共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜 東京編

DISK GARAGE presents

共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜

2023.01.16(月) @SHIBUYA CLUB QUATTRO

FLOW / ラックライフBURNOUT SYNDROMES

 

 

 

BURNOUT SYNDROMES


アニソン縛りの超絶激熱対バン、共鳴レンサツアー〜アニメスペシャル〜、ツアーファイナルの東京。トップバッター、BURNOUT SYNDROMES

登場SEのアナウンス、超絶ニュアンス解釈だけど、ライブの重要な要素に静寂を含んでいるところとても好きだなって思う。余韻に息を飲むあの瞬間の高揚を知っているから、嬉しくなっちゃう。ついでになんだか、Dolby Cinemaの紹介トレーラーみ、あるなって思った。究極のシネマ体験、ならぬ、究極のライブ体験が、いま、はじまろうとしている。鳥肌。

 

激しい手拍子に迎えられて登場したメンバー。上手お立ち台に立つ廣瀬さんの髪型にひととき釘付けになってしまったのは仕方がないと思う。み、みみどり?!って。衣装の赤色とのコントラストで一層映えるド派手なメッシュ。予想外の変身サプライズ。

 

1曲目、BLIZZARD。本日の熊ちゃん、キビキビとマイムする感じ、キレよくてかわいいなと思います。気持ちよくスパッと出た裏声の鋭さに、心の内で安堵に頷いてみたり、まだ確信が持てない不安を片隅に孕んでみたり。

 

そうして夢中に懸命にステージに向かって手を伸ばし気持ちを飛ばしている間に、SEのコーラスで繋いで続いた、ヒカリアレ。両手でグーサインしたあとすかさずバンって撃ち抜く仕草どっかでしてた。たぶんヒカリアレ。たぶん「風穴 穿つのは」。たぶん。

要所要所で、口角上げて笑顔を作って見せる熊谷さんに、これなら大丈夫だなあ、って「笑顔こそが最強のポーカーフェイス」って一説を思い浮かべながら、ヒカリアレの「己と戦うキミに幸あれ」と歌い変えてくれる、“キミ”に、熊谷さん自身を重ねて聴いた。

 

大阪名古屋とは異なり、MCは挟まず続けた3曲目、「新年早々なので、初日の出見たくないですか」ってニュアンスの熊谷さんの曲振りから、Good Morning World!。

 

MCがはじまり、徐に上手に追加セッティングされるエフェクターボード。言ってもこの対バン、アニソン縛りだから結局コラボ曲やらないんじゃないか…って思ってた愚かな私へ、喜べ、予想は裏切られた。

石「明けちゃったね」

熊「明けたくなかった?」

石「いやだってよ!ダサない?2023って。2023って素数だと思うひとー!残念!7で割れます!…ダサない?って話をケイゴさんにしたんよ」

熊「ケイゴさんに(笑)」

石「そしたら、俺たち20周年なんだけど…って」

堪らず恐縮して、焦ったように揃って謝罪の意でぺこぺこと頭下げるフロント陣。

石「ラックライフは、15周年…」

再び、ぺこぺこぺこ

石「俺たちは18周年で…」

熊「それがいちばんダサいな」

揃って気まずそうにひたすらぺこぺこ頭下げてる姿、後輩み強くてそーきゅーとでした。

熊谷さんに「君のMCはIQ高くてわからない」って言われるいしかわたいゆーは、いた。だからもう一つくらいIQ高めワードがあったと思うんだけど、思い出せない。残念。

 

石「2023年新曲出しました!今日やっちゃおうかと思ったけど、そんな都合よく?コラボ相手が?ないないない」

熊「え?でもさっき誰と話してたんやっけ」

石「は?!」

みたいな、愛しく愉快な茶番劇。そんな都合よく、対バン相手がコラボ相手なんです、なんと今日。わーお。

FLOWから、MVに登場してるKEIGOさんKOHSHIさんTAKEさんを出迎えての、I Don't Wanna Die in the Paradise。今回の対バンとは関係のないところで、バーンアウトからのオファーで実現した超絶カッコいいコラボ曲。覚悟と生き様の歌。

頭上からの青と足元からの赤が織り混ざった照明に染まるステージが、彼らの生き様を烈しく照らしているようで視覚的にもばちばちにカッコよかった。

ラップ歌ってる熊谷さん好き。生で聴くFLOWのお二方の歌声も、カッコよさ限界突破してた。改めて、なんてカッコいい曲でしょう。

熊谷さんが、TAKEさんとギター弾き合ってる場面には、うーわー熊谷さんがとってもギタリストだーうーはーカッコいいーって、無性に胸にきた。

「腰の妖刀」で、すーっとぶら下げたギターのネック握るのも、「命 いただきます」で合掌するのも、ご馳走さまです。

コラボ曲、どう考えてもこの一回きりなんてもったいないからもっと披露の機会があってほしいなあ。もしかしたら、海外での共演コラボのほうが、早かったり…するんだろうか…困ったな。

 

コラボ曲を終え、FLOWさんのハケた下手袖から、いつの間にやら現れたPONさんが、高々と掲げたイエローカード。なんか、見るからに拗ねてるって感じできゅーとでした。

石「え?なんで?」

熊「あー、あれじゃない?アニソン縛りだから」

石「寂しかったんちゃう?」

熊「ラックライフ15周年おめでとうございますー」

とってつけたように白々しい躱し方をする熊谷さんの対応から、仲良しなんだなーっていうのが伺えて、非常によきです。懐いてるんだなって思う先輩への扱い、なかなか雑よな、熊ちゃん。

 

トップバッターとして、この後の先輩方に繋げるように、って話をまとめようとする熊谷さんに、石川さんが不服を唱えた。「よう考えて?大阪名古屋であの先輩たちが、手加減してくれてたか?後のために体力残してくれてたか??」って、恨み言のように熊谷さんを説得。即座に説き伏せられた熊谷さんが「HP 0にしていきます!大丈夫。0になってもすぐいっぱいにしてくれるバンド続くので!」って、PHOENIX。飛ぶしかない。今日ここで、飛ぶために来た。

目一杯両手を広げて羽ばたく熊谷さんの姿が優雅で、敵の鉄壁砕くバレーボールのアタックの仕草が今日も心を擽る。

 

その勢い、熱気のまま、FLY HIGH!!。ギター掲げるサイハテノミライヘも、天高くサイハテノミライ指差す姿もどっちも好き。「最後、せーので飛びましょう」って石川さんに導かれて、フロア一体の特大ジャンプ。

 

01.BLIZZARD
02.ヒカリアレ
03.Good Morning World!
-MC-
04.I Don't Wanna Die in the Paradise
-MC-
05.PHOENIX
06.FLY HIGH!!

 

 

 

ラックライフ


「音楽なんてなくても生きていけんねん。でも、ないと死ぬんやろ?」って、何もかも分かっているように言葉を紡ぐのは、同じ気持ちを抱えているからなんだって証明のように、溢れる想いをそのまま吐き出すように言葉を紡ぐPONさんがいました。

 

最初のほうのMCでは、再びイエローカード取り出して、コラボ曲の披露について苦言を呈するPONさんもいました。この対バンの事前インタビューでも、「いつの間にかFLOWとバーンアウトのコラボ曲の話になっとる!」って臍を曲げてました。仲間外れにされてご機嫌斜め。俺たちともコラボしてくださいってへこへことゴマすりするPONさんも、いました。

 

俺たちの曲を、「アニメの話に重ねて、ラックライフの歩みに重ねて」いろんな聴き方をして、出逢って「でも俺たちは何よりあなたの人生に片足突っ込みたくて歌を歌っています」ってニュアンスの熱い言葉。とめどなく喋り面白おかしく言葉を繋ぐPONさんも、カッコよくて熱い想いを真っ直ぐ心に届くようにと歌うPONさんも、全部全部で、陽の気で満たしてくれるような、肩の力を抜いてくれるような、そんな魅力。

 

01.Hand
02.リフレイン
03.Naru
04.シンボル
05.℃
06.しるし
07.名前を呼ぶよ

 

 


FLOW

 

フロアを見渡せる位置で体感したFLOW、凄かった。湧き上がるひと、腕と手と拳と、音楽に呼応してそこかしこで飛び上がる人影の勢いと熱気。この対バンツアーで、20周年迎えるバンドの偉大さと抱えているものの大きさを体感したなあ。

 

アニソン縛りのこの対バンツアー、3バンドの共通点はもちろん、アニソン。そしてもうひとつ、「よく喋ってMCが面白い」と話したKEIGOさん。バーンアウトはご存じあんな感じだし、PONさんについては「喋ってないと死ぬの?マグロみたいに?」「噛んでも喋り続けている」って評してました。

 

GO!!!での特大ウェーブは、PONちゃんをスタートにはじまった。パーテーションの向こうからぴょんっと飛び出る腕。背、高。前の曲では、足腰に配慮してから、しゃがまなくていいよ頭下げるだけでいいよ、って優しさがあったけど、やっぱり結局、しゃがませてくるFLOW先輩。最高だと思う。

 

アンコールでは、再び、PONさんがイエローカードを取り出して、ちょっとだけ恐縮しながら、「インストって、アニソン?」って問題提起をFLOWさんにもしてました。

「袖履けたらポンちゃんイエローカード突きつけてきてて、これ2枚目だからね」ってFLOWさんに「一応レッドカードも作ってきました。楽屋に綺麗なガムテープがあったんで」ってレッドカードも見せるPONさん。「よかった、レッドカードじゃなくて(笑)」って安堵するFLOWさん。あれ?イエローカードって2枚で退場では…って思ったけどきっと気のせい。

 

ステージの真ん中に促される石川さんが、「先生、真ん中はおかしいです、先生」って恐縮してて、「先生ってやめない?胡散臭い…」ってKEIGOさんに言われてた。

 

このツアーは3バンドで回ったツアーだからと、全員でアンコール。選曲は、ORANGE RANGEのビバ★ロック。後ろのほうで、廣瀬さんと生駒さんと振り付け確認しながら戯れてる熊谷さん可愛すぎて困った。エアギター奏でてる熊谷さんも可愛くて困った。石川さんの歌声も素敵に響いてて、特別でした。

 

01.CALLING
02.DICE
03.愛愛愛に撃たれてバイバイバイ
inst.
04.Steppin'out
05.United Sparrows
06.GO!!!
07.GOLD

en.ビバ☆ロック

共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜 名古屋編

DISK GARAGE presents

共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜

2023.01.06(金) @NAGOYA CLUB QUATTRO

BURNOUT SYNDROMES / FLOW / ラックライフ

 

 

 

ラックライフ


仕事を終えて猛ダッシュで、なんとか辿り着いた名古屋クラブクアトロ。アニソン縛りの共鳴レンサツアー、前日の大阪に引き続き、2公演目、地元名古屋。既に音の鳴っている扉の向こうにノンストップで駆け込みたい気持ちが溢れ出たまま、受付をなんとか通過して、扉を開けた。聞こえてきた曲は、お気に入りの、リフレインだった。最新のラックライフも予習しようとして作ったアニメ縛りのプレイリスト、最遊記への愛着と曲自体のカッコよさの所為で、この曲が回ってくるたびにリピートしてしまってなかなか予習が捗らなくて困ったものでした。特別に好きな曲があるって、それだけで無敵な気がする。


「いつまで1弦チューニングしとんねん」って生駒さんがどこかのタイミングでツッコんだ瞬間、正直かなりきゅんとした。落ち着いた声が好み、語気も丁度いい、佇まいも好き。

大石さんのスティック回し、ゆったり余裕たっぷりでキマっててカッコいいなあとかも、思った。フォーピースって、ボーカルとドラム正面からだと位置被ってること多いけど、ラックライフ微妙にズレててとってもありがたい。


ツルネって弓道アニメのタイアップを勤めてるラックライフ弓道とバンドは、似てるって話すPONさん。的に目掛けて真っ直ぐ矢を飛ばす弓道と、あなた目掛けて真っ直ぐ届ける歌。「あなたの心に真っ直ぐ刺さって抜けない」が何故だか言い切れないPONさん可愛いなと思います。噛み噛み誤魔化し、笑いも誘う、軽快なMCからの、Naru。

「放て 胸の深くまで 刺さって抜けない音になれ」って歌詞が、本当にまるで、ラックライフそのものを歌っているように、頭に残る。バンドの核になるこの言葉を歌にして捧げられているアニメも、特別だと思う。


「石川…バーンアウトシンドロームズの石川くんがね、ずっとMC考えてるんですよ。彼真面目なんで。ポンさんポンさんMC何喋りますか?トリって何話せばいいですか?って聞いてくるんで、ケイゴさんにも同じように付き纏って聞いてますからね。だからこの後彼がするMCいまから俺が言ったります!あーー袖でこう(両手親指下にした下品な手話)してますわ!(笑)」

どこかから、石川大裕の切実な声が聞こえた気がした。PONさんほんと悪いひとだ。バーンアウトのこと可愛がってくれてありがとうございます。

「FLOWのGO!!!って曲、あれなんでびっくりマーク3つなんやろって。NARUTOが、ナルト、サスケ、サクラのスリーマンセルだからだと思うんすよ、って彼は考えました。……違うらしいです」軽やかにオチを付けて、饒舌に話すPONさんが「石川ーウケたでー! 」ってにこやかに報告してる。

P「1より2より3の方が勢いがあるからだそうです。バーンアウトは、ハイキュー!!と同じ数やんな」

i「ほんまに全部言うやん」

P「石川焦ってるでー、ザマミロ(笑)」

本当にもう、PONさんって悪いひと。屈託ない笑顔でなかなかの鬼畜っぷり。


「FLOWさんとはいつかタメ口でいけるくらいになりたい」って主張するPONさんを「やめとけ」って嗜める生駒さん。でも、岩崎さんには一生勢いのよい体育会系おはようございます!でピシッと直角お辞儀しちゃうだろうことを付け加えるPONさん。PONさんもそういうことできるひとなんだなあって、ちょっと失礼なこと思いましたごめんなさい。

 

分断に笑いを交えたステージ、その根っこにあるのは、骨太ロックバンドの魂。笑って笑って温まった身体が、その熱が、そのまま興奮や感動へと移り変わっていくような不思議な魅力のPONさんの言葉たち。「あなたを元気づけたい、それが、俺らの意味です」ってその言葉に、どれだけ励まされるか。「あなたの“所為で”、いまもバンドを続けてしまっている」って、それを背負ってくれることにどれ程救われているか。大阪、高槻のラックライフ。カッコよかったです。

 

01.変わらない空
02.リフレイン
03.℃
04.Naru
05.風が吹く街
06.名前を呼ぶよ
07.Hand

 

 

 

FLOW

 

01.Re:member
02.DICE
03.HERO-希望の歌-
inst.
04.風の唄
05.United Sparrows
06.GO!!!
07.GOLD


「今年は名古屋既に2本決まってる。去年は、名古屋よりサウジアラビアの方が多いっていう状態だったけど、今年はたくさん来たい」って、海外でも勢力的に活動できるの頼もしいね。


途中、ボーカルふたりがステージからハケていって、インストセッションがはじまる演出、改めてめちゃめちゃカッコいい。


「昨日ポンくんに言われました。FLOWはライブハラスメントバンドだって。飛ばせたりしゃがませたり。でも俺たちは、みんなと楽しみたいだけなんです!ただ一緒に最高の日を作りたいだけなんです!」

確かに前日のPONさん、膝限界なひとそろそろ出てくると思うから訴えるなら仲介する、って言ってたなあ。PONさんの主張の、誤解を解くようにどこかシリアスにどこかコミカルに、切実に熱く想いを言葉にするKEIGOさん。

最大級に身体を酷使する、GO!!!。フロアのジャンプも超特大。しっかり反動つけて膝使って飛ばなくては!って気にさせるから、確かにこれはどこまでもいい意味でだけど、ハラスメント。言い得て妙だなあ。本能の赴くまま身体が動く、動かしたくなる、そういう熱気が充満していた。私には一瞬、モッシュの幻影が見えた気がした。 FLOWってバンドの偉大さを物語っているような空気感、堪らなくカッコいいなあ。フロア全体を巻き込んでのビッグウェーブ

途中、「それでは、楽器隊の歌声をお聴きください!」って岩崎さん、GOT'Sさん、TAKEさんと順に楽器隊による歌唱。楽しい。

落ちサビ、フロアのことを掻き回すように指しながら「全てを巻き込み」って歌うKOHSHIさん。ああ、いまこの瞬間のことだ、って心臓が震えた。歌とフロアとステージが一体化している。なんて楽しいんだ。ライブハウスの激烈に燃える醍醐味。


「20年やってても変わらずライブが好き。まだ思うようにできない状況だけど、誰か偉いひとに決めてもらうことじゃない。自分たちの大切な場所は、自分たちで選んで、守っていこう」

GOLD。ジャンプして、腕を上げて、拳振るって、頭を振って、休む間もなく訪れる、気持ちを昂らせる瞬間の連続。先輩バンドのパワフルで偉大な存在感を見せつけられた気持ちでした。カッコいい。

 

 

 

BURNOUT SYNDROMES


初日大阪は、何て流れてるのか単語さえ聞き取れなかった気合のニューな登場SE。耳が慣れたからなのかどうなのか、ちゃんと熊ちゃんの声だった。大好きな声で「共鳴レンサ」って流れてるのが聞き取れて嬉しくなった。このツアーのための特別。共鳴レンサツアー2公演目、名古屋、トリ、BURNOUT SYNDROMESのステージ。前立てのデザインがオシャかわいい白のドレスシャツに身を包んだ熊谷さん。その衣装配信のときからすごく好きです。生で初めて見ました。嬉しい。好きです。


1曲目、真っ直ぐ図上に突き上げた力強い拳ではじまる、BLLIZARD。フロアを隅々までギターで射抜くようにしたの、たぶんこの曲、だったと思うけど、曖昧。カッコよかったのは明確。

真っ白な雪を静かで落ち着いた安定感のあるものに例えているこの曲で、同音異義の言葉を特別に拾ってしまう邪な私の耳をどうか許してほしい。


SEで流れ出すエフェクト混じりのコーラスが、耳慣れたメロディーに変わっていく。すかさず手拍子で煽るフロアの熱のなか、続いた、ヒカリアレ

「穿つ」で両手でバンッて指鉄砲打つ仕草。落ちサビの一瞬、熊谷さんだけを灯す眩いピンスポに魅せられた。いや、そういう場面と照明演出は確かにあったんだけど、ここだったかはあんまり自信がない。

大好きな声が「名古屋」って発する度、ニヤつきを抑えられない。仕方がない。12月からずっと満たされてなかった穴が埋まっていく気がした。勝手な欲目もあるけど、たくさん呼んでくれていた気がしてほくほくと幸せだった。


熊「明けましておめでとうございます」

石「いやー、明けちゃいましたね」

熊「明けちゃいました?」

石「あれ?明けるのめでたい派?俺はめでたくない派やねん」

熊「そんな派閥があるの知らなかった」

石「俺、兄弟多いからさ」

熊「そんなマウント取られても」

石「お年玉ってどう思います?皆さんあれ、大人の余裕やと思ってるでしょ?違いますよあれ、大人の本気ですからね」

熊「あの五千円がぁ?」

石「廣瀬にあげたん?って聞いたら、あげたってさらっと答えるんで、こいつカッコええなと思いました」

石川さんの言葉に反応して、立ち上がって恭しく賞賛を受け取る廣瀬さん。

石「お年玉って名前がもう縁起悪いでしょ?落とし玉なんてねえ。上がり玉にしましょ。縁起いいでしょ?昇ってく朝日みたいで。ほら、熊谷くんにおはようって言ってほしいでしょ?言ってくれる?」


「明けましておめでとう世界」って熊谷さんの叫びで、夜明けと共に年明けも告げた、Good Morning World!。

「唯一つの 今」はこの瞬間だと力強く指し示す石川さんのアクション、最近は毎回視線を向けるようにしてる。カッコいいところ。

「キミの半分は水」って歌詞変え、好き。廣瀬さんのバスドラに片足乗っけて演奏する熊谷さんの背中、華奢な身体さえカッコよくて大好きな要素だから、もうなんだって。


雅な和楽器アレンジで繋げ、「銀魂のエンディング曲です」って曲振りがされた、花一匁。「斬られて堪るか」の迷わず振るわれた手刀がとっても鋭くてカッコよかった。

「欲望を隠しもせず」ってフロアを指差し確認しながら力を込めた歌声が好きだなあ。「唯 脚 蹴り上げ」で靴底の見える綺麗な前蹴り、好き。

これは毎回の癖みたいなものなんだけど、コーラスが聞こえても聞こえなくても、石川さんパートで腕動かしちゃう。歌声に聴き惚れながら、音源を平行再生させてる感覚。


ノンストップで続いた、銀世界。とびっきり心を軽やかにしてくれるテンポとリズムで、限界なく気持ちを昂らせる曲。これを綴っているいまだからそう思うことだけど、桜や梅の咲く季節は焦らなくたって訪れるから、焦らずゆっくり。


そして、訪れてしまったMCタイム。何を話すかは意地悪な先輩によって、既に知れ渡ってしまっています。さあどうするんだいしかわたいゆー!って空気で見守られるなか、「皆さんGO!!!って曲もちろん知ってますよね」ってPONさんが暴露した内容のままを話しはじめた苦し気な石川さんに、拍手笑いで反応するフロア。

石「あかん…できひんわ…こんなん」

熊「なんでよ」

石「そうかお前、トイレ行ってたから知らんのか。教えたるわ。あの、ポンきちが!!全部言うてん!俺がいまから話すMC!」

熊「(本番より)先に言うからやん…」

石「え?俺がピュアすぎんのかな…」

熊「なんて話したん?」

石「待っておった!!!!ここにいました!知らないやつ!もうお前に話すわ」

そうして、唯一MCの内容を知らない(おそらく、リハでやってるのではって言いたい気持ちは胸の中にしまって)救いの手である熊谷さんに、身体ごと向き直る石川大裕。前日大阪でPONさんが指摘した、友だちと会話してるみたいに熊谷さんの方向き過ぎた状態でMCするから、下手フロアの視界は石川さんのおしりだけ、って状況がいままさに目の前に。PONさん命名、おしりシンドロームズ。綺麗すぎる、あるいは、予期せぬ伏線回収のようで、一層愉快なMCタイム。石川さんが向き直ったことに応えて熊谷さんも、くるりとスタンドマイクごと向きを変えて、さあどうぞと言わんばかりに石川さんの話だけを聞くモードに入った。ステージ上にも関わらず、フロアを差し置いて完全に正面から向き合ってふたりだけで会話しようとしているフロント陣ふたり。それを見守る廣瀬さん。シンドロームズの戯れ、愛おしい。

石「俺らのFLY HIGH!!は、ハイキュー!!と同じびっくりマーク2つやん。FLOWさんのGO!!!って曲さ、あれはなんで3つやと思う?」

熊「えー、わからん…NARUTO…ナルト?」

石「そう!そう近いで!俺に近い!」

熊「ナルト、サスケ……サクラ…3人?」

石「そう!!!!!!!!」

ちゃーんと考える演技しながら、小芝居してる熊谷さんのくるくる変わる表情の可愛いこと可愛いこと。こんな茶番劇なら、一生見ていられると思う。笑いの絶えない、癒し。

石「ですよね?って確認したら、違うって。2つじゃ寂しいからやって」

熊「ナルトとサクラふたりじゃ寂しいから、サスケも、ってことじゃないの?」

違うらしいんですよ、熊谷さん。私たち先に聞いちゃったんですよ。勢いなんですよ熊谷さん。あと、これは私の個人的な主張ですけど、3人でも寂しいから、隊長にカカシ先生も加えてフォーマンセルにしてあげてください。


「やっぱ対バンって、対戦やな!これは共演ちゃうわ。俺ほんまに袖でこう(両手親指下に向ける下品な手話)やってましたからね」

初日大阪では、これは対戦バンドじゃなくて共演だって言ってたのに、打って変わった主張をする石川さん。でもこれは、PONさんの所為だぞ。

「FLOWさんは味方やと思ってたけど、あんなもん体力泥棒ですよ。散々しゃがませて、飛ばせて、もう皆さんのHPはほぼゼロ。でも俺たちも盛り上げたいんです!俺たちだけでは足りないんで、皆さんの力貸してください!!」

ズザーって低姿勢でひたすら下手手に出てフロアにお願いする石川さんの勢い、スライディング土下座並で、謙虚で健気で笑っちゃった。でも、任せてほしい。「偉大な先輩バンドに、勝ちたいんです!皆さんの力を借りて!」って、ある種不恰好な、でも唯一無二の大好きなカッコよさ。勝ちたい!って明確な意思表示、熱く燃えた闘志で迎える、PHOENIX

石川さんが勝ちたいってMCしてるときの、熊谷さんの気を引き締めたような表情のカッコよさと滲む緊張感に、無性に心が騒ついた。

高々と掲げられた爪痕が残るくらい強く固く握った拳。途中、どこか引き攣ったように口角を下げた口元。度々何かを呟いていた気がしたけど、私に読唇術はできない。辛うじてわかるはっきりとしたマイクって口パク。


曲終わり、センターに集まったメンバー。熊谷さんの耳打ちを受けて、すっと厳しくなった石川さんの眼差しが、その意味が、怖かった。石川さんの力強い拳を胸に受けて気合いを貰って、マイク前に戻ってきた熊谷さんの潤んでいった眼と、それを耐え切れず拭った指先。あんなにもはっきりと表に現れた不安を見たことがなくて動揺した。そこに立っているのがやっとにさえ見えて、どうしていいか分からなかった。

「ごめんなさいね。メンタルへたっちゃって。正直言うとまだコロナ抜けてなくて…俺ちゃんと歌えてますか?自分で声出てるかもうわからない聞こえてない。大丈夫ですか?出てます?聞こえてます?」

ひたすらに不安そうにか細い声で尋ねる熊谷さんに、すかさず応えたのは廣瀬さんだった。吃驚するくらいしっかりとした声で、ちゃんと届いてるから大丈夫、って、出てなくてもみんなに聞こえる、って言葉にして熊谷さんのことも私たちのことも支えた姿が、途方もなく頼もしかった。あの瞬間は、でも、「このひとが喋り出すってよっぽど」なんだって、本当に異常事態なんだってことを痛感してしまって、呼吸が浅くなった。


本当にちゃんと声は聞こえてた。変わらず大好きな声だった。どこか低い気がしたり出しにくそうな印象とか違和感はあったとしても、状況と背景を知っているからこそ心配がちらついてしまうけれど、それはきっと思い過ごしとも取れるような、誤魔化すこともできた程度だった可能性もあると思う。連日ライブの2日目が鬼門なのはいつだってそうだから。でも、声が聞こえにくい、もしくは出しにくい、なのかもしれないし分からないけど、そういう違和感は、熊谷さんだけが肌身に感じ取れる危機感であって、私にはどうやったって過不足ない程度を推し量れない。だから、言葉にしないと危ない、誤魔化しきれない、って彼自身が捉えている状況が、どん底の想像に繋がってしまって、何よりも怖かった。理解の及ぶ範囲に安心材料がなくて、どうしていいか分からない。


「聞こえづらかったらそれぞれのEQ弄ってもらって。PAさんもお願いします」なんて、迎えた、FLY HIGH!!。サイハテノミライを指差そうとしてマイクにガツっと当たってたのだって平時なら可愛いってくすっとなるだけのことなのに。いますぐにでも止めたい、止めた方がいいんじゃないか、お願いだから無茶をしないでほしい。そう思いながら、それでも確かに歌い続けているその姿にどうにかして応えたくて、必死に煽るように拳を掲げる、腕を伸ばす、矛盾していたかもしれない。あんな弱々しい姿を見たくはなかったって泣けない気持ちと、でも、だからこそ目を逸らしてなるものかっていう意地。どんな状況も共有できることが嬉しいなんて常日頃思っておいて、ここで逃げ出すなんて自分勝手が過ぎる。見守ることしか、それしかできないけど、せめて。できることなら、声が、出したかった。ちゃんと届いてるって言葉にしたかった。

あんな状態でも確かに歌い切ったこと、演奏し切ったことが、凄いことだと思う。無茶をしないでと心から願いながら、それでも、あなたがそこで歌う姿をどうしたって望んでしまっている。今日もそのステージに立ってくれていることへの、歌ってくれていることへの感謝は尽きない。当たり前じゃない、特別なこと。

いつだってどんなときも、BURNOUT SYNDROMESが一際特別にカッコよくて、大好きで夢中だから、熊谷さんの声が届かない瞬間なんて一瞬たりともないから、絶対に大丈夫だから、それだけは安心してほしい。

 


アンコール。出演者全員大集合。PONさんに肩組まれながら登場した熊谷さんが、身長差も合わさっていつもよりずっと小柄に見えて、それもちょっとだけ心配を煽った。TAKEさんがサンゴー缶片手に「名古屋だから、渋谷も来れるんじゃない?」って主張してた。うん、行ける。

全員で写真撮影して、最後ハケていく先輩たちのなか、ほんのちょっと残って、両手合わせて頭下げた熊谷さん。

本来あったと仮定して、どんな曲をカバーするんだろうかとか、FLOW先輩とのコラボ曲の行方はどうなるんだろうかとか、楽しみにしていたアンコールの曲が、なかったことに対して、残念に思う気持ちは皆無ではなかったけど、それよりも安堵ばかりが圧倒的に強くて、先輩たちの寛大さとか優しさとか、石川さんと廣瀬さんの心中を想像して、熊谷さんの心も身体も心配で、胃の奥が重くなった。大事を取らないといけない状況だってことに対する不安は拭えなくて、落ち着かない。ずっと。お願いだからどうか、今後に響いてしまうような無茶だけはしないでほしい。無理のない範囲の最善で臨んでほしい。どうか、心身ともに健やかであってほしい。不安で不安で仕方がないけど、本人たちはきっと、私なんかの比じゃないものを抱えて考えている。BURNOUT SYNDROMESはちゃんと大丈夫。ちゃんと強い。ひとりじゃないから信じて。

 

01.BLIZZARD
02.ヒカリアレ
-MC-
03.Good Morning World!
04.花一匁
05.銀世界
-MC-
06.PHOENIX
07.FLY HIGH!!

共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜 大阪編

DISK GARAGE presents

共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜

2023.01.05(木) @梅田 CLUB QUATTRO

ラックライフ / BURNOUT SYNDROMES / FLOW

 

 

 

全バンド、アニメソング限定セットリストの激熱イベント、共鳴レンサツアー 〜アニメスペシャル〜。考えれば考えるほど楽しみでしかない。

各々がそれぞれのバンドのグッズを身に纏う、久方ぶりの対バンイベントの雰囲気とか、久しぶりに会えたひとがいることとか、新年のご挨拶に回れる嬉しさとか、いろんなものが楽しくて、意外とあっという間に過ぎていく時間。

場内BGMもアニソン縛りで、新旧様々。UTAの新時代とか、思わず歌い出したくなっちゃう。

 

 


FLOW


トップバッター、FLOW先輩。NARUTOとかコードギアスとか、あの頃ドンピシャで私のアニメ世界を彩ってくれた曲たちを歌っているひとが、本当に目の前に居る感慨がまずあった。

 

01.Sign
02.DICE
03.WORLD END
04.COLORS
inst.
05.
06.GO!!!
07.GOLD


「いいねえ。ラックライフのグッズ身につけて、バーンアウトの着て。これが対バンですよ。全員で今日を最高の日にしていこう」って、対バンの醍醐味を熱く叫ぶKEIGOさん。各々に好きなバンドがいて、それぞれの好きを抱えて集まったひとたちが、アニメソングというひとつのジャンルで繋がろうとしている。それぞれの好きが一体化して壮絶なパワーを発揮する、そんな可能性を孕んだ空間がここにあるんだから、わくわくしないわけがない。


DICE、WORLD END、COLORSの繋ぎは、コードギアスに夢中になってたあの頃の私が堪らなく騒ぎ出したターンでした。3公演で制覇できればいいなと思ってた聴きたい曲が、既に聴けてしまった驚きも嬉しさもあった。

COLORSのアウトロで、ルルーシュとスザクが悲痛と激昂を乗せて互いの名前を叫ぶ声が脳内再生された。アニソンって強くて偉大。


チカチカと不規則に光が灯っては消える照明演出。はじまったインストのセッション。いつの間にかボーカルふたりの姿はステージになく、楽器隊の音だけがいま、ライブハウスに響いている。演出も演奏もめちゃめちゃカッコいい。


GO!!!でのそこかしこで本気ジャンプが飛び交う空間。ふとした瞬間に建物の揺れを感じて、足元がふわっとして、ここってこんな揺れたっけ、って激しさと一体感が凄かった。フロア全部を巻き込んだウェーブの煽りも然り。


GOLD。聞こえてくる歌詞に「花一匁」ってあって、そわっとした。和テイストのカッコいい曲。最後に、「失礼なこと聞きますけど…皆さんまだ飛べますか?最後に特大ジャンプいけますか?しゃがんで」ってドラムのカウントで一斉ジャンプ。


FLOW凄かった。怪物アニソンバンドたる佇まいで圧倒的な存在感でフロアを煽っていく、その貫禄と圧。あの熱気に充てられて、半強制的に巻き込まれてしまう解放感。普段のじっくり聴くって楽しみ方よりも、煽られるまま乗せられて本能のまま身体が動いて汗をかく、そんな楽しみ方をしたような気がします。畏怖の念さえ抱いてしまうような激熱のトップバッターでした。


転換中のBGMもサムライハートや千本桜、発熱、そわっと気持ちが動いてしまう曲ばかり。アニソン強い。

 

 

 

BURNOUT SYNDROMES


自分のリスニング力を悔やまざるを得ない、野太い声の英語アナウンスと和楽器の音色を織り交ぜた登場SE。新しいー。気合だなあ。


「大阪の、バーンアウトシンドロームズです」って熊谷さんの言葉。なんだか久しぶりに聞いた気がして、その響きに胸躍った。


1曲目、BLIZZARD。この曲を最初に聴けることが物珍しい気がした。予想から外れた選曲は、ちょっとしたサプライズみたいで、気持ちが昂まる。待ち望んでたバーンアウトのライブの嬉しさで、燃えるように身体が熱くなっていく気がした。トッパーのFLOW先輩の余韻もある。


SEで繋いで、ヒカリアレ。すかさずフロアを埋める手拍子が、曲の強さを物語っていた。そして、気づいた。いま感じた興奮は、FLOWのときのあのアニソンを聞けたって興奮とは別のものだって。大好きなハイキュー!!のOP曲として出逢ったこの曲は、その出逢いの特別さは根底にありつつも、彼らの曲として聴いてきた記憶がその上に分厚く積み重なっている。それを、このアニソン縛りのイベントで認識するのは、なんだか不思議な感覚だ。嗚呼、もうとっくに、BURNOUT SYNDROMESってバンドそのものが、好きだな。


熊「明けましておめでとうございます」

石「いやー、無事明けたね」

熊「無事?」

石「今年はもう明けんと思ったけど…え?もしかして、暦と一緒に明けちゃうひと?」

熊「ひとり違う世界線のひと居ますけど…異世界転生?アニメ縛りやからって…そんな…」

石「いや年ってさ、勝手には明けないのよ。明けるんだ!!っていう気持ちで明けるもんやん?俺は、今日FLOWさんのライブ観て、年明けました」

共感の拍手でフロアが反応した。確かに、新年はじまったな、って縁起のいい感じした。そんな今日は、私にとってもライブ初めだから、余計に。


「初日の出も見たくないですか。熊谷くんに言ってほしくないですか。おはよう世界って」って、素敵な石川さんのMC。年明けを告げる、Good Morning World!

「おはよう世界 Good Morning World!」のあと、高らかに響いた熊谷さんの「あけおめーーー!」って叫び。大好きなバンドとライブで新年のご挨拶ができてしまう世界線、最高だと思う。あけおめ世界。

「愛を力に変えて」のスパって右腕横に広げてそこから拳握り込む仕草、力強くて鋭くてめっちゃカッコよかった。


和楽器アレンジで繋ぐ聴き慣れてきたSEも、年明けが相まってお正月みを色濃く感じた。一味違った趣の、花一匁。

途中、思わず笑っちゃったみたいな熊谷さんの困り笑いの一瞬がぎゅんって心臓掴んできて、私も困った。年相応のお兄さんなカッコいいが続いていたところに突然、幼さを含んだ表情が飛び込んだから、掌握力が強かった。なんだあれ、可愛すぎる。特に瞳が可愛かった。そのときは歌詞間違えたか歌うとこ間違えたからだなって思ってたけど、どうやらもっと特殊なことだったらしい。知らんけど。


曲終わり、フロアに背を向けてギターの調整してる熊谷さんを「ライブの醍醐味中?新年初弦切れ?」って覗き込むように伺う石川さんもその尋ね方も、絶妙でかわいいなと思った。

弦は切れたわけではなく、1弦がズレて2弦と重なった状態だったらしい。「びっくりした。弦は切れてないのに、鳴ってくれないんだもの。1弦ないのに2弦2本あって」ってその状況を「ギターが異世界転生してました」と被せて表現するユーモアよ。あの幼な微笑みは、その転生状態に気づいた瞬間ってことでいいですか。ちょっと可愛すぎて、気持ちを持っていかれました。


弦の転生に「熱くなりすぎちゃって?」って笑ってる石川さんが「次の曲でクールダウンする?」って提案して、熊谷さんの曲振り。「クールダウンのために冬の曲を。といっても皆さんは熱くなると思うんですけど」って、とびっきり足取りを軽く、白い息を吐き出して駆け出したくなる曲、銀世界。「ぬくぬくとした暗闇 捨て 追え」が言えなくなっちゃうの微笑ましいし、でも、感嘆詞で音埋めてリカバーして器用。


石「今日は、対バンですね。物騒ですよね、対バンって、対戦バンドって呼んでるんですよ。でも今日はアニソンが好きで集まってるから初めて、これは共演だなって思いました!初めてではないかもしれんけど」

熊「いや初めてよ。いままではころす!って思ってやってました。すみませんでした」


熊「今日、クアトロなんですけど、なかなか対バンでやることなくて知らなかったんですけど、結構揺れるね。皆さんは跳んでるんで気づいてないかもしれないけど、楽屋に居て、7階やのに怖かった」

石「待って、同じこと言おうとしてるかもしれん。え?どっちが喋る?」

石川さんの問いに、どうぞって無言で譲ろうとする熊谷さん

石「合わせたのにしようや。どこ着地しようとしてる?」

熊「ゴール決めてない。ちょっとランニングするかーって家出る感覚で喋り出してる」

石「(笑)。楽屋のラックライフにも揺れ感じてもらおう。次の曲ならそれができると思うんよね」

熊「ああ、ラックライフビビらせようってこと?」

石「楽屋の床抜かそ」

熊「初抜きしましょうか」

ジャンプジャンプの一体感で、クアトロを揺らす、PHOENIX

「敵の鉄壁 砕いて」のあとに、スパンッとスパイクモーションで腕を振り下ろす仕草、最高だなあ。バレーボールにおける鉄壁はブロックで、それを打ち砕くのは、スパイカーの強烈なアタックだから。力強く拳で打ち抜くのもカッコよくて好きだけど、タイアップだからこそのアクションも最高だなあ。


「卯年なんでね、俺たちともっと飛び、跳ねてくれますか!」って石川さんの先導で、FLY HIGH!!。その曲振りが嬉しくて可愛くて、応えるようにぴょんぴょん跳んだ。年明け最初のBURNOUT SYNDROMES、最後にみんなでジャンプしようって、一斉にジャンプして、大満足の盛り上がりでした。

 

 

 

ラックライフ

 

01.風が吹く街
02.初めの一歩
03.Naru
04.リフレイン
05.しるし
06.名前を呼ぶよ

(合ってる確信はない、たぶん足りてない)


ラックライフの不思議なところは、ぶち上げ滾る雰囲気にすることも、しっとり響かせる聴かせ方もどっちもできてしまうところかもしれないと、思った。それが、曲順での雰囲気作りだけのことじゃなく、一曲一曲が両面併せ持っている感じがするの、すごい。音源とライブとの印象の違いでもあるのかな。

 

初めの一歩をアニソンって認識してなくて、あれ?!好きな曲きた?!って不意打ちでした。チア男子!!のOPでした。


どの曲だったかの間奏で「急いで座って!急いで!」ってフロア全員をしゃがませて、ギター振りかざす動作だけでウェーブ促すPONさん。ちゃんと対応できるフロアに「FLOWさんの教育がいい」って満足気にするPONさん、無邪気なのか。後にアンコールでKEIGOさんに「俺たちあのウェーブできるようになるまで丁寧に振ってきたんだよ?それをあんな、しゃがんですぐ!なんて雑に(笑)しかも動きだけで、勘弁してほしいよね(笑)。みんな最高じゃん!」って言ってました。


「FLOWさんは、酷いバンドでしょ?そろそろ膝やっちゃってるひととか出てくると思うんでね。訴えるひといたら俺らが仲介するんで、言ってください」って、トップバッターの激アツの問答無用でジャンプを煽る姿を思い出して、あれが彼らの平常なら、FLOW熱烈ファンは強靭な足腰の持ち主に違いない。


異世界シンドロームズは、異世界アウトシンドロームズはね、友だちと喋ってんのかって。石川は(熊谷さんの方を)向き過ぎやねん。下手のひと石川のおしりしか見えへん。おしりシンドロームズや」

謎の命名を授かったシンドロームズ。PONさん愉快だなあ。止めどなく喋り続けて、笑わせてくる、パワープレイだと思う。


「根っこはロックバンドなんです」「軽音部の先輩見て、あんな風になりたい!って憧れだけではじめた。それが、いろんなひとに支えられて、ライブハウスに出逢っていくうちに、バンド仲間に出逢っていくうちに、あなたに出逢っていくうちに、心が動いて、拳があがって、心が震えて」熱く熱く重ねられていく言葉の最後に、「なんかよく分からん重いものも背負ってやっています。それを幸せだと思っている」ってPONさんの言葉に、胃がずしんと重くなった。そのよく分からない重いものに私たちが含まれるなら、どうか変わらずずっと背負っていてほしい。

 

 

アンコール。まずラックライフが再登場して、自身のツアーの宣伝をした。「Because of you、あなたのおかげで、って意味。あなたの所為で、って意味もあります。あなたの所為でライブ続けてしまっています。責任取ってもらわんと。ちゃんと来てよ、すーぐ来んくなるんやで(笑)」って本音混じりに発するPONさん。これがずしんと心に刺さるんだから、きっと私はとっくに、並々ならぬ情を彼らに捧げているんだと思う。


のちに他バンドもお迎え。FLOWからはKEIGOさんとKOHSHIさんのボーカルふたり、バーンアウトからは石川大裕が登場した。

全員が共鳴レンサのTシャツ着てるなか、ひとりバーンアウトの新グッズのパーカーとTシャツ身につけていていた石川さんが肩身狭そうに「ちょっとこれだけいいですか。最後だしグッズの宣伝していいよって言われたから着てきたのに俺だけ…何も聞いてない…」って弁解してた。それを「イベントへの愛がなー」って一掃するPONさん。プルオーバーのバックプリントだと思ってたパーカー、ジップアップだったんですね。これはかわいいグッズだ。

「何で楽屋、バーンアウトが個室なん?!俺ら廊下みたいなとこで、寒くて寒くて。それ見た熊ちゃんが、『ラックライフの楽屋…なんかすごいことになってますね…』ってだけ言ってふいって通り過ぎてった」ってPONさんに、石川さんが困り笑いで「それはほんますみません、ほんま」ってへこへこ頭下げてた。「そういうのは打ち上げでやるやつだよ」ってFLOW先輩が言ってた気がする。バンド同士のわちゃわちゃわちゃ。イジられてたじたじしてる石川さんが後輩しててかわいい。

あとは、KEIGOさんが、曲中のPONさんの急なウェーブ煽りについて触れ、「FLOWさんの敷いたレールを走ってるだけ」ってPONさんが弁解してた。


「せっかく3バンド揃ってるので、カバーしたいと思います!前にしっかり4枚歌詞が貼られています。色分けまでされて」ってPONさんの言葉。お待ちかねのその日限りのお楽しみ。「海賊王に!!なりたいか!!」って叫びで誰もが連想しちゃうアニメ。こんなのテンション上がらないわけがない。選曲は、ご存知ONE PIECEから、ザ ベイビースターズで、ヒカリヘ。

イントロがはじまる中、前へ躍り出て乗り出して、OPの台詞を語り出した石川さん。わあ!なんて適役なんだ!って思った。似合うなあ。

「世界が、そうだ!自由を求め、選ぶべき世界が目の前に広々と横たわっている。終わらぬ夢がお前達の導き手ならば、超えてゆけ!己が信念の旗の下に!」

OPのあの映像、駆けている麦わら海賊団と航路を進むメリー号の画が浮かぶ。カラフルに彩られるステージの上から、お届けされるカバー曲。楽しい楽しいアニソンスペシャル。最高でした。

 

01.風が吹く街
02.初めの一歩
03.Naru
04.リフレイン
05.しるし
06.名前を呼ぶよ

en1.ヒカリヘ(ザ・ベイビースターズ カバー)
en2.℃

 

都会のラクダSP〜東京ラクダストーリービヨンド〜 名古屋day1

memo.

SUPER BEAVER

都会のラクダSP

〜東京ラクダストーリービヨンド〜

セミファイナル

2022.12.24(土) @ポートメッセなごや 新第1号展示館

 

フロアに灯っていた明かりが消え、ステージに人影が現れた。暗がりのなか、鳴る、音、激しく鳴らされるドラムが、フロアに熱気を注いでいく。上下の端、それぞれにあるお立ち台にも人影。はじまった楽器隊のセッションと眩く灯るステージライト。両サイドにある縦長巨大モニターに、柳さんと上杉さんがそれぞれでかでかと映し出されている、雄々しさとど迫力。センターバックのモニターには、藤原さん。時間を置いてステージに現れた渋谷さんと画面を二分割した。会場の規模感を鮮烈に感じる、華々しい演出。ゆっくりと歩みを進める渋谷さんが、花道の先端に立てられたスタンドマイクとの距離を縮めていく。


1曲目、東京流星群。星の煌めく夜空のような映像がバックモニターに投影されていたり、ミラーボールが光の筋を乱反射させながらくるくると回っていたり、まるで満点の星空に囲まれているよな気がして、煌びやかでとても綺麗だった。


「いまの名古屋なら、俺たちの過去最高を更新してくれるんじゃないかって、選びました」そんな特別な信頼が、ふわふわと気持ちを高揚させる。


不意打ちの特攻。大きな破裂音に思わずビクッとなってしまうのはちょっと恥ずかしかったけど、ド派手な演出がライブハウスから抜け出したどこか別の空間にいることを強調したような気がして、慣れない高揚を感じた。スペシャル、証明。


「今日が何の日か知っててきたんだよね?予定なかったの?」って、優しい声色で憐れむ渋谷さん。柳さんが語気強めにで「これだよ!これ!」って叫んでくれていて、全力でそ!れ!な!ってなりました。クリスマスイブの予定は、SUPER BEAVERのライブです。全くもって最高の予定でした。


「俺らがいつだって、明日の話をするのは、それが生きていないと訪れないものだから」渋谷さんの言葉ひと言ひと言に耳を傾けるフロアによって生じる、熱気を孕んだ静寂のなか、まるでMCの言葉の一文の続きのように紡がれたタイトルコール、未来の話をしよう。


センターバックに歌詞を投影させながらの、人として。スクリーンがないのに、後ろの壁が透けて見えたまま、文字だけが浮かんでいて、どういう仕組みなんだろうって思った。ステージ上に余分な無機物が存在していない。楽器隊の演奏が、渋谷さんの歌声が会場を浸透していて、そこに込められた想いが言葉として文字として具現化しているかのように、歌詞が空間に投影されていく。シンプルな演出が、曲の想いをどこまでも真っ直ぐに伝えていた。


「大きな会場でやるっていうのは、遠くの奥の方まで届ける覚悟があってのことです」そういう覚悟のもと、とても優しく穏やかに、会場の端々まで届けるように丁寧に、your song。


メンバーのMCコーナーは、藤原さんからで、このツアーで尺的にはいちばん長く喋ったようです。「一番手だといいのかな?」って見解に全力で否定をする姿、きゅーとでした。

続いて、上杉さん。とってもいい声いい発声で「メリークリスマーース!」と叫んだ。何度も。「クリスマスって、子どもだけじゃなく大人もこんなに幸せな気持ちにしてくれるんだなあと思った」みたいなことを言っていた気がします。

自分の順番が回ってくるのに備えて、咳払いした柳さんに、「(メリークリスマスって)言おうとしてる?そのための咳払いじゃん」って華麗なツッコミをみせる渋谷さん。予想通り、「メリーーーークリスマーース」とちょっと掠れた声で叫ぶ柳さん。「先にやっちゃっていい?」って渋谷さんにお伺いをたてて、「ブリージアーーー!」って叫んだ柳さん。あんまりピンとこなくてさわっとした微反応のブリージア席。

渋「あんまりピンと来てないみたいだけど(笑)」

柳「みんな自分のチケット確認して!あなたたちの座ってる席ブリージアだから!」

渋「その小上がりね(笑)」

柳さんを倣って、アリーナとブリージアへのコール&レスポンスで遊ぶ渋谷さん。拍手する間を与えず「アリーナ!」「ブリージア!」「ブリージア!アリーナ!」をくり返す、まるで旗揚げ運動みたいな戯れに、一生懸命応えて翻弄される楽しさ。

新しくできたばかりの、ポートメッセなごや新第1展示館。ここでライブするアーティストは、この日のSUPER BEAVERで3組目らしい。柿落とし小田和正、もう1組は[Alexandros]。そこに続いてって、いや、すごいな。


「実はもう後半戦はじまっております。両手見せて」って言葉に反応して、フロアを埋める無数の掌。そしてその手は、次に求められるものが何なのかを知っている。待ち望んでいたように、会場を埋めるゆったりとした手拍子、音の塊。そこに乗る、渋谷さんの歌声。そして、美しい日。そこから、アイラブユー、秘密。個人的に胸熱ゾーン。どれだけ会場の規模が大きくなっても、ぎゅうぎゅうにひとの熱気を感じるような環境じゃなくっても、彼らの熱が、それに呼応するフロアの熱が、相互に作用して、一瞬にしてその場をライブハウスに変えてしまう。私は、この熱気が、それぞれの想いでむせ返るようなライブハウスの熱気が大好きだなあと痛感するんだ。


「あなたの力を借りて音楽ができていることを恥ずかしく思ったことは一度もない。誇りに思ってる。俺たちもあなたを助けるし守る」そんな相互関係が成り立っていることが無性に眩しかった。いつだって熱い熱い想いを言葉にして、叫んでいる。「4人でも音楽が出来ることを知っている」SUPER BEAVERが、それでも「あなたと作る音楽の楽しさを知ってしまっている以上そっちを選ばずにはいられない」と自分たちの音楽はそれだと叫んでいることが堪らなく、泣きたいなって思った。そういう関係を美しく思う。バンドと私たちの関係性における理想に思う。頼ってくれることを、無上の喜びに思う。


「頑張っているひとに、頑張れって言わない方がいいとか、知らない。何の含みもなく、俺たちはただあなたを応援したい」

終わりがけのそんな言葉を受けて、思った。助け助けられの相互関係だと夢のような理想に心を掌握されながら、実際はきっと、私たちが希望や勇気を貰うことの方がずっと多いと思う。彼らの言葉が存在が、音楽が、私たちに生きる力を与えてくれる。私たちはきっと、どんなに伝えても伝えきれない愛と感謝を抱えてライブハウスに足を運ぶ。少しでもその気持ちが過不足なく彼らに伝わるように、 あのステージを見つめて、懸命に腕を拳を掲げ、手を叩く。

変わらずそこに、居てくれるからこそ届けられる、強く烈しいこの想い。この関係が、永遠であると願いながら、いまを大切に、未来を夢見る。

 

01.東京流星群
02.スペシャ
03.証明
-MC-
04.ラブソング
05.突破口
06.VS.
-MC-
07.ひたむき
08.名前を呼ぶよ
-MC-
09.未来の話をしよう
-MC-
10.人として
-MC-
11.your song
-MC-
12.美しい日
13.アイラヴユー
14.秘密
-MC-
15.東京
16.青い春
17.最前線

en.ロマン

Lover's Tour 東京編

ココロオークション

Lover's Tour Final

2022.12.16(金) @新宿Marble


はじめて足を運ぶライブハウスに、緊張で落ち着かなくてそわそわしちゃう感覚がとても懐かしかった。看板に「B1 新宿Marbel」って書いてあるのに地下に続く階段が一向に見当たらなくて、挙句、スタッフらしきひとに確認したら「地下ありませんよ?」って言われたときの私の混乱よ。隣の建物でした。


Marbelの建物を目にして、ROCK'N'ROLLよりもよっぽど、アンダーグラウンドな雰囲気を漂わせたライブハウスだなあって思った。ド派手にペイントされた壁に、正真正銘、地下へと降りていく階段。これがココロオークションのワンマンライブじゃなかったらきっと、もっと雰囲気に気圧されて緊張してたんだろうなって、いまになって思う。


開演して、馴染みのSEが流れ出して、メンバーが現れるのをいまかいまかと待ち構えるフロアの手拍子。登場した井川さんが、マスク外すの忘れたわーってしてて可愛かった。楽屋にぽいって投げてた、可愛かった。


1曲目、流れ出した煌びやかなSEから井川さんのフォーカウントではじまる、ミルクティー。続いて、井川さんのカウントで繋ぐ、星座線。季節感に溢れた冬の歌。テンメイさんが手拍子を煽って、軽快なリズムが即座にフロアを埋める。「君の生きてるいまが 誰かの光になる」って歌詞変え。誰しもが誰かの光で憧れなんだよって、生きていく上でのとてつもない希望だと思うから、とても好きだなって思った。


粟「こんばんはココロオークションです!来てくれてありがとうございまーす!今日が、Lover'sっていうツアーの、最終日、ファイナルです!ありがとう」

大「うぇい!」

粟「テンション高いよ、今日。作品作っててさ、みんなにたくさん愛を貰ったから、その愛を返したくて、恩返しのつもりで曲作ったんよ。で、ライブ回ってたんやけど、みんなからすごくすごく愛されてるのが分かったツアーだって、返してるつもりがいっぱい貰ってて、だから今日もうおっきい気持ちで、貰うよりたくさんみんなに返したいなって、そんな気持ちでここに立ってます。俺の歌で、俺らの音楽で、みんなをすげー幸せにしたいなと思ってる、この時間は。だから、心ゆくまで精一杯楽しんでもらえたら嬉しいです。どうかよろしくお願いします」


「Lover'sに収録されている曲、聴いてください。俺の歌でもあるけど、それぞれ、今日来てくれてるみんなの、ひとりひとりの、キミの、歌になればいいなって思います。一等星の歌」

星と星を繋いで作り出された星座線から、一際明るく輝く一つの星、一等星へ。ぐっとキミに寄り添って、キミの物語としての意味をより輝かせてくれる気がして、愛おしいなと思う。そういえば、大阪でのロックスターに憧れても星続きだったんだなって今更気づいた。サビで起こるフロアのスイングが気持ちいいなあ。


そのまま、しっとりと続いた、愛のまま。飾らない素朴さが、ありのままの姿を抱きしめるように優しくて、好きな曲。続いた曲の粟子さんのタイトルコールは、どこか頼もしげなカッコいい声で「全部大丈夫!」。この曲の、どことなくリズムとか特殊な感じするの、聴いてて楽しいから、大野式音楽室で取り上げられるのをどの曲よりも望んでる。旧譜も交えて紡がれた、愛の歌3曲に、すっかり温かい愛で包まれたライブハウスの空気、愛おしいと感じるし、ワンマンライブの幸福感っていいなあと思うし、ココロオークションが好きだなあ。


「夏のうた聴いてくれる?」ってフロアに尋ねた粟子さん。彼の人柄の温かさがそのまま声になったような、ほっこりする声色。フロアは、大歓迎と言わんばかりに温かい拍手で反応する。

弾き語りで歌い上げる、蝉時雨のはじまり。ライブハウスの照明が、夏の終わりのじりじり焼ける陽射しのようで、思わず目を細めた。眩しいなあ。

蝉時雨のベース、軽やかに弦の上を滑っていく他の曲と比較して、大野さんの指づかい、ねっとりしてるなあって思った。夏の物寂しさと汗ばむ温度感が感じられる気がする。べたべた。無意識に視線が集中しちゃったのを許してほしい。


ちかちかと散りゆく儚い火花を表現したようなイントロのSEが流れ出して、線香花火。灯る赤い照明が、いつか終わりが来ることを知っているようで、だからこそその輝きは強くいまを懸命に輝いているようで、綺麗だった。ツアー通して、夏の四部作全部聴けたのには、大満足。


とても柔らかく儚さを含んだ優しい声で「ホタルのヒカリ」って粟子さんの曲振り。そういえば、蛍は夏の風物詩だなあって、夏で繋いだ曲順の意図を見つけた気がして、嬉しくなった。

打ち込み音と井川さんのドラムがいい塩梅に絡み合って生まれるライブならではのノリが心地よい。

間奏でテンメイさんが奏でるギターリフが、なんだかとってもココロオークションって感じの音で鳴っている気がして、好きだなあ。


「愛伝わってますか?」って粟子さんの問いかけに、温かい拍手で応えるフロア。「嬉しい。気持ちいいぜ、ありがとうね」本当に、なんて優しくて心地よい声をしているんだろう。マイナスイオン、出てる。


「次は、めちゃくちゃ久しぶりにやる曲を持ってきました。その曲をリハーサルしてて、スタジオ入ってて思ったのは、ココロオークションって昔から言ってること変わらないなって思って、ずっと伝えたいこととかやりたいことが一緒で、サウンドは変わるけど、芯の部分はずっと変わらなくて、ある意味安心しました。このままでいいんやって思わせてもらった曲です。2018年にリリースした曲で、マイナーで、当時は暗い感じしたんですけど、いま鳴らしてみると、暗いっていうかは、神聖な?神秘的な感じ?やと思うんで、聴いてほしいです。みんなを音楽の深いところまで連れていけたらと思います。砂時計という曲を、聴いてください」

流れるSEと、渦巻くようなベースの生音が、音楽の深い世界へと誘っている。加わったドラムのどっしりと刻むリズムがさらに深く深くへと導いていって、ギターも加わってより深く、そこから砂時計のイントロへ。新譜の曲ももちろんどれも素敵だけど、演出もアレンジも相まって、いちばん印象に残っている曲が砂時計だった。時を経てこうして引っ張り出してきて、当時の想いそのままに、けれど練度は高く、曲を披露できることって実はとても稀有なことだと思う。変わらないまま深化していく、この安心感と高揚感。ココロオークションの魅力だなあ。


曲終わりにメンバー紹介。しっとりモードなテンメイさん、汗だくさっちゃん、うぇーいうぇーいとゆるめな大野さん。順番に粟子さんに紹介されながら三者三様の反応。最後に粟子さんの自己紹介。

粟「この4人でココロオークションでーす。幸せですね」

テ「今日もほんまに、あったかい日になってるなって思います。目を瞑って聴いてくれてるひともいれば、心で聴いてくれるひともいて、俺たちの音楽が伝わってるなって心から思ってるっていうのが…全然伝わってないような、なんか、いつものテンメイじゃない…みたいな感じの…」

粟「うん…なんか、いいこと言おうとしてるなって」

テ「率直に思ってることを言ってるだけですよ。正直にね。Lover's Tour、表現したいものが皆さんに届いてるなって、みんなと共有できてるなって思ってます。ありがとう」

粟「真面目!」

大「いやぁ、最後やからって点数取りにきてるな」

粟「いつも冒険すんのにな」

粟子さんも大野さんも「どーもーテンメイでーす」って絶妙なクオリティの声真似を披露しながら、普段のテンメイさんのテンションを再現した。前回Marbleに来たときのテンメイさんのMCコーナーは、松本伊代さんが乗り移ってセンチメンタル・ジャーニーを歌ってとんでもない空気になった、っていう思い出が語られる。布施明さんだったのは、ROCK'N'ROLLです。それなら私も見ました。1年以上も前のことだから、懐かしいって感覚になるのも自然なんだけど、時の流れは早いな…。当時あまりの空気に脚震えてたから、そのとき着てたのがスキニーじゃなくて長めのスカートみたいな衣装でよかった、と振り返えるメンバーたち。

テ「Lover'sの曲って、このツアーもそうやけど、愛しい、ですよね。愛しいの意味伝わります?抽象的やけど愛しいって言葉が合ってるツアーです」

粟「4曲とも全部、愛っていう単語が入ってるんですよ、歌詞の中に。ラバー、ズ、やから、愛する者がいるひとの、4人の主人公のオムニバスみたいな、Loverをよっつ集めた、みたいな感じ、ですかね」

大「お!そうですぅ、よぉ分かったなぁ」

粟「まだタイトル決まってないときに、大野先生にね、投げてたんですよ。こんな曲、こんないい曲できたで?って、4曲くらい集まったときに、大阪のミナミホイールっていうサーキットイベントの出番直前に、のっくんが『アルバムのタイトル決めたから、Lover's』って、お、お、おう…相談もなしに?って思っててんけど」

井「なかったな(笑)」

粟「いますごくしっくりきてて、いいタイトルだなって」

大「あー、よかったぁ」

粟「すげー反応が良くてさ、毎日聴いてますって言ってくださるひとがたくさんいて、めっちゃそれ嬉しいねやんか、俺らとしては。いまエンタメが飽和しててさ、ミュージシャンみんないい曲出すやん?俺も転調とかしたいけどさ、俺がやるべきことは何やろなって、1秒1秒大切にとか、俺はいまを大切に生きてたいのね?そういう人種やねんな?みんなにもそれを分かってほしくて、俺は音楽に救われたから、音楽で誰かを救ってあげたいなって、烏滸がましいけど、同じ気持ちになれたらいいなって気持ちでずっと歌ってて、誰かの心の中を照らせたらいいなとか。ほんと烏滸がましいけど。すげー、勇気と元気貰うのよ、いっぱい聴いてますとか。ココロオークションの音楽のおかげで毎日頑張れますとか。すげーそういうのは嬉しくてさ、それになんとか応えようと、頑張って、コロナ禍もせっせせっせと曲溜め込んで、みんなに届けたくて、作りました。届いてる?」

温かい拍手に包まれる空間に、しみじみと「嬉しいな」って粟子さんの言葉が残る。

粟「愛に溢れたツアーなんです。感謝して、こないだも言ったんやけど、いま幸せやなーって思ってる状態で生きられるのって、なかなかないと思うんすよね。俺的に、それが本当の幸せな感じがしてて、俺いま、幸せなんよ。自分の作った曲を聴いてくれてさ、今日対バンじゃないからさ、俺らだけの為に今日みんな来てくれたわけやん。人数多い少ない関係なく、俺らの曲で誰かの心が震えて、こうやってこの場にいてくれて、それが直接伝えられるって、こんなに幸せなことはないって思いながら、俺は歌えてて、それがすげー幸せです。ありがとう」

大「うん、次いくか」

粟「次いくか。今日はちょっと短めで、思い全部、喋れたから、で、さっちゃん全然喋ってないから」

井「もうええっちゅうねん」

粟「いつも、後半戦タイトルコールさっちゃんにお願いしてるから、さっちゃーん」

井「はーい。こんばんはー。なんかもっと和気藹々と談笑するのかと思ったら、そうじゃなかったね。愛、愛、愛ですごい粛々とね、愛を伝えて、いいコーナーやなと思いました」

大「なんやそれ」

井「このツアーずっとここでやってきたけど、もうええんちゃうの?やる?」

大「やってやー」

粟「みんな聞きたい、みんなってか俺が聞きたい」

大「みんな聞きたいでしょ?」

大野さんの問いかけに、拍手喝采で返すフロアに、意を決した井川さんが、裏声で話しはじめる、一人二役のさっちゃん劇場。

裏「なあなあさっちゃん、なあなあさっちゃん」

井「どうしたんや?」

裏「とうとうLover's Tourファイナル、新宿Marbleだね!さっちゃん楽しかったかい?みんな楽しかったかい?え?僕が誰かって?!僕の名前はミッキーマウス!」

大「いや違うやろ(笑)」

裏「このLover's Tour 4本ともフル出演してる、ココロオークションの大切なメンバーさ!」

大「ミッキーメンバーなんや!」

粟「めっちゃ強いやんスポンサー」

大「全通してたんや」

裏「そうだよ全通したよ!最初はただのいちファンのつもりがメンバーになっちまったぜ」

大「ああ、ユニコーンパターンや」

裏「ココロオークション、夢を分け与えられるバンドだなと思ったから、僕も力を貸したくなったんだよね」

大「わあ、ありがとうー。働けよちゃんと、仕事いっぱいあんねんから」

大野さんの鋭いツッコミに喉をやられて咽せる井川さん。ファイナルにして枯れる喉。頑張れさっちゃん。

裏「僕がここでさっちゃんの代わりに魔法の力を使って次の曲盛り上げることをやってたんだけど、今日はさファイナルじゃん!だから今日はさっちゃん、君が魔法の言葉を使って後半戦、盛り上げていったらどうだい!」

大「いや、あの、ずっとさっちゃんやけどなあ(笑)」

井「でもなぁ、俺関西人やから、東京のひとって冷たいイメージが拭えなくてですね、すんのちょっと怖いわ」

裏「なんでや!!」

大「関西弁や(笑)」

裏「さっちゃんがここで頑張ってアホみたいなタイトルコールするから、次曲が盛り上がるじゃないか!僕はあれ、好きやで!」

大「ミッキー好きやでとか言わんで」

裏「なに日和ってんねん!」

大「ミッキーなに日和ってんねんとか言わんねん」

井「じゃあ最後、ミッキーマウスじゃなくて、さっちゃん、やるぜ!」

裏「さっちゃん、新宿ではじめてツアーに来たひとが何が何だかわからないって顔してたよ、いま」

井「そこはみんな、察してくれ」

大「今日、配信もされてるからな」


そうして開幕、さっちゃん劇場第2部。井川さんによるコールアンド拳あげレスポンス。ちゃんと「ここで腕を挙げる」ってこっそり教えてくれる優しい仕様。途中、「頑張れさっちゃん!心折れるな!東京のひとみんな優しいぞ!」ってミッキーからの励ましを受け、「キャンニュー フライー?」のかけ声で腕を挙げたフロアがひとつになる、笑顔の一体感。ゆるいと表現するにもしっくりこないような、独特な空気感の楽しく愉快な煽り、それをニコニコしながら楽しく受け入れて、あまつさえ待ち望んでいる状況って、やっぱり愛だよなあって。いつの間にかさっちゃん劇場の虜だ。好きって感情が全て。


勢いをつけた「聴いてくれ!フライサイトー!」のかけ声から颯爽とキレのいい動きでSEを鳴らすさっちゃんの、ミッキーモノマネ声でのフォーカウントからの、フライサイト。粟子さんの歌い出しと共に、軽快な手拍子が瞬く間にフロアを埋める。テンションを高める良質なロックチューン。曲中、テンメイさんの「愛してるよー」って熱烈な叫びが飛んだ。


テンションハイの流れのまま、夢見た場所へ何処までも飛んでいけそうな軽やかさを引き継ぐように、カウントで繋いで、ハンカチ。運命の出逢いをしてしまった瞬間から足取りは軽く、音源からアレンジされたテンメイさんのギターソロ、わくわくする。


「みんなまだまだいけますか?聴いてください、火花!」

「君のそばで光るよ」って歌ったあとの「ずっと」ってフレーズ、力強さと美しさにじーんときちゃうなあ。イヤホンのなかの音楽は、どんなことがあったってずっと生きている。


「超幸せだった。次で最後の曲です。Lover'sを作って思ったことは、さっきのMCで言っちゃったけど、改めて、俺らすげー恵まれてるなって、愛されてるなって、思いました。思ったのは、みんな、それぞれが何かのLover'sやと思うねんな。俺は音楽好きになって、中学校のときちゃんと意識して音楽というものに出逢うまでは、灰色の人生というか、ちょっと陰キャ寄りの普通の少年というか、でも音楽に出逢って、こんな素晴らしいものがあるんやって、ありきたりやけどそっから世界が違うように見えたんよ。みんな、音楽好きになって、俺らのこと好きになってここに足を運んでくれてると思うんやけど、それってね、すげえ才能やと思うねんな。何かを愛したことがあるひとは、きっと他の色んなこと全部愛せると思うねん。すごい感受性が豊かで、他のひとには見えへんもの、音楽って目に見えへんやんか。見えへんものに気づける才能があるんだよ、みんなは。それが俺すげえ嬉しくて尊くて、この世界には、愛がたくさん溢れてるんだよって伝えたくて、僕らは愛の中って曲を書きました。悲しいこととか多いけど、いっぱい愛で、この世界は溢れてるよって、希望を持って、みんなに届くといいなと思って、書きました。最後、歌います。僕らは愛の中」

嗚呼、いいなあ、僕らは愛の中。目には見えない大きな愛で包み込まれるような感覚にしてくれる、粟子さんの言葉にじーんとした。自分が音楽が好きな理由を、ライブハウスに足を運ぶ理由を言い当てられてしまった気がして、思わず溢れた涙。私にも、心から好きだと思えるものがあることが嬉しくて、心が動くことが嬉しくて、それを実感できるのがこの場所だから、こんなにも夢中になっているんだと思う。


アンコール。暗転のなか、楽屋から飛び出す人影が、フロアの後ろにある物販コーナへ颯爽と駆けていく気配を感じて、あ、グッズ取りに行ってるのね、って、小さな箱のこういう距離感の近さが不思議な感じだなあ。そんなさっちゃんの愉快なグッズ紹介。「今回のLover's Tourといえば、さっちゃんのミッキーやろ」って。

来年、どんな曲を作ろうかって、「どんなんにしよー?どんな曲がいいですか?言っていいよ!はい!はい!はい!」フロアに意見を求める大野先生。手の挙がらないフロアに痺れを切らして、「ほなら、レディーガガみたいなのにすんで?」っと冗談混じりに意気込む大野さん。踊れる曲作るわ、って言いながら「踊っても来てくれる?」って確認するの、絶妙に可愛いなと思う。歌いながら踊る曲、ステップ踏む曲作りたいなあ、って言う大野さんに、「絶対ダサいやん。俺ら運動神経ないから音楽選んでんねん。ずるない?運動できるのに、顔カッコいいのに、音楽すんの」って卑屈さ発揮する粟子さん。ダンス部は美男美女が揃っていて、スタイルもいい、って羨望を語る。「ダンス部おる?おらんやろ!ダンス部ココロオークションのこと嫌いやろ!」って、大野さん。大野さんの声とか喋り方って不思議だなあ。キツめの言葉使っててもどこか可愛げがあるというか、癒し要素があるというか、粟子さんとはまた違う柔らかさがあって、語気に棘がない。好きなとこ。「めっちゃ青春してるから、夏の四部作とか観て来てくれた子はおるかも」って粟子さんのフォローに、満足そうに「ええ子やん…」って納得するとこも、癒し。

「まあ、変わらず心込めて歌うわ」って、締めに向かう粟子さんのひと言。ココロオークションが出す曲なら、どんな曲だってきっと素敵だと思う。インタビューとかで、他でもない大野さん自身が「粟子さんが歌うとちゃんとココロオークションの曲になる」って言ってるの、幾度となく聞いてきた。


最後、特大の音楽への愛を放つ、ヘッドフォントリガー。「くらえー!」ってフロアに吠える粟子さんが、「Marbleのスーパーシューター」って歌った。その土地土地の特別が、心臓を撃ち抜いて、夢中にさせる。

粟子さんの顔に寄ってってギター見せつけるテンメイさんとそれにがうがうって噛み付く動作する粟子さん。粟子さんから反応あるの、何気に珍しい気がして、そわっと心臓が高鳴った。かわいいワンシーン。

テンメイさんと大野さんの掻き鳴らし合いは言わずもがなカッコよくてカッコよくてカッコよくて、ヘッドフォントリガーの見せ場のひとつで、テンションあがっちゃうところ。

掻き鳴らし合いを終えて上手に戻るテンメイさんの身体に当たらないようにするために身体傾けてマイクに声乗せる粟子さん、それをテンメイさんが屈んだ姿勢のまま絶妙に避けながらじわーっと持ち場に戻っていくとき、注意深く粟子さんに視線送ったままで、とても繊細な動きだった。演奏しながらだから、単純に素人意見だけどすごいなあって思う。絡まったシールドをふたりで元通りにする共同作業は、阿吽の呼吸、個人的にハイライトだった。Marbel、縦幅結構狭いのかな。


書き残すために、幾度となくアーカイブを聴いた。その度に、配信のクオリティにも感動した。ほとんど編集のないライブ音源を、それこそ再生ボタンを押す感覚で違和感なく聴けてしまうの、彼らの地力の強さを物語ってるようだなあと、思う。ココロオークションって強い。


愛いっぱいに満たされた気持ちと、もっともっとと求めてしまう足りない気持ち。カッコよすぎるが故に、好きだと思うが故に、欲張りになってしまう。ほとんど衝動的に突発的に、可能な限りを追いかけたLover's Tourは、ココロオークションが好きだなあ、って気持ちをより強固にしてくれた、そんなツアーでした。

 

01.ミルクティー
02.星座線
MC
03.一等星の歌
04.愛のまま
05.全部大丈夫!
06.蝉時雨
07.線香花火
08.ホタルのヒカリ
MC
09.砂時計
MC
10.フライサイト
11.ハンカチ
12.火花
13.星の傷
14.景色の花束
MC
15.僕らは愛の中

en.ヘッドフォントリガー

Good Morning [New] WORLD TOUR 日本凱旋公演

BURNOUT SYNDROMES

Good Morning [New] WORLD TOUR FINAL

2022.12.08(木) @Veats Shibuya

 

朝、平時と比べると比較的早い時間に目が覚めた。いつもならそこで寒さに耐えかねてもう少し…と布団に潜るところを、高揚した気分のままゆっくりと身体を起こした。おはよう、世界。遂に、来た、この日。愛するBURNOUT SYNDROMESのワンマンライブの日。米国、南米、中東と様々な国からの招待を受けて、世界を飛び回って、まとめてGood Morning [New] WORLD TOURと銘打った、そのファイナルに位置付けられた渋谷での日本凱旋公演。

東京往きのバスに乗り込むために足取り軽く駆け込んだ地下鉄は、平日の出勤時刻に重なった。スーツ姿の人物が大半を占める車両内で、私だけが異質なような気がして、こんなに幸せでいいんだろうかと、背徳感混じりの高揚感で落ち着かないでいた。


どこまでもどこまでも、楽しみな気持ちで、待ち遠しすぎて、長く長く感じた待ち時間の末、ようやくの開演。大好きな彼らの登場を想像して拍手喝采で迎えたところに、スクリーンに流れ出した映像は、海外でライブを行ってきた彼らの軌跡だった。アメリカサンゼノでのCrunchyroll EXPO 2022からはじまり、地球の裏側である南米アルゼンチン、会場とホテルが一体型のアトランタ、ロサンゼルスでの対バンイベント、ポートランド、急遽のサウジアラビアでのJapan Anime Town。各地でのライブ映像や意気込みコメント、オフショット。映像よりも実物の彼らに会いたい気持ちのが強くて、何だかとっても焦らされた気持ちになったけれど、同時に、ちゃんと撮影して残してくれてたんだなあと、嬉しかったというか感心したというか安心したというか、全てはこの映像の為に秘密裏に動いていたのだ…ってことですか、って勝手に納得した。熊谷さんがTwitterに投稿してたソログランドキャニオンとか、フレームの外側にちゃんとメンバーが一緒にいたんだなあ。そういうのさ、ファンクラブに入り続けるようなファンが求めてるものって、そういうのさ。ねえ。

これは、完全に余談ですが、旅立つために飛んだなら、ちゃんと着地する映像も撮らなきゃ…って個人的には主張します。

アルゼンチンのファンのコメントには、ちょっと興奮した。「ネットの日本のバンド紹介してるサイトでバーンアウトのこと知った」って、アニメで知ったじゃないんだ!そういう出逢いもあるんだ!嬉しい!

アニメタウンのネオン看板に、『牛丼サンバ専門店』って文字を見つけて、頭の上にはてなが浮かんだ。牛丼サンバとは。しかも専門店、とは一体。

そして、突如、前触れなくはじまった世界を回せの歌唱。聴き慣れないその歌声が廣瀬さんのものであることに気づくのに少しだけ時間を要した。スクリーンには、アメリカの広大な大地で車を走らせる廣瀬さんの横顔の映像。じわじわと笑いと手拍子がフロアを埋めていった。


彼らの旅の記録を流したオープニングムービーが終わり、回転するようなフィーバーサウンドのなか、流れたエフェクトボイスのアナウンス。

Ladies and gentlemen, thank you for coming BURNOUT SYNDROMES' live.

Now stand up our music show. Are you ready?

颯爽とステージに現れたメンバーは、それぞれが日の丸の国旗を手にしていた。どこか愛おしげに国旗を羽織りながら登場した石川さん、上手お立ち台に登るや否やフロアに見えるようにすっと日の丸を掲げた廣瀬さん、片手に握った国旗を軽やかに振り回しながらフロアに手拍子を煽る熊谷さん。


待ち侘びたメンバーの登場に、勢いを増すフロアの手拍子。エフェクト混じりの声がくり返す「おはよう世界」と「Good Morning New WORLD TOUR」のアナウンス。高らかなツアータイトルコールが、開演を告げた。

Good Morning New WORLD TOUR twenty twenty-twooooo!!


「おはよう世界!Good Morning Shibuya! We are BURNOUT SYNDROMES from Japan Osaka!」英語で叫びながら、小指から指折り丁寧に握り込んだ拳を高々と掲げた熊谷さんが歌い上げるのは、もちろん、Good Morning World!。「おはよう世界 Good Morning Worrrrrrld!」力強い歌声がライブハウスに響き渡った。嗚呼、この瞬間をどんなに待ち望んでいたか。じーんと浸る隙さえなく、「Let's fuckin' go!!」の煽り言葉。熊谷さんの口から出るFワード、なんだか無性にそわっとしなかった?私はした。とても。


曲終わり、間髪入れずに、周波数の合わないラジオみたいなノイズ混じりのコーラスが流れ出す。エフェクト加工されたそれは、けれど徐々に聞き馴染みのあるフレーズになり、次の曲を告げた。おはよう世界で迎えた夜明け、昇った朝日の、ヒカリが、そこにはあった。

「世界中でみんながこの曲を合唱してくれていました。ヒカリアレー!」

彼らが海外でどれほどの歓声を浴びてきたのか、オープニング映像でも、溢れかえるSNSの情報でも、知ってしまっている。そのエネルギーに負けない熱をわかりやすく届けられたらどんなに幸せかと悔しく思う気持ちは未だに拭いきれはしないけれど、割れんばかりの歓声を浴びて国外のステージに立っていた彼らのことをそれはそれは誇らしく思う。それに、BURNOUT SYNDROMESが大好きだってことと、いまこの瞬間、ライブで逢えるこの時間をとてつもなく楽しみにしていたことは、どう転んだって事実でしかない。どうか伝わっていてほしい。いま、あなたたちの目の前にいるのは日本の私たちだという事実を、その熱気を彼らに知らしめたい。「渋谷のあなたに!ヒカリアレェー!」って叫んだ熊谷さんの言葉に空いていた穴が少しずつ埋まっていくような気がした。


「Hello, everybody! 楽しむ準備できてますか渋谷ーー!もっともっと俺たちとバイブス高めていきましょう!そう高く高く!上に!上に!」って石川さんがキメた曲振りで、次の曲を察する、エレベーターガール。熊谷さんのライブアレンジされた歌い方が耳に残る。「きょりっかーん」が特に、特に好き。何だかとっても挑発的だ。曲の終わりと恋の終わりを告げるように、シンバルの乾いた音が鳴って、その余韻が響く間はなかった。


熊「今日はグッドモーニング ニュー ワールドつやーー、つやーつやーつやー(笑)」

石「おいおい(笑)お前発音良くなりすぎや」

熊「TOUR!にお越しいただきありがとうございます!ソールドアウト御礼です。どうですか」

石「いや本当に……っただいまって思ったね」

熊「結構我々恐れてたんですよ。久々にこの、ホームカントリーでやることによって、結構、だらっとした感じの演奏になってしまうんじゃないかって」

石「最初からバキバキやったね」

熊「世界でいちばんバキバキでしたね」

世界での演奏環境がなかなかになかなかだったって思い出話。スムーズに進みすぎるこの日のリハーサルに「スタッフできすぎて困ります。緊張感ないです」って熊谷さんが逆ギレしたエピソード。

熊「世界なんてだいたい音出ないですからね。6時間やって音一個も出ないときのアーティストの気持ちわかります?」

石「熊谷くんが、客席で鎮座してたやつ」

熊「オープニングの映像のね」

石「あれが、6時間中の熊谷くんです」

熊「あれしかやる事ないんだもの」

石「よしっ帰るかぁ、って言ってました」

熊「僕ら出ないですよぉ?音出なきゃ出ないですよぉ?って。今日のやりやすいこと」

石「それもみなさんのおかげですー」


石「やー上手なったね、日本語」

熊「だいぶ練習した」

石「ずっと英語ばっか喋ってたから」

熊「君もさっき、母国語出ちゃってたね。そういうのよくないよ、ちゃんと現地に合わせないと」

石「現地に合わせます」

熊「でもせっかくなんで、英語でちょっとやりますか」

石川さんをやんわり諭したかと思ったら、英語でやろうって提案する熊ちゃん、なかなかの手のひら返しでクスッときちゃう。

石「こっからね、よーい、はい!」

熊「Can I introduce my member?」

石「Oh, yeah!」

熊「Bass.Taiyu Ishikawa!」

熊谷さんからの紹介を受け、揚々と英語で話し出すいしかわたいゆーの英文チョイス、多分だけど、教科書英語から離れて日常使いするようなやつなんじゃないかな。聴き馴染みがなくてニュアンスも汲み取れない…語学が堪能になりたい。熊谷さんに「あんまキャッチボールになってなかったよね」って言われるのも仕方がない、はず。私の語学が堪能でないばかりに…仕方がない。

熊「And Drams.Takuya Hirose!」

廣「I'm happy to be with you! Thank you!」

石「彼の何がすごいってこの一文で乗り切ってきたことです」

廣「各国これだけで」

熊「手抜きではぁ?」

石・廣「「違う違う」」

石「大事な一文に込めてるよ」

廣瀬さんと一緒になって否定して、フォローする石川さん、なんか好感度がじわっと上がった。

熊「あと未だに私には何て言ってるか聞き取れん」

廣「アイム ハッピー トゥービー ウィズユー センキュー」

石「あなたと会えて嬉しいよ、って」


石「And Gt.Vo.and compose all songs. Mr.Kumagai!」

熊「My name is Kazuumi Kumagai. Nice to meet you. Love you♡ love you♡ mmmwah♡  mmmwah♡ love you♡ mmmwah♡ Yeah!」

らびゅーらびゅー言いながら指ハート乱れ打ち、んーまっんーまっしながら両手で投げキッスで分断に愛を振り撒く熊谷和海。なんてこった!これはさあ!ほんっとさあ!解釈違いにも程があるよ熊ちゃんはこんなに陽気じゃない、熊ちゃんはこんな…こんな…あーもう好き。ありがとうございますご馳走様です。ありがとうございますありがとうございます。

石「彼もこの一本でやってきたから。愛だけで乗り切ってきたから」

熊「これでギャラ貰ってるから」

石「意外とね、どの国でもウケんのよな」

熊「なんでやろ、みんなトムとジェリー好きなんかな」

石「オマージュがそれなん?」

熊「chu♡ chu♡ chu♡ love you♡って、トムとジェリーでしか英語のイメージない」

高速投げキッス連打のその仕草。ちゅーってなったお口。本当にもう、ありがとうございます。いいぞ、もっとやれ。

石川さんが「日本に生まれてよかったなって思います」って話しはじめて、海外のひとはアニメ好きだから、日本にも親しみを持ってくれてるってお話。挨拶にしても、こんにちはとかじゃなくて、元気な「お疲れさまー!」って声が飛んでくる、っていう体験談。熊谷さんが「日本語でgoodbyeはさよならじゃなくて、お疲れさまよ」って言ってた理由、いまだから分かる。熊ちゃんのこの発言は、演出側だから出た、ほんのりネタバレ発言。


BURNOUT SYNDROMESには、ジャポニズムな曲がたくさんあって、それが、「ここにきて他のアーティストさんとの差別化」が図れていて、「和楽器入れるんだねっていうのが評価され」たって説明を通して、「逆輸入してもいいですか、日本の皆さんに。みんな正直ちょっと三味線とか興味ないやろ。あかんでちゃんと聴かな。日本の魂の音、みんな意外と大好きなんです。盛り上がってくれますかジャパニーズ!」って熊谷さんの曲振りから、BLIZZARD。コマ送りのような所作で、踊り乱れる熊谷さん。

「焼かれて焦がれて」って歌いながら、ギターボディを抱き込む手つきの恭しく艶めかしいこと艶めかしいこと。そのまま左手がスーッとネックを上へと滑っていくのなんて、なんて扇状的な仕草だろう。眩暈がする。微アレンジのギターソロは、気持ちをそわっと高揚させた。


「寒いこの季節にぴったりな曲をもう一曲聴いてください。銀世界ー!」

「Let's go」ってアメリカ気触れの勢いのよい石川さんの先導に、増していくフロアの熱気。軽快に轟くように微アレンジされたギターリフが、軽やかに嘶くように素敵に鳴っていた。

「君は春風 道拓く者」っていう言い回しの歌詞変えがとても素敵に響いた。


三味線と尺八の響くSEからはじまる花一匁。雅な雰囲気のSEをバックに、歌い上げる熊谷さんの「花一匁」の「はー」って鼻に抜ける発声が美しくて美しくて美しくて惚れ惚れした。緩やかに振り下ろされる両掌を合わせた手刀。丁寧に正確に、ピッチを取ろうとしてるかのように上下する手も美しくて気持ちがそわそわと擽ったい。

「日本古来の遊びの歌です。一緒に遊びましょう。花一匁」

フロアを指差し、爛々とした瞳で頷きながら、「欲望を隠しもせず」って歌う熊谷さん。好きで好きで仕方がない存在のあなたたちに向ける私の瞳は、さぞ欲望まみれでギラついていて、その姿は決して、美しさや儚さだけではないことでしょう。そんな姿ひとつひとつを指差し確認するような仕草が、まるでそんな姿こそを望んでいたのだと言っているようで、醜さもなにもかも享受してくれてるような心地にさせて、堪らなかった。

「素晴らしい遊びっぷりでした」


尺八鳴り響くSEのなか、石川さんが叫ぶ「踊ろうぜ!」「日本のお祭り、若草山!スターマインー!」勢いよく、どん!っとはじまる祭囃子。TREASUREのときは、熊ちゃんちゃんと二人羽織で難解フレーズ弾いていた気がしたけど、弾くときと弾かないときの違い、なんだろうなあ。単純に曲数かな。配信、全く手元写してないのいっそ笑っちゃう。


祭囃子が遠ざかって、熊谷さんが楽器を置いた。Oceanくるのかな?って頭の片隅に浮かんだ予想を否定するように、チャイニーなSEが流れはじめたときの、歓喜。まさかまさか、また熊谷お兄さんと遊べるなんて思ってなかった!フロア大歓喜な、国士無双役満少女。「日本の曲と言いつつ、中国大陸の音も、持ってきました」って、ハンドマイク握る右手と揚々とスイングする左腕。体幹はほとんどブレず、どこか優しげにふわふわと左右に振られる腕が無性にかわいい。

2番Aメロ、前屈みの姿勢で片足お立ち台に乗せてタンタンと激しくリズムを刻む様が一心不乱で、魅了された。

「Once again!!」って、スイングの振りを促す英語煽り、濁点の濁り方とかアクセントの付け方とか絡む無声音とか、好き好き好き。熊谷さんの発声、発音、抑揚、英語だろうと何だろうと、心を擽る。

間奏で、石川さんと向かい合わせでくるくる回る熊谷さんが、SEの音色に合わせて弦楽器演奏するマイムしてるの、推し。

曲終わり、体幹の良さを感じさせる後ろ蹴り、からの武闘家スタイルで拳と掌を合わせての「謝謝」と挨拶する熊谷さん。


熊「ていう感じでやっておりましたー。楽しんでいただけましたでしょうかー。ありがとうございます」

石「意外とこう、中国の音もね」

熊「そうそうそうそう」

石「フーー!ってなるよね」

熊「分からへんから、あっちのひとには」

石「アルゼンチン行ったときはね、楽屋にはもう、あのー、韓国のお菓子ばっかでした」

熊「そうそうそうそう」

石「美味しいすけどね」

熊「一緒くたにされちゃって」

石「ダブルで楽しめるっていう」

熊「そうそうそう、いっぱい思い出ありますよ」

石「思い出しかないよ。誰もパスポート無くさんかったことだけが奇跡やと思ってる」

熊「すごかったよねえ」

石「ほんまに奇跡やと思ってる」

熊「熊谷何回ワクチン接種証明書忘れたか」

石「ふふふ」

熊「その度にデータを漁ってもらって…すみませんでした」

石「やっぱアルゼンチン帰りかなあ、俺は。絶対帰りたい廣瀬と、別にどうでもいいふたり、この対立が」

熊「はいはいはい」

廣「そうだね。帰れなくなったんですよね僕ら一回」

石・熊「「そうなんですよね」」

廣「あのー、何かチケットに不具合があって、帰れなくて、で、ごねてごねてごねまくったら、なんか、たまたまいけた、みたいな。向こうのひとがちゃんとした書類を準備してくれて、いけました」

熊「いままで見たことないぐらい速く動いてました。こんなこいつ速く動けるんや」

石「そうそうそう、すごかったよねえ」

熊「すごい速さでした」

石「アルゼンチン中の病院調べてたもんな」

熊「そうそうそう。なんかその接種証明みたいなのが不具合があったらしくて、ワクチンのね。国行くたびにその国で打ってるんですけど我々。石川くんと私は別にアルゼンチン永久在住でもって」

廣「僕は早く日本に帰りたかった」

石「飯が食いたくてね」

熊「動きを止めるフロントマンと、誰よりも速く動くドラムがいましたね」

石「俺らコーヒー飲み行ってたもんな」

熊「うん。コーヒー飲む?一旦コーヒー飲む?つって」

石「いやーでもねやっぱアルゼンチンずっといなくてよかったです。やっぱ帰ってきてよかったなって、今日はじめて思いましたね」

熊「そうやね!思いましたね。結構ね、今日不安やったんですよ。ちょっと言うのあんまあれですけど、各国の人たちエネルギーやばいんすよ。あいつらうるさいんですよ。アルゼンチンのひとなんか、もうカルチャーショックですよ」

石「あれすごいですよね」

熊「この、この時間あるやないですか。ぐだぐだした、この時間あいつら暇だから何すると思います?」

石「この時間僕らの時間じゃないですからね」

熊「そうそうそう。あいつらがサッカーの応援歌歌う時間なんですよ」

石「そうそう肩組んで」

フロント陣ふたりで揺れながら歌い出す、WE ARE THE CHAMP~THE NAME OF THE GAME~ 、オーレーオレオレオレーっと輪唱に合わせて廣瀬さんが添えるバスドラの音。

熊「そんで廣瀬もいまみたいにキック踏み出すんですよ意味わからん。ひと喋ってんのに(笑)一生懸命スペイン語で喋ってんのになんかオーレーオレ言い出すんですよ。意味わかんない」

冗談混じりに面白おかしく語られる思い出話。

熊「割とその、現地の人たちのパワーに助けられてたみたいなとこあるんですけど、それに対してこの、日本の人たちってどうやったなかあって不安やったんですけど、全然大丈夫だった」

石「大丈夫どころかよ。今日ですね、全世界に配信しております」

熊「そうなんでです。皆さんのパワフルなねえ、やーもう、パワフルな姿がたぶん、全世界に出てますよ」

石「我々ねえ、めっちゃ、インタビューとかでも言ってたんですよ、日本の、ファンの皆さんの、凄さ、知ってほしいですって。インタビューとかでも答えてたんで、今日、皆さんがこうね一つになってるところは、全世界に見てもらえてると思うんで、本当に僕たちの誇りです。ありがとうございます」

熊「我々もう楽器置いてもうてるけどもうひと喋りくらいする?」

石「いやもう、だってさ、さっきのとこちょっと濃かったやん」

熊「あの、ゾーンがね。6曲ぐらいやるからね」

石「次の曲もすんげぇ濃いと思うんだよねぇ」

熊「休憩したい?んや?(笑)もうひと喋りくらいする?」

石「休憩したい。おニューのズボンがズレんのよねー」

熊「わかるー!衣装変えたてやとね、もう、これなんか、試着したときはカッコいいーと思ったけど今日着てみたら丈短い短い」

石「あははははは」

熊「ギターに被る被る。直す直す。出る出る」

廣「神技で直してたよね何回も(笑)」

熊「直す出る直す出るよ」

石「靴紐解ける解ける。こんなん海外で一回も解けへんかったのに。皆さんのせいですよ」

熊「盛り上がりすぎてね」

石「皆さんのおかげでした。ありがとうございますもう」

熊「やっぱ新しいこと、ニューなものってのはこういう風にね、わけわからんこと起きるんすよ」

石「まーでもあれですね、あのー、本当にーこう海外にこう行くとね、なんか扱いっていうんですか?待遇というんですかね。結構とんでもないんですよね」

熊「それはどっちの意味で?」

廣「とんでもないとは?」

石「あのーいい意味でね」

熊「いい意味で!」

石「あのー悪い意味やと思ってました?」

熊「まあまあまあまあまあまあ」

石「そらぁ文化の違いはありますけど、根本的なんはこうね、ある種こう、すげえヤツやなあ、すごい来てくれて…外タレって感じで扱ってもらえて」

熊「外タレですねぇ。今日我々は内タレですからね」

石「お前、日本のアーティストのこと内タレって呼んでんの?(笑)お前だけやで多分世界で(笑)。内タレはやっぱ大人しくしとかなあかんと思うけど、海外でこうね、日本の皆さんが応援してくれて、海外行けて、イキってたこう、僕らをですね、今日はちょっともうちょっとこう、熱く!お見せしたいなあと」

熊「ほうほうほう。イキってるのを熱く?」

石「イキってるっていうか、まるでそう、ちょっと」

熊「何が言いたいんやお前は」

石「まるで、ちょっと」

熊「日本語忘れてもうてるやん」

石「もう!はよギター持てや!!」

つい先程、もうちょっと休憩したいと言ったその口で、早く楽器持てって急かすいしかわたいゆーも、なかなかの手のひら返し。

熊「そうか曲振りやったんかいまの!全然分からへんかった」

石「なんでやねん!リハで何回もやったやんこれ(笑)」

熊「せやっけーもーねー」

石「楽しくなりすぎちゃう?」

熊「スケールが上がってしまいましてねぇ。30分くらい喋っててもいいんじゃないかって。それはダメですね。ちゃんと曲やりますから…で、何の話やった?いまの」

石「いやだから!海外こうさ、飛行機でひゅー!飛んで行くわけやんか!わわー行くやんか!ほんなら俺らはもう、まるで!ヒーローみたいやな!って俺は思うんやな!」

熊「そうヒーローみたいな扱いしてくれるんですよね。それがなんか不思議な感じ、するんですけど、そうやってこう、いま見てくれてる皆さんもそうだし、海外の皆さんもそうだし、なんかちょっとでも元気になってもらえるといいなと思って、このツアー、ひとつ目標にして回ってました。今日もそう思ってます。ちょっと元気になって、帰ってくれるといいな。あなたを元気にするヒーローでいたいと思ってます。聴いてください、Wake Up HxERO!」

紆余曲折のMCの末辿り着いた、愛と希望の特大スケールの曲、Wake Up HxERO!。サビで、数色の原色ライトがくるくると交差するライティングが、待ち侘びたヒーローの登場を演出した。


暗転のなか、エレキギターからアコースティックギターに持ち替えて、「せっかくなんでバラードも1曲。君のためのMusic」日本語でゆったりととった「いち、にー、さん、し」ってカウントが好きだなあ。

じっくりと聴きいる熊谷さんの歌唱パートと、揚々と腕を掲げてノリよく身体が動いちゃう石川さんのラップパート。大好きな曲の一つ。石川さんのラップパートに重ねる熊谷さんのコーラスも、好きだなあ。


熊「なんていうかあれですね。はじめてこう、見てもらってるみたい」

石「はじめて?あんた何年やってんのよ」

熊「今まで何度もワンマンライブやってきてるけど、今日はどれともちょっと感触が違うんですね」

石「わかるよそれ」

熊「わかる?」

石「みんなはどうなん?はじめましてな感じします?変な質問か(笑)ぶっちゃけ、はじめて我々のライブ来たよーって方、どれくらいいらっしゃるんでしょーか」

問いかけに挙手で主張するフロアに「待ってたよーあなたが来るの待ってたよーずっと待ってましたよー」ってひとりひとりに目線を合わせていく石川さんの優しい声音。

日本を飛び出して、長い間物理的に遠いところにいたが故にか、単純に初参戦が多いという理由だけではないような、普段の国内ワンマンツアーのアットホームな雰囲気とは少し違った、緊張感を感じているのかなあと思った。

「これで大丈夫ですか?」って確認作業をしているような状況を「一回距離を置いてリセットされる男女の関係」と例えた熊谷さん。相手の顔色を窺うような緊張感は、ある種の遠慮のような気もして寂しさもあるけれど、距離を置いて互いを見つめ直した末の結論が、関係を継続させたい、好転させたい、っていう想いに着地するから生じるシリアスな緊張感なのだとすると、なんて言い得て妙なんだろうと思う。

 

「じゃあせっかくなんで、オリンピックで流れたあの曲やります。拳上げれますかって煽りを毎回やるんですけど、それを英語で、Hey guys, can you raise your fist? OK,beautiful!」熊谷さんに先導されて、フロアを埋める固く握った拳ではじまる、PHOENIX

平常通りに、掌底で表現する「敵の鉄壁」と、「砕いて」で、やんわりバレーのアタックの仕草で右手を打ち下ろす、初めて見るアクション、堪らなかった。嗚呼そう!そうなの!バレーボールにおける鉄壁を砕く動作は、正しくそれなの!


そのままノンストップで突入する石川さんの煽り文句「おいおいおい、まだまだまだイケますよね。音の波にしっかり乗っかってこうぜ、だいじょーーぶ!We are Melodic Surfers!!!」

掲げた掌の緩やかなスイングでフロアに作るでっかいでっかい大海原。おお、すげえって表情で感心してる熊谷さんが愛らしくて、歌唱パートに向けての真剣な顔への切り替わりは堪らなく素敵で。


「僕たちを海を越え、アメリカに、アルゼンチンにサウジアラビアに、連れて行ってくれた鳥の歌があります!僕らと一緒に飛び上がってくれますか、渋谷ーー! Can you? Can you fly high with me Shibuya? 聴いてください、フライハイー!」

「心の中でもいいから、大声で歌ってね」酷く優しい声音で熊谷さんがそう言ってくれるものだから、声を出すことに、それをできる環境に不安を抱いてしまう自分のことが、少しだけ肯定された気がした。


Thank you for your time today and japanese "SAYONARA" means good-bye.

SAYONARA Tokyo Shibuya.

SAYONARA Good Morning New WORLD TOUR twenty twenty-two.

SAYONARA.

流れる別れのアナウンス。もしかしたらこのさよならが、今生の別になるかもしれない寂しさをどうしても拭いきれずに、熊谷さんの言葉を聞いた。「今日は本当に来てくれてありがとうございました。なんだろう…みんなの前でフライハイを歌うとき、なんかすごい特別な気持ちになりました。今日は本当に来てくれて嬉しかったです。ありがとう。バーンアウトシンドロームズでした。ラスト、Hikousen」

 

 

鳴り止まぬフロアのアンコールを望む手拍子のなか、流れ出す邪教・拝金教、とともに現れた廣瀬さんは当然のように新グッズを手に持っていて、起こる笑い混じりの歓声。もはやこの曲は、物販紹介の定番曲。


「はい、どうも!皆さまアンコールありがとうございまーす!いやーこのノリ久しぶりだ。なんかちょー嬉しい!これが日本だよ!!」って、テンション高くキラキラの笑顔でこれが日本だよって前のめりな廣瀬さんは、まごうことなき天使だった。

「まあ、この邪教・拝金教が流れたということはですね、日本でしかできない恒例のグッズ紹介のお時間でございます!超これカッコいいでしょ?カッコいいロゴデザインで、Tシャツ、そしてトートバッグを作ってしまいましたー!」

トートバッグから出てきたのはTOKYOツアーのグッズたち。それを、「残ってるとかじゃないですよ?残ってるとかじゃない…」って苦しい言い訳をする廣瀬さん。可愛いからなんだって許容しちゃう。

「温かいなあ、本当に。でも、ひとりじゃアンコールできないので…オープニングはちょっと歌ってたりしましたけどそれは忘れていただいて…(笑)。石川くんから呼びたいと思います。僕が石川くーんって呼んだらみんなで…あ、声出せないのか…心の中で皆さん、僕がその分叫びます!」

廣瀬さんの声に導かれて、登場したいしかわたいゆー。片手挙げ瞑想するように瞼を閉じた状態で歩みを進める。流れる、世界は愛でできている。

石「若いな。人の心を動かすのは金やないで。愛やで。そして、思い出です。ということで私は皆さんにプレゼント、持ってきましたー!」

石川さんが提示したのは、このツアー各地で撮った集合写真が貼られた額縁。

石「いやー好感度爆上がりですね、対比的にね。でもどうしよう、俺はみんなを愛しもうてるから、決められへん…これは愛の伝道師に決めてもらいましょう。愛の伝道師こと熊谷和海です」

両手掲げ、堂々たる登場で「らびゅー♡らびゅー♡んーまっ♡らびゅー♡」と愛を振り撒く熊谷和海、なんかもう、愉快そうで何よりです。

熊「何?これ、誰にあげるか迷ってんのか。愛故に、迷ってんのか。若いな、お前らは若い。まだまだ青い。大事なのは金でもなければ愛でもない。運や」

石「あらまあ!」

熊「チャンスをモノにする運を持ってる奴が世界を獲るんや。お前らは若い」

石「先生!知りませんでした!」

熊「じゃあ、レイズ ユア フィストで」

石「そのための煽り(笑)」

すっごいドヤ顔で拳掲げる熊谷さん、愛おしい。ちゃんと見てるからズルはダメよって「不正はめっよ!」って、石川さん、言葉のチョイス、ズルい。

熊「互いが互いを見張るバトルロワイヤルのはじまりや」

そうしてはじまった血で血を洗うじゃんけんバトル。すごい悪そうないやーな顔しながら「次グー出すから」って心理戦を仕掛け、しれっとチョキを出し「さよならー」と純粋なファンを一掃する熊谷和海、性格がいい。

フロアの助けを借りて、逆ダイブが成り立ち、じゃんけん大会の賞品は無事強運の勝者に渡りました。

石「昔は檸檬投げとったで」

熊「いらねー(笑)」

石「知ってるひといます?懐かしっ」


熊「楽しんでいただけましたでしょうか、本日」

石「ちょっとね、寂しい思いさせ過ぎましたし、僕もちょっとし過ぎたんで、これから国内もライブ、増やしていきます!」

熊「まあ…秘書が勝手に言ったことなんで」

石「ふふふ、俺もさ、言いながらなんか決まってたっけ?って。でも言ってもうたら、戻られへんやろ?これが覚悟や!」

熊「石川くんソロってことで」

石「まじで?来る?俺行かんけど来る?絶対嘘やん」

いしかわたいゆー来なかったらそりゃあ行かない。

熊「んーーー最後やしどーしよ、このままハッピーにいくか真面目な話するかすげー迷ってる」

石「え?!真面目な話今日してへんで、一回も」

熊「ちょっとしたやろ」

石「いやいやいやあかんあかん!ふざけが勝ってるわ今日」

熊「じゃあ真面目な話しまーす」

石「してくださいお願いします」

熊「Good Morning [New] WORLD TOURなんですけど、我々が海外行けるようになったのってぶっちゃけフライハイなんですよね。iTunesの海外での再生数がフライハイが十何位とかで」

石「何がやばいってあれPV海外で観れへんからね」

熊「その話するからちょっと袖に行っといてくれ」

石「まじで?!思考回路が一緒すぎて…」

熊「石川くんも言ったんですけど実は海外で見れないんですよ」

FLY HIGH!!のリリースが2016年。当時どのレーベルにも海外で曲を聴かせるという発想がなかったが故の仕様。でも、6年後に海外でたくさんのひとに聴いてもらえて支持されているこの状況を、熊谷さんは「嬉しい、けど悔しい」と言葉にした。「そんなにいま評価されるんやったら、デビューの時に評価してくれやっていうのが、俗物である私の正直な気持ちなんですよ。6年前の曲がそのまま世界に通用するんだったら、この試行錯誤してきたいままではなんやったんやと、特に30というこの節目に、思っちゃうわけなんですよ」この6年間っていうのは何だったのか、それを考えながら回ったワールドツアーだったと語る。例えばもし、FLY HIGH!!のときにMVが1億回再生されていたら、これでいいんだって同じような曲をくり返していたかもしれない。三味線入れたり尺八入れたりする発想に至らなかったかもしれない。「フライハイのような曲がたくさんあって、それではたして世界と戦えていたかというと、そうでもないような気がするんですよね」三味線や尺八を取り入れたいかにも日本というような曲があり、FLY HIGH!!のようなアニソン王道ロックがあり、Oceanのような曲があり、この多彩さが、世界と戦えた要因なのかもしれない、と可能性の話を紡ぐ熊谷さん。「どっちがよかったっていうのは私には今はわからないですけど、唯一つの今なんだなあと」「幾億幾兆の分岐が紡ぎ出す唯一つの今っていうのが、このステージの上にはあって」、そんな、変えようのない今に、自分なりの意味を見出そうと言葉を紡いでいる気がした。熊谷和海の、この、どんな状況だろうと一度は受容して、己の力に変えようと咀嚼していく姿勢が、とても高尚だなと思う。


「ライブ初披露の曲を。海外ではアンコールって、本編と同じ曲をやるそうです。せっかくなんで今日は、それを踏襲しつつ、日本風にアレンジしてやりたいと思います」そう曲振りをしながら構えているのはアコースティックギター。スクリーンにMVを投影しながら、Good Morning [New] World!。この日一際清々しく、カッコよく映った熊谷和海がそこにはいた。

 

終演直後に感じた、カッコいい…しか言葉にならない感覚をどう残したらいいんだろうと、何がそんなにこの日が特別だったのかを、ぼんやりと考えていたんだけれど、少しだけしっくりくる気がする表現を見つけた。きっとこの日は、MC中はともかくとして、終始臨戦態勢、戦闘モード全開!みたいな状態に見えたんだ。8月のCrunchyroll EXPOからはじまって、世界各国で戦ってきたその勢いのままの姿を、あのステージで見せてくれたのかなと思う。それはきっと、ひとひとりで受け止め切るにはとても大きくて、勢いのある圧力だった。そうやってバキバキにカッコいい状態で、世界と戦って回ってきたんだなあ。世界にBURNOUT SYNDROMESを見せつけてきたんだなあと思った。彼らが世界各国を巡ってきたこの数ヶ月を、まるでこの数時間で追体験させてもらえたような心地がした。そして、まだまだ世界に、彼らは求められているんだとも思う。

同時に、6年越しに世界に見つけられたという現状に喜びだけじゃなく悔しさも感じていると語ったその、もしもの世界に引きずられそうになる自分とも戦ってきた姿だったのではとも思った。


アンコールのGood Morning [New] World!での熊谷さんが、一際清々しくカッコよく映ったのはきっと、熊谷さん自身が、このツアーファイナルで、言葉にすることで、ひとつ答えを選び、自分のなかで昇華できたからなんじゃないかって、私は思っている。


「我々の今を、そして未来を、これからも見守ってください。また会いましょう!この広い世界のどこかで」

いつだってどんな姿だって、願うことは一つだ。BURNOUT SYNDROMESが歩んでいく道のりを、この先もどうか見守っていけますように。

 

01.Good Morning World!
02.ヒカリアレ
03.エレベーターガール
MC
04.BLIZZARD
05.銀世界
06.花一匁
07.若草山スターマイン
08.国士無双役満少女
MC
09.Wake Up H×EROS
10.君のためのMusic
MC
11.PHOENIX
12.Melodic Surfers
13.FLY HIGH!!
14.Hikousen

en.Good Morning [New] World!

Lover's Tour 名古屋編

ココロオークション

Lover's Tour

2022.12.09(金) @CLUB ROCK'N'ROLL

 

慣れ親しんだROCK'N'ROLL、名古屋老舗の箱。名古屋でのココロオークションのライブ、この箱で観ることがいちばん多いと思う。なんだか、安定の、って感じがする。アングラ系のROCK'N'ROLLとココロオークションのアンバランスな感じがどこか愛おしく感じるのは、彼らが音楽の沼にどっぷり浸かっていることの証明のようで嬉しいからだと思う。


開演前のBGMに文學少女があって浮き足立ってたら、あっという間だった待ち時間。ステージ袖の扉を開く井川さんが最初に登場して、順番にメンバーが揃った。大野さんがしきりに耳後ろくるくるマッサージしてて、そのツボなんのツボか後で調べようと思った。井川さんが「オッケー」って準備が整ったことを告げて、粟子さんがすっと片手を挙げて、はじまる、1曲目、ミルクティー

2曲目、ロックンロールに憧れてだなあってカウント構えてたら、心弾むような冬のイントロ流れ出して、セトリ!変わっている!星座線!!!ってなった。ライブを楽しみにしていた気持ちと同調しながら跳ねるように刻まれるテンポ。季節の訪れを感じる選曲、好き。星座線のドラム、わくわくする好き。

 

「コロナ禍でライブできひん時期とか、みんなのことを思って書き上げました。貰った愛を、今日はいっぱいお返しをするから、覚悟してね」「ココロオークションの歌だけど、キミの歌になってほしい」とはじまった、一等星の歌。星座線からの、一等星、星繋ぎだなあって。「踵鳴らす度」って歌詞に合わせて足トントンって仕草した粟子さんにきゅんでした。

そのまま、愛で溢れたLover'sに馴染む、愛のまま。「全部大丈夫」って、優しくキメたタイトルコールからの、全部大丈夫!

どの曲だったか忘れちゃったけど、曲アウトロで、ベースのつまみ絞る大野さんの動きがすすすって素早くて、当たり前だけど手慣れすぎてて、そんな些細な動作にさえ見惚れちゃう。なんて絵になるひとなんだと思った。演奏中の一挙手一投足、佇まい、カッコいい。すーってネックを滑ってった手がそのまま流れるようにさって前髪を払うのとか、とてもカッコいい。という、大野さんがとにかくカッコいいんだというお話。

 

流れ出すSEが直前までの弾むようにほっこりした空気を変えていく。無言のまま、一瞬にして、夏の終わりの寂しさに持っていく雰囲気づくりとか、そこに相応しいメンバーの佇まいとか、楽曲を魅せるための細やかな空気づくりから、好きだなあとしみじみ思う。いつまでも色褪せない名曲、蝉時雨。

 

夏の空気がすっかりROCK'N'ROLLのフロアに充満して、続いた、夏の幻。「夢から醒める」って歌終わりのあとに哀愁に嘶くテンメイさんの美しいギターの音色、同じテンションでぐわっと駆け上がる大野さんのベース。ふたりのテンションが自然と呼応していて楽器をくっと掲げる仕草がシンクロしてた。鳴ってる音もその光景もぶわって気持ちを昂らせる、端的に言って、エモいってやつ。

 

「次はかなり久しぶりの曲です。2018年かな、リリースしたアルバムの曲で、マイナー調でスローテンポで渋くて、なかなか普段できない曲なので、今回久しぶりにやろうと引っ張り出してきました。そうして思ったけど、俺がココロオークションで伝えたいことは変わってないんだなあと、安心した。力をつけたいまのココロオークションが演奏するとどうなるか、楽しんでください。一秒一秒を大切に、砂時計」

大野さんの滑らかな指づかいで奏でられるベースが、砂時計の深い世界に誘っていくような導入、螺旋状にぐるぐると渦巻きながら音の世界に潜っていく感覚がした。ゆっくりと確実にずっしりとテンポを刻み込む井川さんの力強いドラムが加わってさらに深く深くへ。家に帰って音源でセトリを並べたって、何したって再現できない、ライブハウスでの特別に感動して、彼らが音で描く世界に浸りながら、心が震えて泣きそうでもあるのに、どうしてか口元はにやついてしまう矛盾。良すぎて魅せられすぎると、笑ってしまうの不思議だ。

 

「ホタルのヒカリ」ってシンプルなタイトルコールからの、新譜Lover'sから3曲目、ホタルのヒカリ。ステージに灯る黄色の照明がまるで蛍の光そのものみたいにフロアに降り注ぐ。その下に少し遅れてオレンジ色の光が加わった、印象的なライティング。ROCK'N'ROLLの照明、こんなに綺麗だったんだ…ってちょっと別の感動を覚えた。

 

「愛、届いてる?」ってフロアに投げかける粟子さんの柔らかい雰囲気、ふわふわとその甘さでひとに幸福感を与えて虜にする綿飴みたい。ROCK'N'ROLLの30周年もお祝い。彼らとしてもここはいちばん多く訪れてる箱で、20周年のときもお祝いに来ていたらしい。テンメイさんの前任ギターと写っているココロオークションの写真が天井に貼られているらしい。「芋い僕らが見れます」って言ってた。今度来たときにじっくり探してみようと思う。

 

メンバー紹介します!ってタイミングでお水飲んでるテンメイさんに「お水飲んでる…」ってちょっと困ってる粟子さん、癒し。順番に「ギターテンメイ」「ドラムス井川聡、さっちゃん」「ベース大野裕司」ってメンバー紹介に、軽い調子で「うぇい!」って返す大野さん、うぇい!

テ「ロックンロールは、ココロオークションが名古屋ではじめてワンマンした箱で、8年前、とかですかね」

大「そんときもう(テンメイさんメンバーに)おった?」

テ「わたし、いました」

粟「一人称、わたし」

20代前半のあの頃から大人になって心が広くなった、ってお話。いままでだったら怒ってしまうようなことも、愛おしいなと思える。粟子さんが「色気出たもんな。昔はヒゲ生えてなかったし」って言ってテンメイさんの変化を語っていて、とっても同意した。テンメイさんの色気、わかる。めっちゃわかる。人懐っこくて無邪気で可愛い笑顔の末っ子ってイメージが強かったのに、そのイメージも内包したままいつの間にか漂いはじめた色気…わかる。好き。

テ「僕上京してて、スタジオ練習するときは大阪に帰ってくるんですけど、そういうときは実家に帰るんですね。その帰る手段が3つ!あります!ひとつは、JR」

井「(堪能な発音の)JR」

粟「さっちゃん英語得意やもんな」

井「JとRの発音だけで得意とか言わんでや!恥ずかしい!」 

テ「ふたつ目は、阪神電車

粟「それは普通に言うんや」

テ「みっつ目は、阪急電車

「全部電車やん」ってツッコんだのは誰だったか…、手段、電車、一択。

テ「阪急電車は特に、見た目もいいですよね、臙脂で。赤茶色っていうんですか、小豆色?」

粟「あずきバーの色やんな。まあ、説明せんでもわかるかこんくらい」

テ「中も、ふかふかの緑の椅子で。いちばん好きなんは、座席が一直線に横並びなとこで、でも久しぶりに乗ったら、対面の席が増えとって、知らんひとと向かい合わせになるの気まずいやないですか」

粟子さんがテンメイさんと向かい合って、ボックス席に対角線に座る様子を再現。「あれなんでちょっと斜めに座るんやろうな」「膝と膝当たらんようにしてんのかな」「ああ」みたいなやりとり。変わっていくことも「愛しいな」と思うというお話。

テ「でもまあそれは、見るだけでいいやと思って、(ボックス席には座らずに)眺めとったんです。そしたら、ひとりで喋っとるおじさんとか居るじゃないですか」

粟「関西特有のな」

テ「電話とかもしだして、なんやおら!、みたいな言ってはって」

粟「わー、俺なら車両変えちゃう」

テ「そういうのも、愛おしいなと」

粟「みんなあんまピンときてないけど…(笑)」

テ「大人になって変わっていくことも、そういう自分も環境も受け入れて愛していきたいなと、思います」

粟「隣に全く愛感じてないひとおるし」

テンメイさんのお話を、ずっと感情の読めない、あるいは無の表情で聞いてた大野さんが遠い目しながら「心広くなったなあ…」って独りごちた。

粟「話長いな…って顔してる」

大「あとで愛ある反省会しよ」

井「怖いやつやん(笑)」

テンメイさんのMC、その結論に行くのに、その入口でその角度で話しはじめるの?って感じがシュール。入口から出口まで意図して最長ルートを選んで進んでるみたいな不思議な魅力があって、じわじわくる。彼が「愛おしい」って言うの、お見送り芸人しんいちが「好きー」って歌うのと同じ手法だと思う。これ結構自分のなかでしっくりくる表現。でも、変わっていく周囲も自分も受け入れて愛していこうって着地点は、密かに響いています。綺麗に素敵に着地したなって思いました。愛おしい。

 

粟子さんが井川さんに、次の曲振りをお願いして、はじまる一人二役のさっちゃん劇場。某夢の国のねずみのキャラクターのモノマネで元気よく話しだす井川さん。

某「さっちゃん、いつものやって盛り上げてくれよ」

井「さっちゃんさっちゃんコール、やる?」

某「そっちじゃねええ!なんでこのコロナ禍でさっちゃんコール求めるんだ!なんて奴だ!」

大「ミッキー詳しいな」

某「次の曲にいく、飛べるやつ、やってるそっちだよ!」

大「結構通ってんな」

井「んー、ミッキー代わりにやってくれへん?」

某「仕方ないなあ」

大「やってくれるんや」

折角だから、新しい盛り上げ方をしようって夢の国のねずみが先導する。ご乱心で思わず漏れちゃう関西訛りに「ミッキー関西弁?」ってちゃんとツッコむ大野さんもいました。

某「ユー キャン フライー!ユー キャン フライ!ココロオークション イズ フライー!じゃあ、この後粟子がカッコよく次の曲の振りしてくれるから、よろしく!」

粟「そうなるんや、はじめてのパターン」

さっちゃん劇場、そのシュールさでじわじわとフロアを侵食していって、面白おかしく盛り上げていく、ココオクワンマンの名物コーナーだと思う。ひーひー笑いすぎて、私はちょっと涙目になりながら迎えた曲、フライサイト。一斉に掲げられたフロアの腕。音楽に呼応する熱気が、愛おしい。テンメイさんが熱烈に「愛してるー」って叫んでた。

 

ノンストップでの、ハンカチ。アップテンポの曲連投、曲に呼応してテンションを高めるフロアの熱、足りなかったものが満たされていくような幸福感を孕んだ興奮のなか、粟子さんが叫んだ「みんなまだいける?火花!」。四つ打ちのリズムがまるで、いまこの瞬間に懸命に燃える命を、この場所に刻んでいるように熱く響く。そうやってステージの上に立つ姿を目に焼き付けられることも、こうして同じ空間を共有できることも、嗚呼、幸せだなあ、と思う。溢れんばかりの愛が、燃え盛る炎のように熱く温度を上げて、ライブハウスに灯っている。

 

粟子さんのタイトルコールに合わせて、パッと輝きながら回転をはじめるミラーボール。きらきらと瞬きながらステージを、フロアを、照らすその光は星の煌めき。星の傷。

 

「素敵な景色を見せてくれてありがとう」って、景色の花束。冬の星空も夏の空気もライブハウスの愛おしい光景も、あなたたちの曲が見せてくれる景色、この場所でしか見られない心を震わせる景色に、ありがとう、って思うのは、私の方。

 

「終わりがあるからいまが愛おしいんだよな、って、ずっと歌ってるけど、本当にそうだと思う」「いま、幸せ、って思えることって、すごいことやと思う。うん、俺、いま幸せやねん

粟子さんが「自分の気持ちを表現できた曲」と紹介した、僕らは愛の中。ROCK'N'ROLLの決して大きくはないステージが、急速に広がっていくような、スケールの大きさを感じた。大きな愛に包まれているような幸福感で、湧き立つ気持ちを解放させたいと叫ぶ想いとは裏腹に、全身で音を浴びる心地よさに立ち尽くすような矛盾。ココロオークションのライブでしばしば体感する、良質な音楽でいっぱいに満たされているときの生体反応。

 

アンコール。再びステージに戻ってきたメンバーたち。センターに立って夢の国のねずみ声のままグッズ紹介する井川さんと、ドラムの椅子に座ってそれをバスドラ踏んで盛り上げるテンメイさん。井川さんの隣で大野さんがさっとひと言「本田圭佑」と告げた。モノマネ芸人にリクエスト振るみたいな間。すかさず反応する井川さんの対応力。靴下が大好評で、黒は売り切れたって説明のあと「課題はやっぱり、黒の需要。今回でいくつか改善点も分かったんでね、活かしていきたいと思ってます」って、キーワード押さえてる感じ、クオリティ高い。ちゃんとモノマネしてる。非常に完成度高いと思いますね。

大「ミッキーなあ。どうしようなあ」

粟「消されるかもしれへんもんな」

大「名古屋はマスコットキャラ居らへんの?」

粟「モリゾー?」

アンコールのゆるっとした雰囲気のなか、大野さんが閃いた!みたいな勢いで、「ジブリパーク行った?」ってキラッとした瞳でフロアに尋ねた。がしかし、フロアの反応は乏しい。

大「地元愛ないなぁ。レゴランドは行った?」

やっぱりあまり反応はなし。

大「名古屋ヤバいな。流石に矢場とんは行ったことあるやろ?」

粟「なんで名古屋って中華多いんかな。打ち上げの時間に空いてる店がそこしかないんか」

粟子さん粟子さん、それはきっと名古屋じゃなくて多分新栄の話。粟子さんの頭に浮かんでる中華店、絶対杏花村だ…って思った。

粟「言うてる間に、すぐ名古屋来ます!12/24です。もう予定あるひとも多いかもしれないけど…」

大「ジブリパーク行ってへんひとら予定なんかないやろ」

安定の、非リア充に厳しい大野さん。世知辛い。

 

「最後は、特大の音楽への愛で」って粟子さんの曲振りで、井川さんがはじめるアドリブちっくなドラムロール。「この入り方は、はじめてのパターン」って粟子さんが驚き半分で反応して、メンバーみんなが井川さんを振り返って、それぞれに音を連ねながら、最後の曲を盛り上げていく、ヘッドフォントリガー。嗚呼ライブだなあ、最高。「名古屋のスーパーシューター」だったの、名古屋公演、って感じで愛おしかったです。

 

求めていた幸福感が、満足感が、あった。音楽が、ココロオークションが、大好きだ、楽しい、っていう熱気。ステージとフロアが呼応して生まれる空気感、Lover'sってタイトルによく似合う、愛で溢れる熱い空間。はーー、カッコよかった!

 

01.ミルクティー
02.星座線 
MC 
03.一等星の歌 
04.愛のまま 
05.全部大丈夫! 
06.蝉時雨 
07.夏の幻 
08.砂時計 
09.ホタルのヒカリ 
MC 
10.フライサイト 
11.ハンカチ 
12.火花 
13.星の傷 
14.景色の花束 
MC 
15.僕らは愛の中 

en.ヘッドフォントリガー