from 2013

APOLLO BASE ×

地元バンド連続共同企画シリーズ

APOLLO LOVERS vol.02「from 2013」

2021.11.23(火祝) @新栄アポロベイス

 

スロウハイツと太陽とTHREEOUTは盟友だって、誰かが言ってた。そういえば、スロウハイツと出逢ったその日も、THREEOUTが隣にいたなあ、とか小さな偶然を、私はいまも大切に思ってる。

 

THREEOUT

 

THREEOUT観てて、思った。カッコいいバンドは、照明さえ自分の一部のように纏って、演出するんだ、って。眩い光と影を纏って浮かび上がるNaotoくんが、頼もしくってカッコよくって、頬が緩んだ。

「仲良くやる日なのかなって思ってたけど、ここに立つと不思議と、負けたくねえって気持ちが湧いてきます。まあ、勝ち負けじゃないけど…不甲斐ないところは見せられんなって思います」っていう、熱い言葉に思わず絆されてしまう。

同じ道のりではないけど、歩みを共にしてきた存在。いつか、もっとデカくなったら、ツーマンしようってずっと言っていた。それがやっと叶って嬉しい。そんな旨の、スロウハイツと太陽とTHREEOUTとの関係性のお話。今日が特別な日だってことはこれでもかって伝わる。わかる。でも、その約束が果たされるのはもっと先だったはずなのではって気持ちが過らなかった、と言えるか。今、果たすしかない約束なんだって思いもしなかった、なんて言えるか。

「スロウハイツに捧ぐ」ってNaotoくんのイケメンな一言ののち、奏でられた曲。とてもよく知ってる夏の曲は、全く知らない曲だった。疾走感を纏った、空蟬。自分の体温が上がったのを明確に感じた。間にほんのり挟まれたdeylight。総じて、ばちばちにアレンジを施され、THREEOUT色に染められた素敵カバー。最高だね。愛。

「今日どうしても歌いたい曲があります」って、突然の「ハッピーパースデー優作」。いつの間にやら、プレゼントボックスを抱えて優作さんの背後に立つ楓記さん。気づかない優作さん。背後に立ち続ける満面の笑みの楓記さん。振り返る優作さん。気づいた優作さん。爆笑の優作さん。

Naotoくんからのプレゼント開封して、「ガンプラーー!」って嬉しそうに掲げてたのは愛嬌満点で可愛かった。「次の曲、なおやくんギター持たない曲のはずなのに、急にエモくなっちゃったんかな。俺何弾こうどうしよう、って思ってた」っていう、サプライズ故の、優作さんがひとり感じていたであろう焦りも愛おしいさ。「後ろから見てて、すごい顔してた」ってRyoさんにバラされてるのも愛おしいさ。誕生日、めでたいさ。仲良しの空間、嫌いじゃないなって思う。

 


スロウハイツと太陽

 

今まで一度もやったことがない新曲、何年もやってないむかーしの曲、お知らせ、盛りだくさん。純粋に楽しみな気持ちと、別の気持ち。

スロウハイツと太陽のライブのはじまりを告げる、光の中で。前回違っただけなのに、随分久しぶりな気がした。

続いた影踏みこそ、久しぶりに聴いた。相変わらずカッコいいね。最高だね。推し曲。待ち構えてた瞬間への、ドラムへのピンスポ。ありがとうございます。瀧田さんはピンスポにそろそろ慣れただろうかとかそんなことを考える余裕はある。

子路線図。好きだなあ。綺麗なギターのメロディ。楓記さんがマイクに向かってる、あの角度が結構好き。

「THREEOUTに捧げる曲です」ではじまった、My Wings。疎らに聞こえる笑い声。愛。フウマさんが歌いはじめて、笑い声が漏れるなんて、珍しい空間だなあ。フウマさんが歌う英詞、非常に好きだと思いました。ありがとうございます。途中語りを織り交ぜていて、その語り声も好き。

そしてそのあとのことは私の妄想なんですけど、瀧田さんが「いける?」って確認してて、フウマさんが「むり!」って返して、休憩のようなMC挟んでからアカトキに入ったの、愛おしい。あなたたちは意思疎通完璧ですか。これは私の完全な妄想で信憑性はありませんとだけ但し書きはしたい。愛おしい。

低めの地声でされる、「ワンツー!」のカウントとハンドサインがとってもカッコよかったのは、完全に現実。

「終わりなんて、最後なんて、こなければいいのに」って、落ち着いた声というより、低い声、少しだけ怖いと思うほどの低さ。春よその足をとめてくれ。続いた空蟬が、無性に嬉しかった。春が足をとめなくても、迎えることができる夏を特別に感じた、ひとときの幻想。さよならだけがやけにはっきり聞こえた。

「THREEOUTがカバーしてくれた曲でした。はじめて聴いたひとびっくりしたっしょ?本当はこんな曲なの?って」って、その通りだと思い過ぎて思わず笑った。

「ツーマン決まったとき、お互いにカバーするかーって決めて、まあ、俺たちのは新曲なんですけど」って冗談めかして言い張る。確かに、まだ一度もやったことのない新曲。この二段構えは、少しだけズルいよなって思います。

語りからのライカ。ドラムの振動がずっしりと響いて、ビリビリと体内を揺らす感じ。歌う雄叫びとともに、力強いライカ

アカトキのワンツーも、語りからのライカも、スロウハイツの曲で、いつか聴けたらって思っていたものがひとつずつ叶っていく、その瞬間の切なさと騒めき。

どこかで、「今日はもう、なんて言っていいかわからん。すまん」って、そんなフウマさんは本当に珍しいと思う。

ライブ中の楽しいと嬉しいと胸騒ぎみたいな不安と、振り返っているいまの寂しさと納得と落ち着きを両立できないから、これ以上は書き方がわからない。でも、とてもカッコいいライブだった、とだけは明確に残しておこう。スロウハイツと太陽がとてもカッコいい日だった。

だから、飛んで、アンコール。これはライブの感想じゃない。フウマさんが一番最初に出てきた。ワンマンライブの解禁。手放しで拍手できなかったのは、お祝いムードには到底思えない張り詰めた空気のせい。フウマさんの声で発せられる「活動休止」という言葉を聞いてしまった。聞いてしまったお知らせは、覆らない。そのあとフウマさんがどんな風に言葉を紡いだか、正直覚えていない。こういうときのために覚悟を、と思っていたのに、いざその時を迎えると、言葉と想いをありのままを汲み取ろうとするよりも、拒絶が勝った。曲が書けないこと、自分のことを、音楽を嫌いにならないためにスロウハイツと太陽と距離を置いた方がいいと思ったこと、そんな内容が続いたと思う。たぶん。フウマさんが喋っている間、脳内を占めていたのは、新しい曲が書けないから続けられないなら、新曲なんて永遠にできなくても構わない、って気持ち。そのときに認識した。新曲を嬉しく思うのは、絶対の保証なんてない未来の存在を、少しだけ輪郭を持って保証してくれるからで、あの嬉しさの正体は、未来があることに対する安心だったんだって。

曲が書けない苦しみはたぶん私には一生分からない。想像を絶する苦しみを抱えたまま、それでも続けてほしいなんて思いはしない。そのためにフウマさんが音楽を嫌いになるなんて、絶対に嫌だ。その気持ちに間違いがないのに、それを望まない自分もそこにいた。瀧田さんの言葉を借りるなら、それは、空っぽの燃料で誤魔化しながら、無理をしながら、自分に嘘をつきながら、走り続ける姿を望むってことなんだろう。彼らの言葉を読んで、落ち着いたいまなら断言できる。そんな姿、万に一つも望んではいない。

アンコールさえなかったら、新曲を望む気持ちなんてなかったら、どうしたらこの選択を回避できたのか、心底無意味な思考を巡らす絶望みたいな帰路と、帰宅してフウマさんの、楓記さんの、瀧田さんの、言葉を読んでからの落ち着いた心境が違いすぎて、どうやったってまとまらない。でも、あの絶望感が嘘みたいに、腑に落ちて、落ち着いた。それが事実。

ライブハウスで鳴るスロウハイツと太陽の音楽が大好きだから、それが聴けなくなることはとても寂しいけど、どうしたって寂しいけど、スロウハイツと太陽ってバンドが大好きだから、あなたたちそれぞれのことが大好きだから、その関係性も大好きだから、全部含めて、スロウハイツと太陽だから。だから、この選択を大丈夫だって思う。究極、スロウハイツと太陽じゃなくなったって、大丈夫だって思う。

それとは別に、フウマさんが紡ぐ言葉も旋律も、その歌声も語る声も、ちゃんと大好きだから、だから、大丈夫だ。この大丈夫って感覚は、自分自身のために言葉にする気持ち。

言葉にしきれない想いを、言葉にしようとすればするほど、矛盾していくようなこの想いだけど、自分のなかではすっきり筋が通ってる。あなたたちがそれぞれに納得していて、それぞれに尊重されていて、その上で未来を大切に思って選んだことなら、それで十分だ。

いつかまた、って信じて待つことができる希望は、大好きって気持ちがくれる特権だと思う。きっとその特権を、メンバーも大事に持っていてくれる。

でもやっぱり綺麗になんてまとめられないなとも思っていて、結局、戻ってくる。楓記さんの言葉を借りるなら、スロウハイツと太陽がちょっと休むことはいいけど、フウマさんと楓記さんと瀧田さんとサポートの誰かとでやるスロウハイツと太陽の曲たちをライブハウスで聴けなくなるのは、どうしようもなく寂しい、だなって思う。それ以上も以下もない、言葉通りのそのままの、気持ち。