしのなかではOcean、ゆったり言葉のリズム楽しみながら聴く曲のイメージだったんだけどな。なんでいま太腿に筋肉痛を抱えているんだろう。これは体力いる曲。ハンドマイク持ったふたりが代わる代わる立ち位置入れ替わって歌ってるのとても眼が忙しい。

大裕さんが真っ直ぐ顔上げて、「大丈夫」って微笑んだ瞬間、とても強かったです。「宜候!」って叫ぶとこも、両手でマイク握って張り上げてる感じ、好き。

石「楽しいねー、もう一回いく?」

熊「皆さんの太腿はもう限界やで」


熊谷さんのMCからの、模範囚。仙台は椅子席だったこともあって、「折角だから座ってもらう?ここからゆったりした曲が続くので」って優しさにときめきますけど、ライブハウスでしかもバンドで座ることあまりないから貴重でした。

今回は熊谷さんよく喋るなあって割と序盤で思った気がするから、この辺りの曲順曖昧。普段いかにあの紙のセトリに記憶を呼び起こすのを手伝ってもらってるかがわかる案件。


模範囚。こんなにさらっと訪れてしまう曲のつもりでいなかったから、少し意表をつかれた気持ち。間奏の断末魔、真っ赤に染まるステージのなか断末魔と一体になったように一心不乱にギターを掻き鳴らす熊谷さんの姿から感じる痛みと、その後に歌われる希望と気づき。


「なかなか会えない世の中と、こんな季節にぴったりの曲を」逢いたい逢えない。電車も高速も飛行機も止まらなくてよかったなあ。

仙台で、曲終わり「逢えたねえ」ってしみじみする石川さんに「逢えないって言ってるやろ」ってツッコんだ熊ちゃんとても辛辣だったなあ。歌詞の世界観をとても大事にしていらっしゃる。好き。「いや、俺たちは、逢えてよかったなってことやん」って続けた石川さんへ、全力でわかるよ!そうだよね!って伝えたい。

新潟の熊ちゃんは、言葉の選択に厳しかった。

石「ツアー冬には絶対やらんって言っとったけど、延期延期で行き着いた先は冬でしたね」

熊「ツアーは春にしかやらん!って言ってました」

石「でも冬っぽい曲多いから、ちょうどいいか。夏やったらキツかったで!」

熊「夏やったら、MC困る」

石「大切やから、敢えて会わないことをしたからの延期やん」

熊「“あえて”“あえて”で音同じで重なっててややこしい」

石「わざと会わない?え?わざとはおかしいか」

石川さんが歌詞書くとき、こんな感じの鋭い指摘をばしばししてるのかなって想像したら、熊谷先生って相当スパルタだなって思いました。


廣瀬さんのMCのタイミングこそ前後の繋がりで覚えれないから、どこだったかなあ。

初日仙台、石川さんが「廣瀬くんの声が聞きたいな」って振りをして、廣瀬さんの番。

「有観客のライブが久しぶりです。当たり前だけど、リハのときは誰もいないんですよ、全部空席で。本当に来てくれるのかなって心配になって。普段はお客さんの様子、ちらって事前に覗くんだけど、今日はもうステージに出るまで絶対見ない!って決めていて、みんなの顔を見たらテンション最高潮になるのは間違いないから!って思って!その通り、最初っからめっちゃ強いドラム叩けました!」って気合満点の強強圧の廣瀬さんへ「ほんと強かった。リハでもやれや」って熊ちゃんの愛あるツッコみ。なんかすごく熊ちゃんが鋭い。メンバー同士の言葉遣い、愛おしい。


2日目新潟。

熊「声出せないから、LINEのやつ考えてきたやん。逆に、マスクだからできることとかないの?いまぱっと考えてや」

石「いま?」

熊「いつもぱっとアイディア出すじゃないですか」

石「いつも(本当は)しっかり考えてきとるわ!でも、いつか皆さんのコメントを照明にはしたい。配信ライブのコメント流れるのが好きなんですよね」

熊「それは、廣瀬くんの目がやられるやつ」

廣「(笑)」

熊「廣瀬くんはどう?」

石「そやったわ!」

熊「ここ廣瀬くんのMCなのに、この人忘れて振らへんから」

廣「こんな状況なので、色んな事情があって来れないひともいるはずだから、来られない人の分まで、思って、しっかり楽しんでいってください!」

熊「真面目。いちばん真面目」


ツアーができない間、部屋の小さなスピーカーで聴いていた音。いま、ライブハウスの大きなスピーカーの音。久しぶりだからこそ、爆音のよさに気づいたって話してた熊谷さん。16年目、新潟にて、ようやく気づいたことに対して「それはほんまに遅いで」って笑って返す石川さん。

マスクの返しも、爆音のよさも、眼鏡をかけてライブをしていることも、前髪を切ったことも、熊谷さんは、こんな状況だからこそ得られたことのお話をたくさんしてくれる。

今回のツアーは演出のほとんどを熊谷さんが考えていること。オープニングの映像は廣瀬さんが作ってくれたこと。石川演出じゃないから、「熊谷がなんかいいこと言う」の無茶振りを熟さなくていいこと。

「普段通りのことができたなら、普段通り本番前に何話そうかきちっと考えたかもしれないけど、今回は、自分自身がこのツアーで何を伝えたいのか、まだ定まっていないです」って熊谷さん本人も分からないこの先を、一緒に、見つけていくんだなってことが、とても大切な会いたい理由になる。頑張る理由になる。


終盤戦はそりゃあもう怒涛で、震えるほどに激しい激しい吹雪と燃え盛る火の粉ってきっと似てるんだろうなあと思う、熱い熱いBLIZZARD。

 

足取り軽く軽快に進んでいくテンポが更に更に鼓動を速くしていって、銀世界。きっとこの銀世界を抜けたら、夜明けが待ってる。とにかくライブ映えする曲だって、ずっとずっと思ってたよ。やっと聴けたなあ。ドラムのテンポがリズムが、逸る気持ちも全部全部一緒に連れて行ってくれる。

 

続いたPHOENIXは、昂まりきった気持ちを優しく受け入れてくれる。聴き馴染んだこの曲は、身体に負担のないテンポで、高鳴ったままの心臓のテンポを継続させてる。

 

そこからまた、「俺たちならもっともっと高く飛べるはずです」って石川さんの声にあてられて、全力疾走のFLY HIGH!!。「次はいつもはあなたに歌ってもらうところです。心のなかで歌って、ちゃんと聞こえるから」って、「聞こえてるよ」ってそう思ってくれること、想像してたよりももっとずっと嬉しかったなあ。このシンガロングにだって、代わりはいないんだ。過去でも未来でもなくて、いまここにいる私たちに任された大切なパートだから、私たち以外に担うひとはいないんだよって、故の静寂。でも、その代わり目一杯、腕に、拳に、瞳に、想いを乗せて届けようとしてるよ。


楽しいと嬉しいと大好きとひと匙の寂しいってやつを抱えて、最後に、飛び立っていく、Hikousen。穏やかな熊谷さんの歌声を聴きながら、ずっとざわざわした気持ちでいた、さよならと言う言葉に敏感になってしまう今日この頃。そこにどんなに肯定的で前向きな意図を孕ませていても、どうしたって別れのうた。

「この世界を目に焼き付けていくよ」って、きょろ、きょろって緩慢に視線を動かしてフロアを眺めた熊谷さん。

最後の最後まで、ざわざわと落ち着かない心。いちばん最初に演奏を終えた石川さんが、片手でベース高々と力強く掲げて、鋭くフロアを見据えて、ひとりではけていった。その次に廣瀬さん。立ち上がって大きくお辞儀してまたひとり。最後に残った熊谷さんが演奏を終えて、センターに躍り出て、石川さんと同じように片手でギター高々と掲げて、そして去っていった。ひとり、またひとりと、いなくてなっていく。ステージから去っていく姿に無性にざわざわした。まるで本当に飛行船に乗ってそれぞれが旅立ってしまうんじゃないかって、行かないでって、引き止めたくて仕方がなかった。行かないでほしかった。石川大裕の羅列されないエンドロールをぼんやり眺めながら、アンコールがあるから、まだあるから、大丈夫。はやくアンコール、って頭のなかで唱えてしまうくらいには、寂しさを助長させる演出でした。


アンコールは、何故か石川さんと熊谷さんが先にステージに戻ってきて、アフタートークをはじめる。

石「手拍子だけでアンコールって難しいよね」

熊「?、アンコール!って言ってたっけ」

石「最近はほら、フライハイ歌ってくれるやんか」

石川さんが「口パクさえ見えんけど、フライハイのとき、聞こえたもんな」って言ってくれて、熊谷さんが「わかるわ」って賛同して、気休めのように感じるわたしと本当に本当に届いていたらいいなと心から願うわたし。そんなしんみりした気持ちも、楽しい気持ちに変えてくれる、お馴染みのいつも通りのグッズ紹介。


遅れて登場した廣瀬さんがこれでもかとグッズを抱えていた。ああ、どうやらこの方こそが本物の教祖さまであったみたいです。可憐なグッズ紹介。熊谷さんが「はじめてこの距離で見たけど、圧が凄い。この人もう買ってくれてる人たちに向かって追加を求めてるわけでしょ?邪だわー」ってツッコんでて、ステージ上で3人でわちゃわちゃとやりとりしている、尊い時間。


アンコール。「あなたの笑顔が僕らの太陽です」って熊谷さんの熱い言葉からWake Up H×ERO!。すぐにMCで上手なパスじゃなくて、ゴールまで決める曲振りしちゃう石川さんの「ひとりひとりが頑張ってコロナに勝って、それぞれがヒーローやん!」ってニュアンスの新潟のMC、わたしはとても勇気付けられたよ。


割と序盤で、見るからに(やっべ)って表情になっていった熊谷さん申し訳ないけど愛おしかった。多分いまどうしようかフル回転なんだろうなあと。素早い反応でギター交換する準備をはじめるスタッフさん凄いし、心配した石川さんが近くに寄っていって、結局なんか大丈夫そうなのを確認して、代わりにスタッフさんにOKサイン送ってるのも愛おしいし、「トラブったと思ったけど、なんかトラブってなかったです」って言っちゃう熊谷さん愛おしいし、そのあとのばりばりにカッコいいギターソロは言わずもがな超超愛おしいです。


最後の曲は、セツナヒコウキ。まさか聴けるって想像してなかった、大好きな曲。でも、確かにTOKYOに似つかわしい選曲だなとも思った、盲点。それでも、どうしたってついつい過剰反応してしまう、別れの曲。遠く離れても想い合っているよとか、離れていても見守っているよとか、そういうことじゃないんだよなあ。それよりもいまは、とにかく会いたいんだ。顔を見て、触れて、その体温を感じたい。

 

普段のライブは石川総監督がかちっとシナリオ決めて、テーマを決めて、伝えたいことを明確に3人で共有してるんだろうなあって思った。熊谷さんが石川さんの意図を丁寧に汲み取って、それに即したことを話す。

でも、今回は熊谷演出。伝えたいテーマはまだ、定まっていない。これから固まっていく。だから、熊谷さんの話すことも、石川さんの話すことも、廣瀬さんの話すことも、それぞれが個々の感じ方や想いなんだなって気がした。熊谷さんはどちらかと言うと、この状況を受容しはじめていて、ポジティブに昇華しようとしているけれど、石川さんは、どこか現状に抗おうとしている感じがする。ライブができることを噛み締めながらも、今までの日常を重ねて寂しくて不安になるような。初日に不意に漏れた、「俺やっぱりみんなの顔が見たいわ。もっと見たいわ」って言葉とか、「また大変な状況になってきてるから、次、来れるんかなあ。前までは、来月来ます!とか言えてたのに、いまはあと1回来れたらいいねっていう話をしてる。まだ1月やで!」って思わず声になった不安とか、石川さんの言葉があまりに率直で、それはきっと誰もがどこかで感じている不安で、考えることを避けていたことでもあったと思うから、言葉にされて、急激に寂しさを無視できなくなった。誰の頭の片隅にもある極々自然な不安を言葉にできる石川さんのことをどうしようもなく愛おしく感じている。無理矢理にポジティブに変換しなくても、足りないものは足りないと感じたままでも、現状に慣れて満足しようとしなくても、いいのかもしれないって思った。そういう不安に思う気持ちさえも共有させてほしい。

それと、もしかしたら、ステージから見える景色の方が、ずっとずっと以前と違うのかもしれない、とも思った。声が出せなくて不意にもどかしくなっても、それでもステージに立つあなたたちが魅せてくれるものは何一つ変わらなくて、相変わらずカッコよくてキラキラしてて、最高にわくわくさせてくれて、そんないつもと同じ光景を目に焼き付けられているわたしたちと、等間隔に整然と並んだマスク姿を見る彼らとでは、印象が違うのかもしれない。大裕さんが普段、どれだけわたしたちの顔を見て、楽しませようとしてくれて、あの場所に立ってたか、思い知った心地だった。全部想像だけど。


でも、楽しい気持ちも会えて嬉しい気持ちも画面越しじゃわたしたちはどうしたって伝えきれないから、やっぱりたとえ不完全でも会えることが嬉しい。ちゃんと全部全部伝わっているといいなと思う。受け取ってくれているといいなと思う。


いつものように次のツアーの発表とともにエンディングを迎えられない寂しさを、いまある約束の日をちゃんと迎えられるのかも分からない不安を、押し込めることで安定する気持ちもあるはずだけど、私は、この足りない気持ちも不安も大好きなものに向ける大切な感情だと思って抱えていよう。それが現状の全て。


兎にも角にも、どうか走り出したこのツアーが、ひとつの答えに辿り着けますように。最後まで無事に走り抜けられますように。願わくは、一つでも多く見届けられますように。全部全部、心の底から願ってる。それぞれの努力と忍耐で、少しでも現実的なものに近づけようね。どんなに耐え忍んでも、どれほど頑張っても、呆気なく、無情にも失われてしまうかもしれない可能性も頭の片隅から消えないけれど、でも、頑張れる理由がちゃんと、ある。まだ、まだ、大丈夫。