ontology × Shinonome presents. episode APOLLO vol.2
ontology × Shinonome presents.
episode APOLLO vol.2
2021.11.14(日) @新栄APOLLO BASE
久世悠喜(WiLLY-NiLLY) / PLUE / ZOO THE ANUAL PASSPORT / シロとクロ / the cibo / スロウハイツと太陽
ontologyのバーバラさんとShinonomeの木田さんとの共催企画ってだけで、いい日なのは保証されたようなものだった。出演者6組って結構長丁場だけど、足腰気にならないくらい、それぞれに魅了される、素敵な日でした。
久世悠喜(WiLLY-NiLLY)
「知ってる人もいると思うけど、ここがなくなってしまうようです」って説明のあとに「いやだね」って一言。簡潔なその言葉に全てが内包されていると思う。その一言がそのまま私の気持ちの代弁で、こうやってちょっとずつ、いろんな出演者の力を借りて、さよならのために心の準備をしていくんだろうなって思う。
ありがとうって言うとしよう
さよならよりも
ありがとうって言うとしよう
ごめんねよりも
最後に歌ったアポロベイスのための歌、「ラストシアター」「月まで届くように」って歌詞に、久世さんの記憶に馴染んでるのはアポロベイスって名前よりもアポロシアターなんだなって思った。出逢ったときの姿が思い出深いのはごく自然な情だと思う。あの場所と彼とで重ねてきた想い出に触れさせてもらった感覚でした。
PLUE
1曲目から青のイルミネーションで心掴まれたのと、タイトル知らないけど2曲目、ギターとベースで交互にメロディー弾く感じ、カッコいいなって思った。
楽屋はすごく寒かったけどいまステージは熱い旨のMC。「みんなの熱気のおかげです。あんまりないんじゃない?自分の熱気に拍手すること」っていう楽しい会話。「素敵な熱気です」って褒められ方は確かにあんまりないかもしれない。
12月1日に出るミニアルバムから、カメラロール。PLUEらしいなって歌メロに、お洒落な楽器アレンジが新鮮で、新曲って感じ。
「カメラロールを披露できたのが感慨深い。制作したのがコロナ真っ最中のときで、本当にいつお披露目できるかわからない状態だった」っていう、真面目なMCに、少しずつ戻りつつある日常の気配を嬉しいと思った。
「ちょっとはやいけど」ってはじまったシンデレラは、冬の曲だからね。季節先取り。なら、青のイルミネーションもでは?って頭の片隅で思ったことは、小声で主張しておくことにします。
ZOO THE ANUAL PASSPORT
「本番ではやらない曲なんで、しっかりノってってください」って、イカつめのリハが、既にカッコいい。
熱苦しいくらい熱血、カッコいい姿に、私の脳内では、ステージの奥には採石場が広がっていたし、何度か爆破も起こってた。特効がよく似合いそうな、強いバンド。
「俺たちは強い。強い者が弱い者を守るのは当然だと思うから、俺たちが守ります」って言葉、スーパー戦隊のヒーローって感じ。心強い安心感。
シロとクロ
「名古屋の先輩バンドばかりのなか、東京からシティボーイがやってきました」って自己紹介は、挑発的で好き。そのあとに実は、鳥取、島根、長崎、千葉出身のメンバー構成なことを明かす自虐的なゆるさも込みで、上手だなって思った。
ワールドエンド聴いて、はじめてシロとクロ観たのがいつどこでかを思い出した。曲に記憶を呼び起こされる瞬間って小さな幸せを感じる瞬間だと思う。そこからのTokyo fallin'。畳みかける選曲って感じ。またひとつ、覚えていられる曲が増えたと思う。
the cibo
「名古屋は、交ぜると危険な人ばかりで、シボにぴったりです」ってShinonomeとontologyの共催企画に向けての言葉。愛。
「この日のシボを思い出せば、いつだってここに戻ってこられるように、そんな存在に俺たちがなります」ってニュアンスの言葉がとても熱かった。きっと今日が、アポロベイスに立つ最後だからと、「だから今日は、欲しがりますよ、アポロ!」ってフロアに求める声に胸が熱くなった。
期限は決められているし、時間は有限。きっとすでに最後を迎えたバンド、人がいるという事実が途方もなく寂しいけれど、最後の最後までこういう熱い想いをアポロベイスは受け止め切ってくれるんだろうなと、そして、その想いは建物がなくなっても、存在し続けるには違いないと、思う。
何もかもを、今日、この瞬間が最後だと覚悟して、刻み付けていくことが、いまできる最大限の最善なんだと、思います。
スロウハイツと太陽
前回から変わってる、入場のSE。なんだか今日は、少し陽気に手拍子でもできそうな曲に聞こえた。気分の問題。久しぶりに全部見渡せる場所で観て、視界がとても幸せだった。リハで瀧田さんのドラムに合わせてふわっとセッションしそうなフウマさんが、可愛かった。
珍しく、サイハテスタートは、光の中に足を踏み入れた状態からじゃなくて、言わば、一番沈んだ場所からはじまったってことなのかなっていう個人的解釈と、カッコよさにニヤける頬。
「この場所でなら、この距離でなら、心の中まで伝わると思っています。そんな曲」ってはじまったautumnは、フウマさんが喋っている裏で、刻み続けているドラムのリズムでちゃんとわかる。瀧田さんに当たるピンスポは、恒例になるのかもしれない。聴くたびに、想いの温度が上がっていく曲。
アポロベイスとスロウハイツ、ontologyとスロウハイツ、結成当初からの関わりの深さ。だからこの場所でontologyの企画に出られるのはとても意味のあることだと語るフウマさん。続いた、春よその足をとめてくれ。
迎えた秋のその先で、待っている冬を通り過ぎて、容赦なく訪れる春が、本当に、本当に足をとめてくれるのなら、どれだけだって願うのに。終わりを受け入れることと、それを惜み哀しむことは決して、対極にある感情ではないんだと、感情のまま全てを肯定してくれる気がした。
「ギター山田楓記!」って紹介されてからのギターソロがカッコよくないわけがない。
朧げな空気感のなか、続いたmirror。アウトロのドラムの圧が凄くて、ビリビリ刺さった。重なるギターもベースも、混ざり合ってひとつになって波動みたいに広がってく、音。刺さるように強烈なのに、儚げで温かくて、どこか追悼のようだとも思った。言葉にしきれないあの空気感をとても特別だと思う。とても、スロウハイツと太陽って感じがした。
楓記さん目掛けてすぽんと飛んでった折れたスティックは、どうせなら私の方に向かってくればよかったのに。スティックすっ飛ばしたあとの瀧田さんが楽しそうだったから、こういうハプニングも特別な愛おしい出来事なんだって、幸せな気持ちだった。楓記さんに当たらなくてよかったです。
熱い熱い存在証明の後の、夜明け。「本当にいろいろあった。今日はもうライブ…っ休みたい…って思うこともあったし」って語る後ろで笑っている瀧田さん。「メンバーが抜けていったこともあったし」ってフロアにいる元メンバーに微笑みかけてたフウマさん。これは微笑ましい癒しポイント。真剣な眼差しの楓記さん。「でも、こうして信じて待っていてくれるあなたが居て、Shinonomeが、ontologyがあって」って涙ぐんで震える声で続けた言葉の最後に「忘れないでほしい」って痛切に響いた願い。あの涙声も、あの赤い目も、あの空気も、忘れるわけがないと思う。
いつかのライブで、対バン相手が言ってたことを思い出した。「救いたいと願うことは、救われたいと思うことと同じ」なんだって。フウマさんが忘れないでほしいと思うように、私からも忘れてほしくないと思う。あなたの目に映る光景を、そこから受け取る想いを、全部。最低な日々の先にあった夜明けが、ちゃんとあなたの救いにもなっていますように。